雪と氷に覆われた南極に棲むペンギンたち。その生態について知る

COLUMN | 2020.01.14

南極に生息する動物といった時に、まず想像するのは「ペンギン」ではないでしょうか?

実はみなさんの想像する雪と氷に覆われた南極(大陸性南極)で子供を産み育てているのは、ペンギン全19種類中たったの2種類のみ。

水族館でもお馴染みのメジャーな動物ですが、野生のペンギンたちの生態については意外と知られていないことも多いようです。

そこで今回は知ってそうで知らない、南極に住まうペンギンたちの生態や暮らしを中心に、地球温暖化がもたらすペンギンたちへの影響に至るまで詳しくご紹介します。

1 なぜペンギンたちは極寒の南極で生きていけるのか?

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そもそもペンギンたちは、一年を通して平均気温が-20度を下回る極寒の南極でも、なぜ凍えずに生きていけるのでしょうか?

実は動物には、変温動物と恒温動物という2種類が存在します。

変温動物とは、外気温により体温が変化する動物のこと。一方で恒温動物とは、外気温に関係なく体内の温度を一定に保つことのできる動物のことを指します。

極寒の大陸性南極で繁殖を行うペンギンは、外気温に左右されることない恒温動物。厚い皮下脂肪と密集した羽毛で体を覆うことで断熱性を高めることで、-20度を下回る気温にも対応しているのです。

ちなみに私たち人間もペンギンと同じ恒温動物。しかし裸で南極に放り出されでもしたら、脂肪も羽毛もない人間はあっという間に凍死してしまいます。

このことから、極寒地を生き抜くペンギンたちの体の強さとたくましさを感じるはずです。

2 南極大陸で子供を産み育てるペンギンは2種類のみ

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地球上で確認されているペンギンの種類は、現在19種類。フンボルトペンギン、ロイヤルペンギン、マゼランペンギン、ヒゲペンギンなどその種類は実に様々。

しかしながら、極寒の南極大陸という地で子供を産み育て繁殖を行うペンギンは、コウテイペンギンとアデリーペンギンの2種類のみ。

2-1 コウテイペンギン

あらゆるペンギンの中でも最も南に生息するのが、コウテイペンギン。

その全長は人間の6歳児に匹敵する115 ~130cm、体重は20~45kg前後。肉付きの良いがっしりとした体躯で、大きさは全ペンギンの中でも最大。

体色は白と黒を基本に、頭部から胸部にかけてうっすらと黄色を帯びているのが特徴です。

捕食するのは、南極海に生息する魚類やオキアミが中心。また潜水能力にも非常に優れていて、中には水深500mまで潜る猛者もいるほど。

そのたくましい生き様は、度々ドキュメンタリー番組などでも特集されることでも有名です。

2-2 アデリーペンギン

アデリーペンギンは、前述したコウテイペンギン同様、最南端に分布するペンギンの1種。

「アデリーペンギン」という名称は、1840年、南極に上陸した探検家のデュモン・デュルヴィル氏の妻 アデリーの名前が由来です。

全長は60~70cm、体重は5kg前後とコウテイペンギンに比べると体は小さめ。目の周りにある「アイリング」と呼ばれる白い羽毛が特徴的です。

捕食するのは、コウテイペンギンと同じく魚類、そしてオキアミを始めとした甲殻類が中心。泳ぎも得意で、時には捕食のために300km以上の距離を往復することも。

ただし近年は地球温暖化等の影響を受け、種の保全が叫ばれています。

3 南極に住まうペンギンたちの暮らし

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南極に住まうコウテイペンギンとアデリーペンギン。

彼らの暮らしにとって非常に重要なのは、「繁殖行動」です。アザラシを始めとした天敵と-20度という凄まじい寒さと中で、子供を産み育てて行かなければなりません。

特徴的とされているのが、「コロニー」と「クレイシュ」と呼ばれる集団を形成する習性。

まずは親鳥(ペンギン)たちが一箇所に身を寄せ合いコロニー(集団繁殖地)を形成することで、互いに寒さや天敵から身を守りつつ交尾と産卵を行います。

そして生まれた雛鳥たちが成長すると、今度は雛鳥たちが集まる「クレイシュ(保育所)」を形成。親鳥たちはコロニーから離れ、我が子の生育に欠かせない採餌へと向かいます。

採餌から戻ってきた親鳥は鳴き声で我が子を判別し、汗水垂らして採ってきた餌をようやく雛鳥へと与えることができるわけです。

形成後から3ヶ月経つ頃にはクレイシュは消滅し、大きくなった雛鳥たちは海へと旅立って行きます。

このサイクルは非常にめまぐるしく、親ペンギンたちは常に大忙しです。

4 自分の雛を失ったコウテイペンギンの悲しい末路

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コウテイペンギンの繁殖行動はしばしば「身を寄せ合って懸命に暮らすペンギンたち」としてその姿が紹介されることも多いですが、現実はそう甘くはありません。

コロニーやクレイシュを形成しても、天敵たちから100%身を守ることは不可能です。例えば、採餌に出ている間、我が子が天敵のアザラシの餌にされてしまうこともあります。

そして採餌から戻り自分のヒナがいないことに気づいた親鳥は、なんと他のヒナを奪おうとすることもあるのです。その結果、群がる雌の親鳥に押しつぶされて、命を落とす雛鳥もいます。

厳しい環境下で自分の子供を守り育てていくのは至難の技。

約半数近くのヒナが大きくなる前に死んでしまうと言われるほど、あまりに過酷な現実が南極にはあるのです。

5 地球温暖化が南極のペンギンたちに与える影響は?

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地球温暖化が、南極で暮らすペンギンたちに大きな影響を及ぼすことは間違いありません。。

確かに地球温暖化によって海水の温度が変化し魚類たちが減少すれば、ペンギンを始め、魚類を捕食する上位種の餌もなくなることを意味します。餌を失ったペンギンたちは、餌に飢え、いずれは絶滅してしまう可能性も考えられるわけです。

実際に前述したアデリーペンギンたちも、周辺に生息する「オキアミ」の減少に伴い、その数が減少傾向にあると言われています。

アデリーペンギンと比べると比較的安定していると言われるコウテイペンギンも、温暖化によって氷の溶解が進めば、住処を失うことにもなりかねません。

私たち人間が、身の回りの小さなことから地球温暖化の抑止に向けた行動を起こしていく必要があります。

ペンギンたちは、氷に覆われた極地で逞しく生きる。

今回は、意外と知られていない南極に住まうペンギンたちの生態を中心に詳しくご紹介しました。

コロニーを形成して子育てする姿はとても愛らしいものです。ただしその反面、子を失った親が他の雛鳥を奪い合うといった過酷な現実も。

そういった自然の厳しさは、水族館などでは見ることはできません。

厳しい環境の中でも必死に生きるペンギンたちの逞しい姿が南極にはあります。

 

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