北極に位置する世界最大の島「グリーンランド」とは?
COLUMN | 2019.11.04
「世界最大の島」としても知られ、その面積はなんと日本の国土の約6倍に相当します。信じられないほど大きな島ですが、島の全貌について知っている方はそう多くないはずです。
国土の大半が一年を通して分厚い雪で覆われているため、なんとなく「寒い国」といった漠然としたイメージしか持たれないのも無理はありません。
そこで本記事では、そもそもグリーンランドとは一体どんな国なのか?といった基本的な知識を中心に、島で起こる自然現象や生態系、さらにはそこで暮らす人々の生活にもスポットを当ててご紹介します。
1 グリーンランドとはどんな島?
グリーンランドとは、北大西洋に位置する世界最大の島。その面積は、なんと2,166万平方キロメートル。日本の国土が378万平方キロメートルなので、なんと日本の約6倍に匹敵する大きさです。
2/3は北極圏に含まれることから、一年を通して島の大部分が分厚い雪と氷に覆われているもの特徴。80%以上が雪と氷なので、人間の居住地は「フィヨルド」と呼ばれる沿岸地域に限定されています。
またグリーンランドはよく「国」と勘違いされがちですが、実際はデンマーク領。ただし、本土とは独立した「自治政府」が国を取り仕切っているためデンマークが内政に干渉することはほとんどありません。
言語は主にデンマーク語と公用語のグリーンランド語の2つ。グリーンランドに住まうほとんどの人が両方の言語を話すことができるようです。
2 氷に覆われているのに、なぜ「グリーンランド」なのか
「グリーンランド」を直訳すると「緑の島」という意味になります。しかしながら、グリーンランドの国土の大半は雪と氷で覆われていることは先ほど説明した通りです。
ではなぜ「グリーンランド」と呼ばれているのでしょうか?
最も有力な説は、アイスランドの首領だったエイリーク・ソルヴァルズソンが、名もなき島への入植希望者を増やすために「グリーンランド」と命名したというものです。
というのもエイリークはアイスランドの名付け親。しかしながら、彼が名付けた「アイスランド」という字面は「極寒の地」を連想させることから入植希望者が増えなかったのだとか。
そこで緑豊かな土地をイメージさせる「グリーンランド」という名称すれば入植希望者が増えるのではないかと考え、この名を付けたと言われています。*
*グリーンランドの名前の由来には諸説あります。
3 大自然に囲まれた秘境、グリーンランドの魅力
3-1 凍てつく氷の下で暮らす、多様な動植物たち
国土の大半が雪と氷で覆われているグリーンランドですが、凍てつく氷の下では多様な動植物たちがしっかりと息をしています。
ホッキョクグマ、ホッキョクキツネ、ホッキョクウサギ、トナカイ、アゴヒゲアザラシ、ザトウクジラなどその種類は実に様々。陸上の哺乳類は少なめですが、海にはたくさんの哺乳類は暮らしています。
一方で、昆虫や爬虫類はほぼ生息していません。真冬には氷点下20-30度にも達する厳しい環境に適応できるのは、やはり限られた一部の哺乳類だけなのです。
ただしこれらの哺乳類も地球温暖化の進行に伴い、徐々に減少しつつあるとも言われています。
3-2 息をのむほど美しいオーロラ
グリーンランドの最大の魅力といえば、オーロラ。オーロラとは皆さんご存知の通り、南極や北極を始めとしたいわゆる「極域」のみで観測される大気の発光現象のこと。
雪と氷の国グリーンランドは、このオーロラが最も美しく見える場所の1つとしても知られています。
幻想的に揺らめく巨大な光のカーテンは、思わず息をのむほどの美しさ。この世にも美しいオーロラを一目見ようと、世界各国から観光客が集まることでも有名です。
オーロラのメカニズムについては以下の記事で詳しく解説しています。
参考記事: オーロラとは?そのメカニズムやおすすめスポットについて徹底解説!
3-3 摩訶不思議な「白夜」と「極夜」
オーロラの他にも、グリーンランドでは摩訶不思議な自然現象が起こります。それは「白夜」と「極夜」です。
白夜とは一日を通して日の沈まない薄明かりの状態が続く現象。反対に極夜とは、一日を通して日が昇らない(もしくは薄明の状態が続く)現象のこと。
グリーンランドの場合、白夜は5-7月、極夜は11-1月にかけて起こります。ちなみに白夜と極夜の詳しいメカニズムなどについては以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
参考記事: 南極や北極で起こる「白夜」と「極夜」とはどんな現象なのか?
4 グリーンランドに住まう人々の暮らし
島の2/3が北極圏に含まれる極寒のグリーンランドは、島の中心部に行くほど雪と氷が分厚くなっていきます。そのため人々が暮らしているのは、「フィヨルド」周辺のみ。
フィヨルドとは氷河の浸食によって形作られた湾のことで、デンマークで「入江」を意味しています。しかし、フィヨルドは非常に複雑な形状をしているため陸路の整備が非常に困難であるという問題も。
それゆえに近場ならともかく、各地に点在する街の間を行き来する際には、船、飛行機、スノーモービルを使うこともあるようです。
また寒さの厳しいイメージの強いグリーンランドですが、フィヨルド周辺は緑が多いのも特徴。とりわけグリーンランドの首都に当たる「ヌーク」は、一般的なツンドラ気候の土地と比べても温暖な気候で、人口の25%がここヌークで暮らしています。
漁業、農業も盛んで、一次産業で生計を立てる家庭がほとんど。ただし最近はグリーンランドへの観光客も増えていることから、観光業を生業とする人も増えてきています。
5 グリーンランドの抱える環境問題
昨今のグリーンランドについて話す上で避けて通れないのが、環境問題。
地球温暖化に伴い、グリーンランドの氷が凄まじい勢いで消失していることをご存知でしょうか?
グリーンランドの氷の量は南極よりも遥かに少ないにも関わらず、溶解するスピードはなんと南極の2倍以上。2019年の夏に訪れた熱波では、一日で120億トン以上の氷が溶けて無くなったことで話題となりました。
当然ながら、溶けたグリーンランドの氷の行方は海。海水が増えれば海面上昇を引き起こし、海抜の低い土地が海に沈んでしまうこともありうるでしょう。
もしグリーンランドの氷が完全に溶解した場合、その影響は計り知れません。
手つかずの大自然が残る島、グリーンランドを未来へ
北極圏に位置するグリーンランドは、オーロラや白夜・極夜といった「極地」ならではの自然現象が当たり前のように起こります。
分厚い氷の下には手つかずの自然も残されており、今現在、地球に残る限られた「秘境」の1つと言えるでしょう。
しかしながら環境問題をはじめグリーンランドは今、様々な危機に直面していることも確かです。地球温暖化による氷の溶解、そしてグリーンランドの周辺に眠る莫大な資源を巡る紛争の火種。
グリーンランドの素晴らしい景色を未来へと届けるために、私たち人間の手でしっかりと守り抜いていく必要があります。