南極のトイレはどうなっている?意外と知らない極地のトイレ事情について

COLUMN | 2020.01.28

私たちの暮らす日本のような水道設備やインフラは、残念ながら南極にはありません。そこで気になるのが排泄、すなわち「トイレ」に関するお話。

下水設備などもない南極では、一体どのようにして用を足しているのでしょうか?

とりわけ南極の基地(昭和基地)で暮らす観測隊員たちにとって、トイレに関する話は避けては通れません。

少し汚い話にも聞こえますが、排泄という行為は食事やお風呂と並んで人間が生きていく上で欠かすことのできないものです。

そこで今回は、意外と知られていない南極のトイレ事情について、その変遷やトイレに関する技術に至るまで詳しくご紹介します。

1 南極のトイレ事情の変遷

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1-1 当初は雪面に穴を掘ってトイレ代わりに

基地を拠点にした南極観測行動が始まって間も無い頃は、簡易トイレすらありませんでした。そのため当初は雪面に穴を掘り、そこで用を足すという方法が主流だったのだそう。

普段からトイレで用を足している現代の私たちからすると、想像もできないことかもしれませんね。

しかも外気温は-20度を下回るような凍てつく空気。その中で用を足すのはかなり大変だったようです。

1-2 水洗トイレが登場

1960年代になると、ようやくお馴染みの水洗トイレが登場します。これでようやく「雪面に穴を掘って用を足す」という原始的な方法から解放されたわけです。

その一方で、水洗トイレの排泄タンクの処理方法も問題視されるようになります。

というのも当時は、タンクに貯めた排泄物をそのまま海へと放出する以外の方法が存在しなかったからです。この方法を継続すれば海洋汚染が進んでしまう可能性もありました。

1-3 近年は焼却方式がメインに

水洗式トイレの環境汚染問題を見直し、新たに導入されたのが焼却方式のトイレです。焼却方式では、一旦排泄物を焼却し灰にしてから持ち帰ることで環境への負担を大幅に軽減しています。

汚水に関しては一度汚水処理槽で浄化したのち、ドラム缶に入れて海洋投棄するのが基本です。

ちなみに日本の南極観測地点として知られる昭和基地でもこの方式が採用されています。

別々に処分するのは手間がかかりますが、南極という貴重な環境を守るために欠かすことはできません。

2 現在、野外でトイレをするのは禁止されている

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当初は止むを得ず雪面で用を足すこともありましたが、現在は環境保護法により全面的に禁止されています。

南極という環境は外部からの力に弱いため、私たち人間の残した排泄物に含まれるわずかな微生物であっても、生態系に大きな影響を与える可能性があるからです。

とは言っても、観測隊員たちは毎日トイレの常設されている基地の中で過ごしているわけではありません。時には観測行動の一環で野外調査へ赴くこともあります。

ただし、その際も野外で用を足すことは当然ながら許されていません。

野外調査の際は、「携帯トイレ」や「ペールトイレ(ペール缶を使った簡易トイレ)」を使って用を足すのがルール。使用後は基地まで持ち帰ってから処分しています。

そもそも、南極は元は未開の地。人が南極という地で長期的に観測行動を行う以上、その影響を可能な限り小さくする必要があります。

3 南極で用を足すとすぐに凍るって本当?

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ここで1つ気になるのが、「もし南極に行って屋外で用を足したらすぐに凍るのか?」というお話。

結論から言ってしまうと、用を足すと同時に凍っていくということはまずありません。

もし仮に排泄と同時に凍るような寒さがあるとすれば、そもそも露出し外気に触れている私たちの肌もただでは済まないはずです。

ただし、-50度を下回るような猛烈な寒さの場合、話は別。中には、落下と同時にどんどん凍りついていくということもあるのだそう。

とは言っても、時折噂に聞くような「排泄と同時に凍っていく」という話は少し大げさかもしれません。

最近は「バイオテクノロジー方式」のトイレも登場

今回は、南極のトイレ事情を中心に詳しくご紹介しました。

ちなみに最近は、バイオテクノロジー方式のトイレを採用する基地が増えてきているのだそう。

いわゆる「バイオマストイレ(コンポストトイレ)」は、「微生物」によって排泄物を分解することで、水洗は不要。排泄物を貯めることもないため、嫌なニオイもほとんどありません。

前述した普通の水洗トイレと比べ、環境に優しいトイレなのです。

ちなみにバイオマストイレは、南極基地だけでなく山岳地などでも徐々に普及してきています。

ちょっとディープな南極のトイレ事情。排泄の話題は避けられてしまいがちですが、南極で生活を行う以上、決して欠かすことはできません。

極地ゆえの大変さもありますが、人にも環境にも優しい処理技術を開発し積極的に利用することで、可能な限り「人と自然の共存」を目指しています。

 

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