南極の砂漠「ドライバレー」とは?極地環境が生み出した自然の神秘を知る。

COLUMN | 2020.01.21

一般的に「南極」という言葉を耳にした際、万年雪と分厚い氷床に覆われた極地を思い浮かべる方がきっと多いはず。もちろん、そのイメージも決して間違いではありません。

しかしながら、南極には私たちの想像を超えるような景色が存在します。

その1つが本記事のメインテーマ、「ドライバレー(Dry Valleys)」です。ドライバレーとは、簡単に言ってしまうと砂漠にも似た「無雪地帯」のこと。

「氷に覆われた大地」というイメージの強い南極にも、雪1つ積もっていないエリアが確かに存在します。

今回は、凍てつく極地に突如として現れる不思議な「ドライバレー」について詳しく見ていきましょう。

南極にある砂漠「マクマード ドライバレー」

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南極を構成する島の1つ、ロス島からマクワード湾を挟んだ対岸「ビクトリアランド」。そこに突如として現れる広大な無雪地帯が、マクマードドライバレーです。

標高の異なるテイラー谷、ライト谷、ビクトリア谷という3つの谷で構成されるドライバレーの無雪地帯は、およそ4,000 平方キロメートルに及びます。

辺り一帯は極めて湿度が低いのが特徴で、雨が降ることもほとんどありません。

1900年代初頭、イギリスの南極探検家として有名なロバート・ファルコン・スコット氏率いる探検チームが、ディカバリー遠征時に初めてドライバレーを発見したと言われています。

当初、雪と氷に覆われた白銀の世界だと考えられていた南極に、砂漠を思わせる広大な無雪地帯が存在するという発見は衝撃的でした。

極寒地の南極にドライバレーができたのは何故?

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では極寒地の南極に、なぜドライバレーという無雪地帯が生まれたのでしょうか?

ドライバレーを作り出した要因は大きく分けて2つ。

1つは、ドライバレー周辺を囲む山々が沿岸部で降りしきる雨を防いでいたこと。そして2つ目は、山から吹き下す強烈な「カタバ風」によるもの。

最大風速時速320キロにも達する猛烈なカタバ風が、沿岸部から入ってくる湿度を削ぎ取ることで、砂漠のような不毛地帯になったと考えられています。

氷河によって削られ出来上がった特殊な地形、そしてその地形がもたらす極端に乾燥した気候が、広大な無雪地帯を作り出したというわけです。

マクマードドライバレーと「血の滝」

マクマードドライバレーの中でも有名なのが、「血の滝」とも呼ばれる赤色の滝。

テイラー氷河からボニー湖へと流れ込む赤色の水は、まるで人間の「血液」を彷彿とさせる不気味な雰囲気を放っています。

発見当初は赤色の「藻(紅藻)」が原因と考えられていたようですが、のちに赤色の正体は、海水に含まれる高濃度の鉄分が原因と判明。

海水に含まれる鉄分が空気中の酸素によって酸化することで、血にも似た赤色を作り出していたわけです。

その一方で、そもそもなぜテイラー氷河から流れる水には高濃度の鉄分が含まれているのか、その理由については明らかになっていません。

科学の力をもってしても未だ解明できない神秘に満ちた手付かずの自然が、ドライバレーには残されています。

マクマードドライバレーに生物は住んでいるのか?

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極度の乾燥により荒涼としたマクナードドライバレー。そこには、ペンギンやアザラシは愚か、生物の気配はほとんどありません。

特殊な気候ゆえ、生物が暮らすには適さないためです。

もちろん広義の「生物」や「生命体」は存在します。例えば、前述した「血の滝」からは「クラミドモナス(Chlamydomonas)」と呼ばれる単細胞生物が発見されました。

クラミドモナスは、主に淡水の湿地に多く生息することで知られ、南極のボニー湖はたまたま彼らの生存に適した環境だったのです。

とは言っても、例を挙げるとすれば植物プランクトンばかり。ドライバレーに、私たち人間が目視で見つけられるような大型の生物はほとんど生息していません。

ドライバレーは、特殊な地形と気候が作り出した絶景

今回は、南極に存在する広大な無雪地帯「マクマードドライバレー」についてご紹介しました。

「南極 = 雪と氷に覆われた大地」というイメージを持たれてしまいがちですが、実はドライバレーのような特殊なエリアも存在しているのです。

氷河によって削られた特殊な地形、そして極端に乾燥した気候。

この2つの要素が、マクマードドライバレーを作り出していたわけです。南極には、他にも極地特有の神秘的な景色が多数存在します。

南極という手付かずの素晴らしい大自然を、これから先も大切にしていきたいですね。

 

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