北極と南極、「極地」に息づく植物について知る

2019.11.14 | COLUMN

 

分厚い氷で覆われた地球の果て、北極と南極。

シロクマ、ペンギン、アザラシを始めとした一部の動物を除き生き物の気配はまるでなく荒涼としています。

真冬は気温も氷点下20〜30度に達し、息をするだけで喉の奥が痛くなるほどの凄まじい寒さ。しかし、こんな過酷な環境下でも小さな植物の命が芽吹いていることをご存知でしたか?

「北極や南極 = 不毛の地」と考えられてしまいがちですが、実はそうではないのです。

本記事では、北極と南極、2つの極地で生きる逞しい植物たちにスポットを当ててその生態について詳しく解説いたします。

1 極寒の北極と南極になぜ植物は芽吹くのか?

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冬場は凍てつく空気と吹雪により平均気温が氷点下20度を下回るような厳しい寒さが続く南極と北極。しかしながら、そんな極地にも確かに「植物」たちは存在しています。

その理由の1つとして考えられるのが、白夜による日照時間の長さ。

ご存知の方も多いかもしれませんが、南極と北極では一日を通して日の沈まない「白夜」と呼ばれる現象が起こります。この白夜によって日照時間が長くなり、植物たちがエネルギーを溜め込む時間が生まれるわけです。

そしてもう1つの理由は、極地の植物たちが主に自生するのは、比較的温暖な気候で知られる海岸付近の露岩地帯であるということ。

岩肌を潤す雪解けに加え、水動物たちのフンに含まれるリン酸が肥料の役割を果たし、コケ類や藻類などが生まれるのです。

2 北極地域に息づく多様な高等植物たち

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荒涼としたイメージの強い北極ですが、実は想像以上に多様な高等植物たちが暮らしています。高等植物とは、根・茎・葉といった各器官が分化した植物のこと。

特に北緯80度は6〜8月短い間、覆いかぶさっていた雪が溶けてなくなることで眠っていた大地が顔を覗かせます。

雪の下で熟睡していた植物たちが一斉に葉を開き花を咲かせる様子はまさに圧巻。雪が吹きずさみ荒涼としていた北極に、突如として可憐な花畑が出現します。

小さな花びらを広げるホッキョクミミナグサ、ベルのような白い花が特徴的なオニイワヒゲ、提灯のような形が愛らしいタカネマンテマなど挙げればきりがありません。

その種類はなんと900種以上とも言われています。後ほどご紹介する南極とは比べ物にならないほどたくさんの高等植物たちが息づいているのです。

3 一方、南極地域には下等植物が多く暮らす

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根・茎・葉に分化した植物を高等植物と呼ぶのに対し、各器官が未分化の植物は「下等植物」と呼ばれています。南極地域に自生する植物のほとんどは、この下等植物です。

皆さんもよく知っているコケ類や藻類も下等植物に分類されます。

さらに南極には、単細胞生物で他の植物と同じように光合成を行う「シアノバクテリア」や、菌類と藻類が共生する「地衣類」といった植物も数多く自生しています。

北極とは違っていずれも背丈が短く小さな植物ばかりです。

4 南極にたった2種類しか存在しない高等植物

南極にも高等植物(三器官を有する植物)は存在します。ただし北極とは異なりその数は、イネ科のナンキョクコメススキとナデシコ科のナンキョクミドリナデシコの2種類。

コケ類、藻類、地衣類などが多く植生している南極地域において高等植物は非常に珍しい存在なのです。

4-1 イネ科・ナンキョクコメススキ

ナンキョクコメススキは、南極の西海岸近くに生い茂るイネ科の高等植物の1つ。

その背丈は5cm〜10cmほど。見た目はよくある芝生と変わらないため、一般的な公園で生えていたとしてもあまり興味を持ってもらえないかもしれません。しかしここは厳しい南極の地。

荒涼とした岩場に鮮やかな緑色の絨毯が敷き詰められている様子を見ると、小さな植物たちの力強さを感じるはずです。

4-2 ナデシコ科・ナンキョクミドリナデシコ

ナンキョクコメススキの他にもう一つ自生する高等植物が、イネ科のナンキョクミドリナデシコです。

円形で高さ3cm前後の群落を作るのが特徴で、いわゆる「クッションプラント」の1つ。遠くからだとコケのようにも見えますが、よく見ると可憐な黄緑色の小さな葉っぱが群れをなしていることがわかります。

西海岸側に自生していますが、ナンキョクコメススキよりも小さいため少し見つけにくいかもしれません。

5 北極に芽吹く植物が温暖化を促進しているという指摘も

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南極に比べ、北極は非常に多様な植物が自生していることはすでに説明した通りです。植物たちの力強さを感じる一方で、そう手放しで喜べる話でもありません。

実は北極では植物たちの背丈が伸びることで、地球温暖化を促進しているという指摘もあるようです。

北極の下にある「凍土帯(ツンドラ)」は、大量の土壌炭素を含んでいます。北極の気温が以前に比べて上昇したことで、比較的背丈のある植物の生息地域が拡大。これら背丈の高い植物が陽光を遮り、地表に雪を蓄えます。

すると蓄えられた雪が断熱材のような役割を果たすことで凍土帯が溶け、地中の炭素が放出されてしまうと考えられているわけです。

もちろんこれは仮説の1つではありますが、植物の多様化がもたらす影響は必ずしもプラスのものばかりではないということを覚えておいた方が良いでしょう。

極地に息づく植物は、過酷な環境に適応した猛者たち

北極や南極は、人間の定住に適さないほど過酷な環境です。

厚い氷に覆われた陸、乾燥した空気、氷点下20〜30度にも達する凄まじい寒さ、そして吹き下す強い風。本来であれば草一本すら生えてこないような「不毛の地」になっていても全くおかしくはありません。

そんな極地で息づく植物たちは、いわば過酷な環境に対して長い年月をかけて自力で適応して来た「猛者」たち。

静かに芽吹くその姿には植物たちの力強さを感じます。

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