意外と知らない「氷河」のお話。その種類や形成プロセスについて

COLUMN | 2020.02.14

 

巨大な氷の塊がゆっくりと流れていく「氷河」。

「氷」の「河」と書くことから、直感的に「極寒地で大きな河が凍ることで、やがて氷河になるのではないか?」というイメージを持つ方もきっと多いはず。

しかしながら実際の氷河は、もう少し複雑なプロセスを踏んで形成されています。

メディアでも氷河の美しさについて取り上げられることは多いものの、基本的なトピックについて紹介される機会は少ないものです。

今回は、そもそも氷河とは一体何を持って氷河とされているのか、その定義を確認しつつ、意外と知られていない氷河の形成プロセスや種類に至るまで詳しく解説いたします。

1 そもそも氷河とは?

そもそも氷河とは?

氷河とは、極地等に降り積もった雪が圧縮され成長し、自身の重さによってゆっくりと流動していく氷塊のことを指します。

その流れていく様子がまるで「河」のようであることから「氷河」という名称が付けられたのだそう。

つまり「河が凍って氷河になる」のではなく、「氷塊が河のように流れているから氷河」というのが正しい解釈というわけです。

河とは言っても、氷塊の流れるスピードは非常に遅く、どこかに印をつけて1年くらい観測していなければ最早動いていることすら分からないほど。

ちなみに南極やグリーンランドを始めとした極域の一部では、陸地のほとんどが氷河で形成されています。

2 氷河を形成するまでのプロセス

氷河を形成するまでのプロセス

氷河の形成にはいくつかのプロセスが存在します。

まず、地面に積もった雪のその上からさらに降り積もった雪によって押し固められます。

通常、降り積もった雪は夏の間に溶けきるものです。しかしながら、一年を通して気温の低い地域では溶けきらずに翌年の厳冬期まで残ってしまいます。

この上から重ねて雪が降り積もることで、分厚い「万年雪」を形成。これを繰り返すことで、やがて岩のように大きな塊へと成長していくわけです。

一方、底部の氷は圧力によって徐々に変形し、標高の低い方に向かって液体のようにゆっくりと流れていきます。これが一般的に「氷河」と呼ばれているものです。

このように、氷河の形成するまでには意外とたくさんのプロセスを経ていることが分かります。

3 大陸氷河と山岳氷河

大陸氷河と山岳氷河

氷河は、形成される地域によって大陸氷河と山岳氷河に分類することができます。

大陸氷河とはその名の通り大陸全体を覆う氷河のことで、「氷床」と呼ばれることもあります。南極大陸やグリーンランドなどが代表例です。

一方で山岳地に形成される氷河は、山岳氷河と呼ばれます。

中でも山岳の斜面にできるものを「懸垂氷河」、山岳の谷間を流れ下る「谷氷河」、山頂付近の凹所にできる「カール氷河(圏谷氷河)」と呼び、区別することもあるようです。

氷河というと大陸氷河を思い浮かべてしまいがちですが、実際は、山岳であっても低地に向かって動いている氷塊であれば、定義上「山岳氷河」に分類することができます。

4 氷河と生態系の関係

氷河と生態系の関係

氷河には、大きく分けて「涵養域(かんよういき)」と「消耗域」と呼ばれる2つの流域が存在します。

涵養域とは、融雪量よりも降雪量の方が多い氷河の上流のこと。反対に降雪量よりも融雪量の方が多い氷河の下流は消耗域と呼ばれ区別されているのです。

涵養域と消耗域ではそれぞれ環境が大きく異なるため、生息する氷河生物も異なります。

例えば緑藻、トビムシ、クマムシなどが多く生息する涵養域に対し、消耗域では緑藻に加え、ヒョウガユスリカ、ヒョウガミジンコ、ラン藻などが中心に。

1つの氷河でありながら、流域によって多様な生物群集を生み出しているわけです。

5 世界的に有名な氷河たち

世界的に有名な氷河たち

5-1 ペリト・モレノ氷河

ペリト・モレノ氷河は、アルゼンチン・サンタクルス州 ロス・グラシアレス国立公園内に位置する世界有数の巨大な氷河です。

総面積約250km、全長はなんと約35kmにも及びます。

現在も成長と崩壊を繰り返す様子は、「生きた氷河」とも称されるほど。

周囲には標高3405mのフィッツ・ロイ山をはじめ、雄大な山脈と氷河の美しいコンストラストは観光客の間でも人気のスポットとして知られています。

5-2 ヴァトナ・ヨークトル氷河

ヨーロッパ最大の氷河として知られるのが、ヴァトナ・ヨークトル氷河。

ヴァトナ・ヨークトルとはアイスランド語で「湖の氷河」を意味します。

アイスランドに位置するヴァクナ・ヨークトル氷河の総面積は、なんと約8,100㎢。アイスランド国土の8%を占める圧倒的なスケールを誇っています。

中でも氷河の下を流れる水によって形成された「アイスケイブ」と呼ばれる青の洞窟は、思わず息をのむほどの美しさなのだとか。

5-3 トッテン氷河

トッテン氷河とは、南極の東側に存在する世界最大級の氷河のこと。正確な位置の説明は難しいですが、南緯66.5度、東経116度付近に位置していると言われています。

氷河というよりも、まるで一つの大陸のようにも見えるトッテン氷河。

しかしながら最近の調査によると、急速な融解が進んでいるとも言われています。

もしトッテン氷河の氷が全て溶ければ、世界的な海面上昇を引き起こす可能性もあるため、研究者たちの間では危惧する声も上がっています。

日本にも氷河はある?

今回は、氷河の定義や形成プロセスなど意外と知られていない基本的な知識を中心にご紹介しました。

降り積もった雪が圧力によって変形しゆっくりと動いていくことで、氷河が形成されてきたわけです。

そこで1つ気になるのが、日本にも氷河は存在するのか?というお話。長い間、日本に氷河は存在しないというのは通説であり常識でした。

しかしながら最近の調査によると、富山県の立山連峰を始め、いくつかの箇所で定義上「氷河」に分類される氷塊の存在が確認されているようです。

山の斜面を年に数メートル移動する程度ではあるものの、「日本には氷河は存在しない」という常識を覆す発見であることに変わりはありません。

まさに「パスポートなしでも見に行ける氷河」、もし機会があれば足を運んでいると面白いかもしれませんね。

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