南極観測船とは?その歴史や役割について解説!

COLUMN | 2019.12.17

毎年11月になると南極に向けて出航し始める南極観測船。日本初の観測船として知られる1957年の「宗谷」から60年以上にも渡って継続してきました。

日本国内でも南極観測船が出発するたびに、ニュースとして取り上げられるほど大きな関心を集めます。

その一方で、南極観測船の歴史的変遷や具体的な役割についてご存知ない方も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、意外と知られていない南極観測船の役割や歴史、そして世界各国に存在する南極観測船に至るまで詳しくご紹介いたします。

1 そもそも南極観測船とは?

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南極観測船とは、簡単に言ってしまうと「南極で必要な物資・人員の供給や観測・実験任務のために派遣される船」のこと。

日本では毎年11月になると、南極基地に向けて出発し、約5か月間も渡って南極地域の観測協力行動を行います。

隊員は原則として全員が海上自衛官。大時化の海や極寒の気候にも対応できるプロフェッショナルのみが南極観測船への乗船を許されているわけです。

任務の中でも特に重要なのは、南極の東オングル島に位置する観測地点「昭和基地」への物資供給。

船の目的地である昭和基地では、約60名もの観測隊員たちが過酷な環境の下、気候、生態系、天体等に関する研究調査を行いながら暮らしています。

基地への物資供給は、年に一度のみ。もしこの供給が途絶えれば、南極という極地で暮らす隊員たちが生活できなくなってしまうわけです。

2 日本における南極観測船の歴史と変遷

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2-1 初代 「宗谷」

初めて南極観測は1957年、「宗谷」と呼ばれる観測船で行われました。

実はこの宗谷、元々は観測船ではなく特務艦として造られたもの。特務艦とは戦闘ではなく軍隊の後方支援を担う船のことで、太平洋戦争の頃に使われていたものだったのです。

特務艦としての役目を終えた後は海上保安庁に引き取られ、灯台設備のメンテナンスを行う「灯台補給船」として従事します。

転機となったのが1955年に開催された第一回南極会議。日本はこの会議にて南極観測へ参加する意思を表明。間も無く砕氷船の選定に動き始めました。

そこで候補として選出されたのが、宗谷。ミッドウェー海戦をはじめ、数々の歴史的事件を経て尚活躍する宗谷の持つ強運が評価され、南極観測船に選ばれるに至ったのです。

2-2 2代目 「ふじ」

初代「宗谷」の次に南極観測船の役目を担ったのは、「ふじ」。

特務艦を観測船として利用した宗谷に対し、ふじは最初から南極観測のために造られた船でした。

極地に対応できるよう、砕氷能力を強化。80~120cm程度の分厚い氷を砕きながら進むことができたため、当時としてはかなり優秀な砕氷船だったと言われています。

1965年に初出航してから南極と本土を往来し続け、1983年の観測をもってその役割を終えました。

2-3 初代「しらせ」

「ふじ」の次に登場したのが、初代「しらせ」です。

名称は、初代南極観測隊の隊長 白瀬矗(しらせ のぶ)氏を讃えて命名された「白瀬氷河」にちなんで「しらせ」と名付けられました。

前述した「ふじ」よりも砕氷能力がさらに強化され、その能力は3ノット*で150cmもの分厚い氷を連続して砕きながら進むことができてしまうほど。

1983年から2009年までの26年もの間、南極観測船として活躍しました。

*ノットとは、1.852kmを1時間で進む速さのこと

2-4 2代目 「しらせ」

2009年から2019年12月現在まで、現役の南極観測船として活躍しているのが2代目「しらせ」です。

本来であれば先代の砕氷船と同じ名前をつけることはできません。

しかしながら、先代と同じ「しらせ」という艦名を望む投書の多さと国民の熱意を受け止め、防衛省は2代目にも「しらせ」と命名するに至りました。

毎年行われる南極観測以外にも、2018年の北海道大地震で被災者した方々への支援を行うなど単なる観測船としての枠を超えて活躍しています。

3 実は凄い。南極観測船「しらせ」の砕氷能力

現在活躍している南極観測船「しらせ」。実は世界有数の砕氷船として知られています。

特筆すべきはその砕氷能力。初代しらせと同じく、3ノットで150cmもの分厚い氷を連続して砕きながら進むことができるのです。

また150cm以上の氷に対しては、200mほど後退してそこから全速力で乗り上げ氷を砕く「チャージング砕氷」と呼ばれる方法が用いられることもあります。

他にも、船内のタンクオイルを片方に移動することで重心を傾けて氷を砕く「ヒーリング砕氷」など、氷河を物ともせず突き進む「しらせ」の砕氷能力は圧巻です。

4 世界各国にある南極観測船たち

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ここまでご紹介してきた日本の「しらせ」以外にも、世界には多くの南極観測船(砕氷船)が存在します。

4-1 ロシア

ロシアが保有している南極観測船は、世界で最も強力な砕氷船との呼び声も高い「シビーリ」。

なんと、最大280cmもの分厚い氷を砕きながら進むことができます。前述した日本の砕氷船「しらせ」よりもはるかに優れた砕氷性能を搭載しているのです。

現在はシビーリを凌ぐ、凄まじい砕氷船の造船も計画されているのだそう。

今後のロシアの砕氷船にも要注目です。

4-2 オーストラリア

オーストラリアで25年もの間、観測船としての役割を果たしてきたのが「オーロラオー ストラリス」です。

船速2.5ノットで厚さ120cmの氷(一年氷)を連続で砕氷可能。先ほどご紹介したロシアのシビーリには劣るものの、安定した砕氷性能が特徴と言えるでしょう。

ただし、オーロラオー ストラリスはすでに船齢も25年。そのため現在オーストラリアでは、より性能の高い次期砕氷船の造船が計画されているようです。

4-3 中国

中国には「雪龍」と呼ばれる南極観測船が存在します。

基本的には南極観測がメインですが、北極圏の観測にも利用されることもあったようです。

しかしながら、初代「雪龍」は元々貨物船を改造した船であったことから、極地での活動にも限界が訪れ、現在の雪流は2代目に当たります。

初代とは異なり、船首だけでなく船尾にも砕氷能力を搭載しているのが特徴です。

南極観測船は、本土と基地を繋ぐ生命線

今回は、南極基地を支える「南極観測船」について詳しくご紹介しました。

日本では、初代「宗谷」より60年にも渡って南極観測が継続されてきました。

もちろん南極観測船は砕氷能力にこそ差はあれど、昭和基地に駐在する観測隊員たちにとっては言わば生命線そのもの。観測船がきてくれなければ、物資の供給も途絶えてしまうからです。

今後も南極観測船は、本土と基地をつなぐ重要な架け橋となってくれることでしょう。

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