どこからどこまでが北極圏?以外と知らないその秘密についてご紹介!
COLUMN | 2019.11.06
寒冷な気候、シロクマやアザラシなど極地特有の野生動物の生息地、オーロラ観測のメッカ…。地球の最果てである”北極”に対して皆さんは様々なイメージを持っているのではないでしょうか。
では北極に似た名前である”北極圏”という地域についてはどうでしょう。
そもそも北極圏は北極と違う場所を指しているのか、それとも同じ場所なのかそんな疑問を持ったことはありませんか?
なんとなく北極点の周辺でが北極圏と想像ができても、そもそも北極圏についてその定義についてしっかり説明できる人は少ないのではないでしょうか。
今回は北極圏についてその特徴や歴史的背景、現在抱える問題点などを詳しくご紹介していきます。
1 そもそも北極圏とは
1-1 北極と北極圏は同じ?
そもそも”北極”と”北極圏”は同じ場所なのか、それとも別の場所なのか。結論から言うと北極と北極圏は同じ場所として考えるのが一般的なんです。
ではなぜこのような混乱を招いてしまうのかというと、その理由には「南極」の存在が関係していると言われています。
地球にある6大大陸のひとつである南極。その名前を聞けば大きな大陸を簡単にイメージできるのではないでしょうか。
一方北極とは、南極大陸のように1つの大陸で構成されている訳ではなくそのほとんどは”海”なんです。
北極点の周辺の海、”北極海”の大部分は巨大な海氷で覆われているため大陸と勘違いしてしまっている人が多いのかもしれませんね。
つまり北極とは北極点から一定の範囲にある海や陸地全て、いわゆる”北極圏”にあたる地域を指す言葉なんです。
1-2 北極圏の定義とは?
では”北極圏”とはどこからどこまでの範囲のことを言うのか、実はそこにはちゃんとした定義づけがなされているんだとか。
地球のてっぺんに位置する緯度90度にある北極点。その北極点を中心に緯度66度33分までの範囲が北極圏なんです。
この緯度66度33分の境界線は「極線」とも呼ばれ、北極圏の面積は約1,400㎢とかなり広大。
いくつかの大陸の一部も北極圏に含まれていまが、その大部分は海。そして約450〜600㎢は海氷で覆われていると言われています。
2 北極圏に領土をもつ国々
そもそも北極圏はどこか1つの国によって所有されている地域ではありません。
ユーラシア大陸や北アメリカ大陸などいくつかの大陸の一部が北極圏にまたがっていますが、その大陸や島を自国の領土として所有している国が、その範囲に限り北極圏内の大陸を領土として所有していると考えるのが正しいのです。
北極圏内に領土を持っている国はアメリカ、ロシア、カナダ、イスランド、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマークの計8カ国。
中でもアメリカの領土であるアラスカやロシアの領土であるシベリア、世界最大の島国であるデンマーク領グリーンランドなどが有名なのではないでしょうか。
北極圏全体の管理については、”北極圏は基本的に海”という解釈のもと「国連海洋法条約」という国際法が適用の対象となっているそうです。
3 北極圏に住む人々
北極圏は雪や氷に覆われ人が住めるような土地ではない…なんて思われがちですが、実は私たちが思っているよりもたくさんの人が生活を営んでいます。
例えば北極圏最大の都市であるロシア・ムルマンスクには近代的なデパートやショピングモールが立ち並び、約30万人の人々が暮らしているんだとか。
ここでは、北極圏に向けた冒険の歴史的背景や古くからこの土地に暮らしている民族について見ていきましょう。
3-1 北極圏の先住民族
北極圏の先住民といえば、北欧・スカンジナビア半島に住むサーミ人やカナダ北部やグリーンランドに住むイヌイットが有名ではないでしょうか。
サーミ人はトナカイの遊牧民として知られている先住民族。季節に合わせトナカイとともに移動しながら生活を営んでいます。
