南極で観測される「オゾンホール」そのメカニズムと地球への影響とは?

COLUMN | 2020.03.13

環境問題や地球温暖化の文脈で取り上げられる「オゾン層」。

皆さんの中にも「地球の温暖化が加速するにつれて、大気圏のオゾン層が破壊されていく可能性がある」というトピックについて扱ったTV番組をご覧になったことのある方もきっと多いはず。

そんなオゾン層に起こる現象の1つとして、併せて知っていただきたいのが「オゾンホール」の存在。オゾンホールとはオゾン層が薄くなって、ちょうど穴が空いたように見える現象のこと。

1982年に日本の南極観測隊が世界で初めてオゾンホールの存在を発見したことでも知られています。

今回は、大気圏におけるオゾン層の役割について確認しつつ、オゾンホールが発生することで一体私たちにどのような影響を及ぼすのか、そのリスクに至るまで詳しくご紹介します。

1 そもそも大気圏はどのような構造なのか?

そもそも大気圏はどのような構造なのか?

オゾンホールについて解説する前に、そもそも大気圏とどのような構造になっているのでしょうか?実は大気圏は、地上に近い方から「対流圏」「成層圏」「中間圏」「熱圏」「外気圏」という5つの層に分かれています。

【大気圏における5つの層】

  • 対流圏 : 高度0~12kmの大気層。ジェット機なども対流圏(高度10km前後)を飛行する。
  • 成層圏 : 高度12~50kmの大気層。オゾン層があるのも成層圏。
  • 中間圏 : 高度50~80kmの大気層。中でも高度80-90km付近は摂氏-90度に達する。
  • 熱圏(電離層) : 高度80~800kmの大気層。中間圏から一変、大気の温度は摂氏2000度にも達する。
  • 外気圏 : 高度800~1万kmの大気層。温度は熱圏とほとんど変わらない。

オゾンホールの発生する「オゾン層」が存在するのは、2番目の高度12~50kmに位置する「成層圏」のあたり。大気圏の中では地上からも比較的近いことお分りいただけるはずです。

余談にはなりますが、いわゆる「宇宙」と呼ばれるようになるのは高度100km地点から。つまり大気圏の中でも、高度80~800kmに位置する熱圏(電離層)の途中からが定義上、宇宙と呼ばれるようになるわけです。

2 南極で発生するオゾンホールとそのメカニズム

南極で発生するオゾンホールとそのメカニズム

前述した「成層圏」に位置するオゾン層。中でも南極上空のオゾン層には、春から初夏にかけて成層圏中のオゾン濃度が減少し、ちょうど穴が空いたように見えることがあります。

この穴の部分が「オゾンホール」と呼ばれるものです。1982年、日本の昭和基地にて研究調査を行う観測隊によってその存在が明らかになりました。

ではなぜ春から夏にかけてオゾン濃度が減少してしまうのでしょうか?その理由は、地上から発せられたフロンと南極特有の気象条件にあると言われています。

まず都市部から発せられたフロンが紫外線に当たると「塩素」が発生します。この塩素こそ、オゾン層を破壊する元凶の1つ。ただし本来であれば、大気中の水素等と化学変化を起こすことでオゾン層へ影響与えない塩素化合物へと変化します。

しかしながら南極上空の場合、話は別。南極の上空は大気中に氷の結晶が漂っているため、この結晶の表面で塩素化合物たちが化学変化を起こし、塩素ガスを発生させます。

この塩素ガスが、春から夏にかけて紫外線に当たることで再び「塩素」へと変化しオゾン層を破壊してしまうわけです。

このように細分化してみると、オゾンホールができるまでには意外と複雑なメカニズムを辿っていることがわかりますね。

3 オゾンホールが地球に及ぼす影響は?

オゾンホールが地球に及ぼす影響は?

オゾン層は、太陽から降り注ぐ有害な紫外線を吸収する役割を担っています。

そもそも私たち人間が生まれる遥か昔、40億年前の地球において生物たちが陸に上がることができなかったのは、太陽から降り注ぐ強烈な紫外線が原因。

中でも降り注ぐ0.25~0.27μmの紫外線は、生命の根幹である「核酸(DNAとRDA)」を破壊してしまうほどの強烈なものだったのだそう。

幸い水深10m以上まで紫外線が届かなかったことから、海には大量の藍藻類が発生。この藍藻類たちが長きにわたって酸素を放出し続けた結果、ようやく紫外線を吸収する「オゾン層」が出来上がったのです。

そんなオゾン層にオゾンホールができるということは、当然ながら穴のように見える部分には本来紫外線を吸収する「盾」が薄い状態であることを意味します。

結果として地上に降り注ぐ紫外線が増え、地上の動植物たちに大きな影響を与える可能性もあるのです。

4 オゾンホールとモントリオール議定書

オゾンホールとモントリオール議定書

1982年に日本の観測隊がオゾンホールを発見してから5年後の1987年には、ウィーン条約に基づく「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」通称モントリオール議定書が採択されました。

モントリオール議定書では議定書の批准国に対し、フロンやハロンといったオゾン層を破壊する物質の製造・消費の全廃が求められています。

1988年には日本国内でもこのモントリオール議定書の内容を具現化すべく、フロン類の生産を規制する「オゾン層保護法」が制定されました。

また2019年にはルワンダ共和国の首都キガリにて新たに「キガリ改正」を発効。この改正では、従来の特定フロンに代替する「ハイドロフルオロカーボン」と呼ばれるフロンの削減が求められています。

未だ解明されていない点の多いオゾンホール

今回は、オゾン層の役割やオゾンホールの発生するメカニズムを中心にご紹介しました。

有害な紫外線から私たちを守るオゾン層に大きなオゾンホールができれば、地球に住まう人間や動植物たちに甚大な影響を及ぼしかねません。

とは言っても、オゾンホールには解明されていない点が多く残されていることも事実。ちなみに2019年には、南極のオゾンホールが史上過去最小を観測したことで話題を集めました。

素直に考えれば、モントリオール議定書以来、各国が懸命に二酸化炭素の削減に取り組んだ成果と捉えることもできます。

しかしながら、過去にも成層圏の急激な温度上昇によりオゾン層を破壊する「極成層圏雲」が減少し、その結果としてオゾンホールが縮小した例があるのだとか。

いずれにせよメカニズムを含め未だ解明されていない点も多いため、私たち人間は引き続き地球温暖化を進行させる二酸化炭素の削減に努める他ありません。

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