今まで知られていない動物の生態!バイオロギングについて解説

COLUMN | 2020.04.14

皆さんはバイオロギングと呼ばれる生物の行動研究をご存知でしょうか?

あまり知られてはいませんが、実はこのバイオロギングは日本が世界をリードしている研究のひとつ。南極大陸に住う生物の行動研究のために行われた調査が、その始まりと言われています。

現在、研究できる施設や大学も増え若い世代にも注目されているバイオロギング。

そこで今回は、バイオロギングとはどんな動物をどのように研究・調査していくのかを詳しくご紹介していきます。

1 バイオロギングとは?

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1-1 バイオロギングという研究

バイオロギングとは動物に「データロガー」という装置を取り付け、動物の行動記録や生態をデータとして取得する研究・調査のこと。

空を飛ぶ生物や水中で生きる生物など、人間が追うことのできる動物の活動範囲はどうしてもごく一部に限られてしまいます。

動物自らデータを記録してくれるならバイオロギングなら、動物を追いかけ回するより自然に近い形で動物の行動を観察することができるんです。

もちろん動物につけたデータロガーを回収し、行動データを取得することがバイオロギングを行う上で最も重要。そのため、以前は”もう一度捕らえることができる動物しか調査できない”ことがバイオロギングの限界と言われていました。

現在では指定した期間に動物から自動的にロガーが切り離され、位置情報を頼りに回収できるようにデータロガーが進化し、より多くの動物も研究対象にできるようになったんだとか。

このバイオロギングが成熟していくことで、今まで知らなかった動物たちの新たな生態が明らかになることが期待されている研究なんです。

1-2 バイオロギングいつから始まった?

バイオロギングは、1964年にアメリカの生物学者、G.L.クーイマンという人物が南極に住むアザラシの潜水の深さと長さを調査するため、キッチンタイマーを改良したロガーを取り付けたことが始まりと言われています。

データロガーの軽量化に伴い、1980年後半から90年代にかけ世界中で広まりを見せたバイオロギング。

日本で独自の研究が始まったのは1980年からと早く、現在でも昭和基地などでバイオロギングを利用したペンギンやアザラシの生態調査が行われているんだとか。

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そもそもバイオロギングという名称はバイオ(生物の)とログ(記録する)という言葉の造語。第1回目バイオロギングの国際シンポジウムが開催された日本で名付けられたと言われています。

2 対象となる野生動物

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バイオロギングは水中に潜ってしまい、その生態が分かりにくいとされる水棲動物が対象になることが多いそう。

南極大陸ではペンギンやアザラシが主な研究対象。どのような方法でバイオロギングが行われているのか見ていきましょう。

2-1 アデリーペンギンの生態

アデリーペンギンは南極大陸やその周りに住う中型のペンギン。バイオロギングに記録されたデータから、水中での食事の様子だけでなく、“どこで獲物を捕らえ”、”どのくらいの量を食事をしたのか”まで分かるようになったんです。

バイオロギングではアデリーペンギンの背中と頭の上にデータロガーが取り付けられます。

背中ロガーからは水中でのペンギン目線からの映像情報を、頭の上のロガー(加速度計)からは食事の瞬間にでる波形を得ることで、どのくらいの獲物をとったかという情報を取得できるようになったんです。

また、足につけた記録計を取り付けた場合、1年の間に気温に合わせて移動する経路まで分析が可能となりました。

2-2 アザラシの生態

南極の氷上で横になっているイメージのアザラシ。実は700m以上海中へ潜ることのできる高い潜水能力をもった生き物なんです。

あしひれに取り付けられたバイオロギングの情報からアザラシがどのように体を使い潜水を行うのか、また少ない酸素でも体を動かせる、言い換えれば“水中で長く息をとめていられる体のしくみ”が研究されているそうです。

2-3 渡り鳥の生態

バイオロギングの調査対象はもちろん海洋生物だけにどどまりません。

例えば世界中の空を飛び回る「渡り鳥」。季節に合わせて一定の動きをすると考えられていましたが、バイオロギングにより種類によって移動範囲が異なることが分かってきたんです。

一般的には夏には子育てをしやすい場所から、冬には越冬するために温かい場所へと移動を繰り返す渡り鳥。

そもそも鳥には上昇気流なのどを利用して飛ぶ鳥と、自身の羽を動かすことで飛ぶ鳥の2種がいると言われています。

前者の場合、種類に関係なく長い距離を移動している一方、後者の場合、体重の軽い鳥の移動距離は長く、体重が重くなるについて移動の移動の距離は短くなっていくそうです。

バイオロギングによって、渡り鳥のデータを一手に集め比較することでこのような事実が分かってきたんですね。

3 バイオロギングで発見された新事実

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バイオロギングでは、今まで調査できなかった範囲まで対象を広げられるため、今まで常識として扱ってきたものが覆ってしまうこともあるんです。

例えばウミガメとペンギンの体温について。

今まではウミガメは爬虫類に分類される”変温動物”、ペンギンは鳥類のため恒温動物と考えられていました。

ただ、バイオロギングによって水中で体温を計測することが可能となった今、実はウミガメは水中では体温が変化せず、逆にペンギンの方が水中で体温がどんどん下がっていくことが分かったんです。

ウミガメはその体の大きさから以外と水温の変化を受けず体温が安定し、一方ペンギンは長い時間水の中に潜るため自ら代謝を下げ、結果的に体温が下がるような体のつくりがバイオロギングによって解明されたんです。

このように、今まで生態を調べることが困難な状況下でも調査が可能となるバイオロギング。このウミガメとペンギンの例は、今まで常識として扱っていた情報が覆った好例のひとつではないでしょうか。

生物の生態に興味がある若い世代が関心を寄せる学問

本日は動物にデータロガーを取り付け、取得したデータにより行動を分析する「バイオロギング」についてご紹介しました。

バイオロギングは水中に住う生物、空を飛ぶ生物など、今まで人間が追いかけることが困難とされていた動物の生態を解明するための礎となりえる研究なんです。

日本におけるバイオロギングの研究者の平均年齢は、20〜30代の若い世代に多いと言われています。また、生物学に関心を寄せる若者にも注目されつつある学問のひとつなんだとか。

生物学に興味があるけどバイオロギングについてはあまりご存知ない方は、ぜひ本記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。

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