氷床に現れる大地の裂け目「クレバス」とは?

COLUMN | 2020.02.04

氷床や雪上の上に突如として現れる大地の裂け目、「クレバス」。

極地のプロフェッショナルであるアルピニストや探検家ですら、ややもするとその裂け目に落下し、最悪の場合命を落とすこともあると言います。

以前はクレバスの底に滑落したアルピニストの救出劇などが、テレビでも度々取り上げられていました。

一方で、落下すれば命の保証はないことは百も承知でありながら、その暗く深い裂け目の下を覗き込みたくなる。そんな衝動に駆られる方も多いのではないでしょうか?

今回は、危うさと美しさを併せ持つ「クレバス」について、その深さや発生メカニズムを中心に詳しくご紹介いたします。

1 そもそも「クレバス」とは?

そもそも「クレバス」とは?

クレバス(crevasse)とは、氷床や雪上に現れる大きな割れ目のこと。主に、雪山や雪渓といった場所で多く観測されています。

割れ目を覗き込んでも底部を確認することはほとんどできないため、「ひょっとすると地球の内側まで続いているのではないか?」という恐怖感を覚える方も多いのだとか。

実際の深さはだいたい10メートル〜数十メートル前後。

底の見えない恐怖感に反して、意外と浅いように感じる方も多いかもしれませんね。しかしながら、たとえ10メートル位のクレバスであっても滑落事故を起こせば命を落とすケースもあります。

経験豊富なアルピニストたちであっても、常に細心の注意を払った上でアクティビティを行なっているのです。

2 クレバスと混同されがちな現象

2-1 クレバスとベルクシュルンド

クレバスとよく混同されがちなのが、ベルクシュルンド(ラントクルフト)の存在。

クレバスが雪上に現れる割れ目であるのに対して、ベルクシュルンドは対岸と雪渓の間に出現する割れ目のことを指します。

要するに岸へと続く氷河の一番端にある割れ目がベルクシュルンドというわけです。

ベルクシュルンドの下には沢が流れていることも多く、万が一落ちれば冷たい沢の水と一緒に流され陸に上がれなくなってしまうこともあります。

2-2 クレバスとスノーブリッジ

ベルクシュルンドの他にも、クレバスの似た現象として「スノーブリッジ」というものが挙げられます。

雪渓の下が流水によって溶けることでまるで橋(bridge)のような形状になることから、スノーブリッジ(Snow bridge)という名前がつけられました。

溶けて脆くなったスノーブリッジの上を歩けば薄い氷が崩れ、クレバスやベルクシュルンド同様、数十メートル下に落下してしまう可能性も。

極地にはクレバス以外にもたくさんの危険が存在することがわかりますね。

3 クレバスの発生するメカニズム

クレバスと混同されがちな現象

やはり気になるのが、クレバスの発生するメカニズム。なぜ雪上に突如として巨大な割れ目が出現するのでしょうか?

実はそのメカニズム自体は意外とシンプル。クレバスのきっかけとなるのは、氷河や雪の上にできたごく小さい「クラック」と呼ばれるヒビ。

このクラックが雪解けとともに次第に大きくなることで、巨大な割れ目(クレバス)になると考えられているわけです。

ちなみに内側は表面のツルツルとした氷に覆われ、そこに近づくにつれて狭くなっていく構造のものが多いと言われています。壁面はほとんど垂直に近く、運良く途中で引っかからない限りは大怪我は避けられません。

4 雪上に潜む「ヒドゥン・クレバス」

クレバスの発生するメカニズム

クレバスの中でも非常に厄介な存在として知られるのが、ヒドゥン・クレバス。

ヒドゥン・クレバス(hidden crevasse)とは、その名の通り「隠れた(hidden)」クレバスのこと。雪上にできたクレバスが降雪によって覆われることで、外見からはその存在を視認できなくなります。

そのため、うっかり足を踏み下ろした先が実はクレバスだったという恐ろしいアクシデントを起こす可能性もあるわけです。

初めからクレバスの存在を認識していればいくらでも回避策は取れますが、不意を突かれると人間は弱いもの。そのまま落下し、命を落とすこともよくあります。

5 もしクレバスに落ちてしまったら?

雪上に潜む「ヒドゥン・クレバス」

ではもし暗く深いクレバスの底に落ちてしまったらどうなるのでしょうか?

クレバスは、浅くても10メートル以上のものがほとんど。これは一般的なビルで言えば、だいたい4~5階に相当する高さです。

打ち所が悪ければ、当然ながら命を落とすこともあります。もし息があったとしても、怪我を負った状態で壁面にピッケルを引っ掛けながら登っていくのは困難を極めることでしょう。

その場合は一緒に行動しているメンバーが「ホーリングシステム」と呼ばれる引き上げ用具をセットして、救助を行うこともあります。

もちろん同伴メンバーは救助のプロとは限りません。なので必ずメンバーのいずれかが、救助隊の出動を要請することも必須です。

恐ろしくも美しい、大地の裂け目クレバス

吸い込まれてしまいそうな恐ろしさ、そして大自然の美しさを感じる大地の裂け目クレバス。

自然という広大な環境からすれば、クレバスはほんの小さな割れ目の1つにすぎないかもしれません。しかしながら、私たち人間にとって、その些細な割れ目ですら非常に大きな脅威となります。

常に注意を払っている経験豊富なアルピニストですら、深く暗いクレバスの底に落下し、そのまま帰らぬ人となることもあるのです。

極地に存在する数多くの脅威の一部に過ぎないクレバスからも、大自然の厳しさを垣間見ることができます。

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