実は寒冷地でも起こる!「蜃気楼」の種類とメカニズム

COLUMN | 2020.03.17

 

水平線の遥か遠くにまるで幻のように浮かび上がる「蜃気楼」。アドベンチャー映画のワンシーンを思い浮かべる方もきっと多いはず。

蜃気楼は、光の異常屈折によって起こる非常に珍しい現象の1つとして知られています。

一般的に、砂漠のような極暑地帯で起こるものだとばかり考えられてしまいがちですが、実は南極や北極を始めとした極寒地でも発生することをご存知でしたか?

今回は、知ってそうで意外と知らない「蜃気楼」という現象についてそのメカニズムや蜃気楼の種類に至るまで詳しくご紹介いたします。

1 そもそも「蜃気楼」とは?

そもそも「蜃気楼」とは?

蜃気楼とは、光の異常屈折が要因となって生じる現象のこと。

本来直進するはずの光が大気中で屈折することによって、地上もしくは海上の風景が逆さまになったり、浮かんで見えたりします。

映画のイメージが強い方の場合、砂漠地帯で主人公が実在しないオアシスの蜃気楼を目撃するシーンを思い浮かべてしまいそうですが、これはもちろんフィクションのお話。

実際は”既に存在する景色や物体”が、光の屈折によって浮かんだり、逆さまに見えたりしているだけなのです。決して映画のワンシーンに登場するような「存在しない風景(物体)」が浮かび上がるわけではありません。

蜃気楼を発生においてポイントとなるのが、空気の温度差。暖かい空気の暖気層と冷たい空気の冷気層の界で光が屈折することによって、蜃気楼が発生すると考えられています。

他にも晴天であること 、風が穏やかであることといった諸条件を満たさなければ、蜃気楼を観測することはできません。

2 蜃気楼は寒い場所でも起こる

蜃気楼は寒い場所でも起こる

フィクションのイメージから「蜃気楼 = 極暑地で起こるもの」と勘違いされがちですが、実際は寒冷地であっても蜃気楼は発生します。

前述した通り、蜃気楼とは暖気層と冷気層の温度差によって本来直進するはずの光が異常屈折を起こすことで生じる現象です。

なので上層の空気と下層の空気の温度差と天候といった諸条件さえ満たせば、たとえ極寒地であっても蜃気楼を観測することができると言われています。

現に日本の南極観測地点として知られる昭和基地からも、蜃気楼を観測したとの報告が上げられたこともありました。ちなみに昭和基地では、3~11月のうち比較的風の穏やかな日に蜃気楼を観測するケースが多いのだとか。

極暑地、極寒地問わず「空気層ごとの温度差」が発生条件として非常に重要であるということを覚えておきたいですね。

3 2種類の蜃気楼とそのメカニズム

2種類の蜃気楼とそのメカニズム

一口に蜃気楼といっても、実は上位蜃気楼下位蜃気楼の2種類が存在します。それぞれの発生メカニズムについて詳しく見ていきましょう。

3-1 上位蜃気楼

上位蜃気楼の説明画像

「上位蜃気楼」とは、遠くに位置する物体や景色が、上方に向かって変化するタイプの蜃気楼のこと。

画像のように暖気層が上、冷気層が下にある時(上暖下冷)、光が上方に屈折することで上位蜃気楼が発生します。遠くにある船や工場地帯が、上の方に向かって伸びているように見えたり、反転して見えるのも上位蜃気楼の典型例です。

後述する下位蜃気楼と比べると、発生頻度が非常に低いことでも知られています。

3-2 下位蜃気楼

下位蜃気楼の説明画像

一方で、遠くに位置する物体や景色が下方に向かって変化するタイプの蜃気楼は「下位蜃気楼」と呼ばれています。

先ほどご紹介した「上位蜃気楼」とは反対に、冷気層が上、暖気層が下(上冷下暖)の時、光が冷気側に屈折することで生じると考えられています。

特徴は、遠方の物体や景色が下方に向かって反転しているように見えること。一見すると珍しい現象にも見えますが、上位蜃気楼よりも発生頻度が多いと言われています。

4 実は身近な下位蜃気楼の1つ「逃げ水」

実は身近な下位蜃気楼の1つ「逃げ水」

蜃気楼は確かに珍しい現象ではありますが、下位蜃気楼に限っては話は別。中でも下位蜃気楼の1つとして知られる「逃げ水」は、諸条件さえ揃えば街中でも観測することができます。

「逃げ水」とは、アスファルトで舗装された道路の遠くにまるで水が溜まっているかのように見える現象のこと。「地鏡」と呼ばれることもあります。

ひょっとすると逃げ水という名称こそ知らなくても、真夏の晴れた日に同様の現象を目の当たりにした経験のある方も多いのではないでしょうか?

逃げ水の発生条件は、よく晴れた暑さの厳しい日で尚且つ見通しの良い道があること。

地表付近の空気が熱せら光の屈折率が変化したことで、上方の景色がまるで水面に映っているかのように映る「逃げ水」が発生すると考えられています。

もし機会があれば、条件が揃った日に見通しの良い道路の遠くの方を眺めてみると、逃げ水を観測できるかもしれません。

上位蜃気楼は観測できたらラッキー

今回は、幻想的な蜃気楼のメカニズムを中心に詳しくご紹介しました。

フィクションの影響から「蜃気楼 = 極暑地で発生するもの」と考えられてしまいがちですが、実際は空気層ごとの温度差を始めとした諸条件さえ満たせば、砂漠地帯であろうと極寒地であろうと観測できます。

ただし2種類の蜃気楼のうち「上位蜃気楼」を観測するケースは非常にレア。

逃げ水を始め、街中でも見かける下位蜃気楼とは違い、上位蜃気楼は諸条件を満たしても発生するとは限りません。もし観測できたら、本記事でご紹介したメカニズムと一緒にぜひご家族やご友人に教えてあげてくださいね。

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