国立極地研究所とは?その概要・歴史・事業内容について解説

COLUMN | 2020.04.17

 

突然ですが、皆さんは「国立極地研究所」と呼ばれる研究機関をご存知でしょうか?

国立極地研究所とは、その名称からも分かる通り南極や北極をはじめとした「極域」に関連する科学的な研究や観測を行う研究機関のこと。

極域に関連する現在の科学的な進展は、国立極地研究所の功績といっても過言ではありません。

今回は、日本における極地研究をリードしてきた国立極地研究所について、その概要・歴史・具体的な事業内容に至るまで詳しくご紹介していきます。

1 そもそも「国立極地研究所」とはどんな機関?

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国立極地研究所(National Institute of Polar Research)とは、東京都・立川に位置する「極域」の総合研究機関です。

正式には、「大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所」と表記しますが、英語表記の頭文字をとってNIPRと呼ばれることもあります。

1973年9月に設立されて以来、極域に関する様々なデータが集まるいわば極域研究の総本山。

「極地に関する科学の総合研究及び極地観測を行うこと」を目的に、年間を通して南極や北極に関連する様々なプロジェクトの企画・調査・実験が行われています。

2 国立極地研究所創設の歴史

国立極地研究所の前身となったのは、独立行政法人国立科学博物館に置かれた極地学課。

1961年、日本の国立アカデミーとして知られる日本学術会議(SCJ)が極地研究所の設置を政府に勧告したことが始まりでした。

その後は「極地研究部」や「極地研究センター」等に改組されながら時は流れ、1961年の勧告から12年後の1973年にようやく国立極地研究所が創設されます。

ただし、当時国立極地研究所が位置していたのは板橋区の「旧陸軍東京第二造兵廠跡」。創設から30年以上もたった2009年9月に、東京都立川市に移転し現在に至ります。

3 国立極地研究所のメインとなる4つの事業

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3-1 極域科学の研究活動

国立極地研究所における中核となるのが、極域科学に関する研究活動です。南極や北極における観測をベースに、極域科学の共同研究を推進しています。

とは言ってもただ闇雲に研究を行っているわけではありません。

国立科学研究所では、宙空圏研究、気水圏研究、地圏研究、生物圏研究、極地工学研究、計5つの基盤研究グループに分かれて各分野に関する専門的な研究が行われています。

3-2 資料やデータの提供・共同利用

研究を行うだけが、国立極地研究所の役割ではありません。

1973年に設立されて以来、長きに渡って蓄積してきた極域科学に関するデータや資料の提供もまた、非常に重要なミッションの1つです。

例えば、大学や研究機関の研究者等に、南極・北極における観測基盤や試資料を提供するほか、アイスコアの共同研究プロジェクトなど常に共同利用・共同研究を念頭に活動しています。

3-3 南極地域の観測事業

国立極地研究所における毎年の目玉とはいえば、やはり南極地域の観測事業です。

皆さんも、毎年11月ごろになると南極観測船(砕氷船)の「しらせ」が東オングル島に位置する昭和基地にむけて出発したというニュースを耳にしたことはありませんか?

実は、国立極地研究所はこの南極観測プロジェクトの実施中枢機関として計画立案、観測隊の準備、基地の運営に至るまでプロジェクト全般をコントロールしています。

観測船は観測隊員の生活する昭和基地への物資供給も行っているため、プロジェクトを動かす国立極地研究所の役割と責任は非常に大きなものです。

3-4 総合研究大学院大学を通じた大学院教育

国立極地研究所では、総合研究大学院大学からの大学院生を受け入れています。

神奈川県三浦郡葉山町に位置する総合研究大学院大学(通称 : 総研大)は、1988年に設立された博士課程専門の国立大学院大学です。

中でも、複合科学研究科極域科学専攻における博士課程の教育研究指導が極地研の主な役割。また、他大学の要請次第では、大学院における教育に協力することもあります。

こうした次世代の研究者の育成もまた、国立極地研究所の担う重要の役割の1つと言えるでしょう。

4 付属する「南極・北極科学館」は一般人も見学可能

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国立極地研究所に付属する一展示スペースとして、2010年より新たに設立されたのが「南極・北極科学館」。

ここ南極・北極科学館では、南極や北極という環境をもっと身近に感じてもらうべく、南極点往復に使用した雪上車や南極隕石をはじめとした貴重な品の数々が展示されています。

ちなみに入場料も無料。原則として、火曜日~土曜日の10:00~17:00まで開館しています。

また展示スペースに設置されている撮影ポイントに限り、事前の面倒な許可申請手続き等もなく自由に撮影を行うことも可能なのだそう。

研究所の所在地も東京都立川市という比較的好立地なので、お時間のある方は是非一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

国立極地研究所は極域科学のパイオニア

今回は1973年に設立されて以来、極域にまつわる科学的な発展をリードしてきた「国立極地研究所(NIPR)」について詳しくご紹介しました。

国立極地研究所は、まさに極域科学のパイオニア。

その事業範囲は、極域科学研究からデータの共同利用、南極観測事業の計画・実施や大学院教育に至るまで多岐に渡ります。

これから先も、南極観測プロジェクトの実施や氷床コアの研究等を通じて、私たちの知らなかった新たな発見があるかもしれません。

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