昭和基地をはじめとする南極の基地や越冬隊員の役割について解説!

COLUMN | 2019.11.21

南極大陸には調査や観測を目的とした基地がいくつもあることを存知ですか?

もしかすると日本が所有する”昭和基地”など、名前だけはどこかで聞いたことがあるという方が多いかもしれませんね。

これらの基地でどのような研究・南極観測が行われているのか、実際にそこに滞在している隊員の方が南極でどのような暮らしをしているのか少し気になりませんか?

そこで今回は南極地域に点在している各国の基地でどのようなことが行われているのか、越冬隊員や観測隊と呼ばれている人たちがどのように生活をしているのかを詳しくご紹介していきます。

1 南極地域にある各国の基地

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1-1 世界各国の越冬基地

南極大陸には40を超える越冬基地が点在しており、基地を所有する国は夏季のみ設営される基地を含むと30ヵ国以上にのぼります。

そもそも南極とは南極条約により自国の領土として主張することを禁止されている地域。

そんな地域に気象観測や生物、地質・地形の研究を目的とした各国の基地が建設されたのは約100年も前のことなんです。

現在でも南極基地では国家間で情報を交換しながら様々な研究が行われていますが、最近では観光客の増加に伴い観光拠点としての役割を担う基地もあるんだとか。

極地での研究は、より正確な結果や成果を出すために長期間に渡り地道に観測し続けることが大切と言われています。

そもそも過酷な環境である南極で長期に渡り研究や観測を続けること自体とても難しいこと。

複数ある基地の中でも人類が南極に基地を建設し始めた当初から研究を続けられているのは日本を含めた数カ国しかないそうです。

1-2 日本が所有する基地

日本が所有する基地は「昭和基地」「ドームふじ基地」「みずほ基地」「あすか基地」の4つ。

この4つの基地の中では、1957年に建設された昭和基地が日本初の南極観測基地なんです。

現在でも有人の越冬基地として使用されているのは、昭和基地と4つの基地の中で最も内陸に位置するドームふじ基地の2つ。

みずほ基地は現在ではドームふじ基地へ向かう中継地点として、あすか基地は無人の気象観測基地としてそれぞれの役割を果たしていると言われています。

2 日本と南極昭和基地の位置関係

南極昭和基地は日本から直線距離で約14,000km離れたリュツォ・ホルム湾東岸、南極大陸氷縁から西に4kmの東オングル島(南緯69度00分22秒、東経39度35分24秒)に位置しています。

日本との時差は-6時間ほど。この場所の海は1年を通して海氷に覆われており、海氷の薄い夏を除いては大陸へ雪上車で上陸することが可能です。

3 基地に滞在している観測隊とは

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3-1 夏隊と冬隊の違い

そもそも定住者がいない南極では基地に滞在する隊員に対し、“越冬交代”という人員の入れ替えが定期的に行われています。

少し以外に思われるかもしれませんが、南極にいる隊員の全てが長期間基地に滞在しているという訳ではありません。

中には冬を超えず数ヶ月間しか滞在しない隊員もおり、実は同じ隊員でも滞在する期間によって隊員の呼び方が変わるんです。

夏の3ヶ月期間、南極に滞在する人たちを「夏隊」1年通して滞在する人たちを「冬隊(または越冬隊)と呼び、全隊員の総称として”観測隊”という名称が使用されるのが一般的。

越冬をする隊員のほとんどは昭和基地かドームふじ基地に滞在することになりますが、夏隊の一部には野外にある観測小屋で生活をしている隊員たちもいるそうです。

3-2 観測隊のメンバーの役割

観測隊を構成するメンバーの大部分は「国立極地研究所」という政府機関の職員や研究員で占められています。

彼らはそれぞれの専門分野の研究・観測または実験が目的で派遣されるメンバー。

しかし、極地で生活していくためには食事や電気・水道といったライフラインの確保やネットワークや衛生設備保守など、様々なサポートが必要ですよね。

そんな生活のサポートするために派遣されるのが「設営部門」と呼ばれる専門知識やスキルを持った人たち。

設営部門の人たちは企業から派遣されますが、もちろん彼らも基地で共同生活を行うため観測隊や越冬隊のメンバーとして参加することになります。

4 日本の南極観測の歴史

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4-1 60年以上前から活躍する希少価値の高い昭和基地

日本初の南極基地である昭和基地。1957年1月29日に第1次南極地域観測隊の永田武隊長ら53人が南極圏にある東オングル島に到着し、昭和基地と命名しました。

この昭和基地を拠点とし、第1次南極観測隊による初めての南極探検が始まったのが約60年前のことです。

昭和基地は世界的に見ても存在する重要度がとても高い基地と言われています。

その理由としては、まず1つが現在に至るまで長期間に渡り調査・観測を継続して行なっていること。そしてもう1つが、昭和基地が位置する東オングル島に他国の基地が少ないことがあげられます。

4-2 日本の南極で行なった研究の功績

日本が行なってきた南極観測や研究・実験での大きな功績のひとつが「オゾンホール」の発見と言われています。

オゾンホールとはオゾン層が薄くなってしまっている場所のこと。

そもそもオゾン層とは大気中に存在し、有害な紫外線を吸収することで地上の生物を保護してくれる気体。エアコンやスプレーに使用されるプロパンガスが原因で、オゾン層が破壊され薄くなってしまっている場所がオゾンホールと呼ばれています。

1982年に日本の気象研究所が南極上空のオゾンが減少しているのを発見したことで、オゾンホールの存在が広く認識されるようになったんだとか。

当時、日本の研究者たちはオゾンが破壊されてしまう原因まで特定することができず、その後アメリカの研究者によってその原因が解明されました。

アメリカの研究者はその功績によりノーベル化学賞を受賞するに至り、日本にとっては少し悔しい結果となってしまったと言われています。

5 南極の基地では何を食べている?

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隊員の人たちが普段、基地でどのような暮らしをしているのか少し気になりますよね。

例えば昭和基地には食堂やお風呂の他、個人の部屋や図書館など、生活に欠かせない設備からリラックできるスペースが整っているんだとか。

少し意外と思われるかもしれませんが、基地で取る食事は私たちの普段の食事とさほど違いがある訳ではないんです。基地には定期的にお肉や野菜お米といった食材が運ばれ、冷凍できない食材以外はだいたい揃っていると言われています。

ただし、長期間保存することができない生野菜などはとても貴重。トマトやキュウリなど基地内ではいくつかの野菜が栽培されているんだとか。

また、基地には専門部門ひとつである料理人も一緒に滞在しています。野外調査の時を除き料理人が美味しく栄養バランスの考えられた食事を提供してくれているそうです。

南極基地で行われる宇宙の研究

各国がそれぞれ所有し、南極大陸に点在している観測基地。40を超える基地にはそれぞれ観測隊が滞在しており、国家間で協力しながら様々な研究や観測が行われています。

そもそも南極は人的な環境汚染の影響が少なく、より自然に近い状態で研究・観測をすることのできる地域と言われている大陸。

そんな南極大陸で行われている研究のひとつに”宇宙の研究”あるという話を聞いたことはありませんか?

実は南極はオーロラをはじめ、宇宙圏現象が多く見られる地域。また、宇宙の貴重な研究材料である隕石が多く発見されるといった特徴があることから”宇宙に開いた窓”と呼ばれているんだとか。

宇宙の研究から、環境や気象といった私たちにも身近な研究、生物や氷床の研究など、様々な研究をするために作られたのが南極観測基地なんです。

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