南極半島ってどんな場所?島の地理や自然・生態系について

COLUMN | 2020.02.28

分厚い氷床、そして吹き荒れるブリザード。南極大陸は世界有数の極寒地であることは、最早いうまでもありません。

しかしながら一般的に「南極大陸」と「南極半島」を混同している方が多いのも事実。

確かに、南極半島も南極大陸の一部であることは間違いありません。その一方で、気候や生態系は南極大陸のいわゆる「内陸部」とは少し異なります。

厳冬期は-20度を下回る内陸部と比べると暖かく、絶景スポットも多く存在することから「地上最美の地」と呼ばれることもあるのだとか。

今回は、そんな南極半島について、内陸部との違いや南極半島を構成する島、さらには大自然が織り成す絶景スポットに至るまで詳しくご紹介します。

1 そもそも南極半島はどこにあるのか?

そもそも南極半島はどこにあるのか?

観光名所としても有名な南極半島ですが、南極大陸とは独立した陸地だと思われてしまったり、反対に「南極大陸 = 南極半島」だと勘違いされてしまうこともよくあります。

南極半島とは簡単に説明すると、南極大陸西部に大きく突き出したS字型の陸地のことです。南側はパーマーランド、北側はグレアムランドと呼ばれることもあります。

南極大陸を巨大なフライパンに例えた時、ちょうど持ち手の部分に当たるのが南極半島だと考えるとわかりやすいかもしれませんね。

人類が初めて到達した南極大陸の一部としても知られています。

大陸の内陸部に比べると気候も穏やかであることから、世界各国の観測基地もここ南極半島に集中していることでも有名です。

2 南極半島と南極大陸の違い

南極半島と南極大陸の違い

南極半島は南極大陸の一部でありながら、生態系や気候をはじめ異なる点も多く存在します。

2-1 気候

南極大陸の内陸部が一年を通して月の平均気温が一年中 0℃以上に到達しない「氷雪気候」であるのに対して、南極半島の気候は「ツンドラ気候」です。

ツンドラ気候とは、最も暖かい月の平均気温が0度以上10度未満の気候のことを指します。もちろん寒帯気候の1つなので、寒いことに変わりはありません。

一方で、年間の平均気温が-20度を下回る内陸部と比べると、南極半島は比較的暖かく穏やかな気候と言えるでしょう。

「ブリザードの吹き荒れる極寒の南極大陸」という一般的なイメージとは異なり、島の最北端には雪の積もっていない「露岩地帯」も存在しています。

2-1 生態系

内陸部よりも暖かい気候であることから、動植物も比較的多く生息することでも知られています。

動物であればゼンツーペンギン、ウェッデルアザラシ、ナンキョクオットセイ、トウゾクカモメ科やアホウドリ科。植物は露岩地帯周辺を中心に、蘚苔植物や地衣類も数多く自生しています。

中でも特筆すべきは南極大陸にたった2種類しか存在しない高等植物、ナンキョクコメススキとナンキョクミドリナデシコ。

この2種類が自生しているのは実は南極半島だけなのです。雪が溶けるわずかな間、ささやかでありながら力強く芽吹く姿を見ることができます。

→「北極と南極、「極地」に息づく植物について知る 」の記事へリンク

3 南極半島には「南極圏」に含まれない場所もある?

南極半島には「南極圏」に含まれない場所もある?

南極大陸の一部を構成する南極半島。そんな南極半島の中には、「南極圏」に含まれない場所も一部存在することをご存知でしょうか?

そもそも南極圏とは、南緯66度33分よりも南側のエリアのことを指します。

一方で、南緯63度付近の位置する南極半島の最北端は、南極半島の一部でありながら定義上「南極圏」には含まれません。

「南極半島なのに、南極圏ではない」なんてちょっと不思議ですよね。

ちなみに南極圏外である半島北の沿岸部は露岩地帯も多く、気候も南極半島の中ではかなり暖かいことで知られています。

4 南極半島の大自然が織りなす絶景の数々

南極半島の大自然が織りなす絶景の数々

南極半島を語る上で欠かせないのが、雄大な大自然が織りなす絶景の数々。

手付かずの大自然が残る半島は「世界最美の地」と呼ばれることもしばしば。ここでは、南極半島に数多く存在する絶景の中から特に有名なものをいくつかピックアップしてご紹介します。

4-1 ルメール海峡

南極半島の中でも最も観光スポットとして人気なのが、長さ11.2kmにも及ぶルメール海峡。

半島北部グレアムランドとブース島のちょうど間に位置するルメール海峡は見晴らしも良く、山々と氷河が作り出した美しい景色を楽しむことができます。

中でも太陽が顔を覗かせる「日の入り」と夕日の沈む「日没」の瞬間は、真っ白な陸地と陽光の織り成す美しいコンストラストが幻想的です。

4-2 ネコハーバー

アンドヴォー湾の東端に位置するネコハーバー(ネコ港)は、ゼンツーペンギンの営巣地としても知られています。

多数のゼンツーペンギンたちが身を寄せ合って暮らす「コロニー」は圧巻。極地でたくましく生きるペンギンたちの姿は、自然や生態系ドキュメンタリーでも頻繁に特集されています。

ちなみに「ネコ」という愛らしい名前は、この周辺で活動していたノルウェーの捕鯨船の名前が「ネコ号」であったことから、ネコハーバーと名付けられたのだそう。

4-3 ウィルヘルミナ ベイ

グレアムランドの西部の海岸に位置するのが、ウィルヘルミナ・ベイです。

最初にウィルヘルミナベイを発見したのは、1897年~99年にかけ南極探検を行ったゲーラーシェ探検隊。当時のオランダ女王の名「ウィルヘルミナ」の名をとって、ウィルヘルミナベイと名付けられたのだそう。

海中に漂う南極生態系のキーストーン種「オキアミ」を捕食するアザラシやクジラが多く集まることでも知られています。

4-4 ウォーターボートポイント

ルメール島とブライド諸島の背後に位置する広大なパラダイス湾。その一部として知られるのが、ウォーターボートポイントです。

周囲の雪山を映し出す鏡のような海面は、思わず息をのむほどの美しさ。

そして特質すべきは干潮時。普段は半島とは切り離されているウォーターボートポイントですが、潮が引くことで南極半島と陸続きになるタイミングがあります。

満潮時と干潮時、異なる2つの表情を楽しむことができることから観光スポットとしても人気です。

南極半島は、まさに地上最美の地。

今回は、手付かずの大自然が残る南極半島についてご紹介しました。

南極と聞くとブリザードの吹き荒れる極寒地を想像してしまいがちですが、それはあくまで内陸部のお話。

中でも南極半島北は比較的暖かい気候であるため、観光スポットとして非常に人気です。

ちなみに本記事でご紹介したルメール海峡、パラダイス湾、ネコハーバーは、南極半島に存在する絶景スポットのほんの一部に過ぎません。

南極半島は、ありのままの大自然を肌で感じるまさに”地上最美の地”。これから先もこの素晴らしい大自然を守り抜き、後世に伝えていきたいですね。

LINEで送る

一覧へ戻る