南極大陸が原産地の鉱物。希少性の高い「南極石」とは?
COLUMN | 2020.04.07
皆さんは「南極石」という鉱物をご存知でしょうか。
その名称の通り南極大陸を原産地とする南極石。実は始めてこの鉱物を発見したのは日本の南極観測隊と言われています。
あまり聞き馴染みがないという方が多いかもしれませんが、南極石には他の鉱物にはない珍しい特徴や性質を持っているんです。
今回はそんな「南極石」の特徴や性質、産出される地域などを詳しく解説していきます。
1 南極石の特徴と性質
南極石とはハロゲン鉱物という種に分類される、塩素やカルシウムなどを主な成分としている針状結晶の鉱物のこと。
別名”アンタークチサイト”と呼ばれている南極石。大変希少とされる由縁は融点が”25度”ととても低いところではないでしょうか。
すなわち”鉱物”であるにもかかわらず、南極石は室温程度でも融解してしまうためその姿は液体。結晶である個体の姿を見ようとする場合は、冷蔵庫などで冷し続ける必要があるんです。
南極石という名称は、原産地である南極大陸のドンファン池で発見されたことがその由来。1963年、第一次から南極観測隊に参加している探検家の鳥居鉄也氏が始めて発見したと言われています。
実は日本人が南極大陸で新種の鉱物を見つけたとは、少し意外に感じますよね。
2 南極石はどんな場所で採取される?
その名称から、南極大陸のみで採取が可能と思われがちな南極石。実は他の場所でも産出されている鉱物なんです。
現在では、アメリカのカリフォルニア州にあるブリストル湖、南アフリカのリンポポ州ドリーコップ鉱山、その他にも、中国やロシア、オーストラリアなど、世界各地で採取されています。
そして、この南極石の驚くべき点は地球外でも産出されているところ。以前行われた火星調査の折、火星にあるコロンビア丘陵という箇所からも南極石は採取されたんだとか。
もはや南極石は原産地の南極大陸のみならず、地球外からも産出されている鉱物なんですね。
3 南極石は持ち帰ってもよい?
南極大陸を訪れた際には、ついつい記念に石などを持ち帰りたいという衝動にかられるかもしれません。
ぜひ知っておいていただきたいのは、南極にある石などの鉱物を研究や調査以外の理由で無断で持ち出すことは南極条約議定書に抵触する可能性があるということ。もちろん南極石もその例外ではありません。
また前述した通り南極石は融点が低いため、扱いが難し鉱物と言われています。
南極大陸では”蒸発乾固物”という再結晶に似た方法で一応、南極石は採取可能な場合があるかもしれません。ただ、南極条約議定書がたとえなかったとしても南極石はそもそもが持ち帰ること自体難しいかもしれませんね。
4 南極石を使用した加工品
鉱物といえば、アクセサリーや調度品などの加工品に流用されるイメージを持っていませんか?
結論からいうと現状、南極石にはそのような加工品は存在しません。
理由は前述した通り、融点が低いため個体として存在していられる環境があまりにも限定的になってしまうため。
そんな理由から、研究以外での南極石の用途は”標本”としての展示が大半を占めているんだとか。
もしかするといずれ新しい技術の登場により、南極石の加工品を身に付ける時代が来るかもしれませんね。
南極石はどれくらいの価値がある?
本日は南極大陸が原産地の鉱物、「南極石」についてご紹介してきました。
南極石は、融点が25度という他の鉱物には見られない珍し性質を持っています。そんな理由から、鉱物としての希少性が極めて高いと言われているんです。
ただし、現在は世界各地で採取されており全く手に入らないということはありません。小瓶程度の量が入った液体の南極石なら、少し高額ですが1万円前後の金額で個人でも手に入れることも可能です。
もし本記事で南極石について興味が沸いたという方は、実際の南極石を観察してみるのもよいかもしれませんね。