現在でもスウェーデンやノルウェー、フィンランドに約5万人のサーミ人が生活しており、人口の約10%がトナカイの牧畜を生業としているそうです。
イヌイットは現地の言葉で”人々”と言う意味を持つ、狩猟を生業とし生活をしている先住民族。
動物の生息地に合わせて犬ぞりを使って家族や村単位で移動を繰り返すため、イヌイットといえば犬ぞりを想像する人も多いかもしれませんね。
伝統的な食生活として”生肉食”が行われていたイヌイットですが、現在は文明が進出してしまったことによりほぼ失われつつあると言われています。
3-2 北極圏を目指した冒険家たち
意外かもしれませんが、ヨーロッパに住む人々は紀元前にはすでに北極圏に足を踏み入れていたという記録が残っています。
しかし、本格的に北極へ向けての探検が開始されたのは15世紀頃と言われています。
北極への冒険家で最も有名な人物のひとりが1882年に初めてグリーンランド海域を航海したノルウェーの冒険家フリチョフ・ナンセンではないでしょうか。
彼が率いる1893年には北極点へ向け遠征を開始したそうですが北極の苛烈な環境に対応することができず、北極点に到達する前に断念してしまったそうです。
実際に冒険家たちが北極点にたどり着くことができたのは20世紀に入ってからと言われています。
4 北極圏の環境問題
北極が抱える最大の問題といえば”温暖化”による影響。
ここでは温暖化が北極圏にもたらしている幾つかの問題について見ていきましょう。
4-1 海氷域の減少
“地球温暖化が原因で北極の氷が溶け出している”。そんな話を聞いたことはありませんか?
実は北極海の海氷域は、2018年に観測史上2番目の小ささである446㎢が記録されるなど2000年を境に減少傾向にあるんだとか。
北極の海氷の減少は地球に大きな影響を与えてしまう可能性があり、実際にそこで生活していない私たちも身近な環境問題として取り組んでいく必要がある問題と言われています。
4-2 気温の上昇による山火事
現在、アラスカ、グリーンランドで大規模な森林火災が頻発していることをご存知でしょうか?
原因は温暖化による気温の上昇。この地域は近年、夏になると記録的猛暑が観測されているんだとか。
例えばシベリアでは今年、約64万ヘクタールの森林が山火事の被害が出ていたり、グリーンランドでも過去3年の間に大規模な森林火災が2度起こるなど異常事態が続いているそうです。
大規模な森林火災は膨大な二酸化炭素を発生させてしまうので、さらに温暖化促進の原因となってしまうまさに”負のループ”と言われています。
4-3 生態系への影響
今年に入ってからノルウェー領スバルバル諸島に住む野生のトナカイが餓死した状態で発見されれました。
その数約200頭、原因は地球温暖化による気候変動が引き起こした食糧不足と言われています。
スバルバル諸島では気候変動によって豪雨が発生し、地上に溜まった雨が凍って氷層となってしまうんだとか。
その結果、本来トナカイ達が食べるはずの草が地表まで出てくることなく十分な餌を取ることができず命を失ってしまったと言われています。
このような食料不足はトナカイ以外の動物にも起こっていますが、過去20年の間にトナカイの数は半数以下に減ってしまっているそうです。
北極圏で起こる天然資源をめぐる争い
今回は北極圏についてご紹介してきました。
北極圏とは私たちが思っている”北極”と同義。緯度66度33分より北緯に位置する海や大陸を含む、地域全てを指す言葉なんです。
8ヶ国が北極圏内に領土を持ち、それらの国々は”北極圏国”と総称されることもありますが、先住民族を含め以外と多くの人たちが現在でも北極圏で生活を営んでいるんだとか。
北極圏は基本的には海であり、どこの国にも属さない公海。
しかし北極圏国の間では地下に眠る天然資源の所有権を主張し、いくつかの領土や領土をめぐる争いが起こっているという事実もあるんだとか。
北極は1つの大陸ではないため、南極にある”南極条約”のような国際法の適用が難しと言われており、領土や領海をめぐる問題が起こってしまうのもその辺りが深く関係しているのかもしれませんね。