南極大陸の下に眠る巨大な氷底湖「ボストーク湖」とは?
COLUMN | 2020.01.03
凍てつく空気に支配された広大な南極大陸。
実は、そんな南極にも「湖」の存在が確認されています。ボストーク湖とも呼ばれ、南極最大の湖として有名です。
しかしながら、ボストーク湖を目視で観測することはできません。
それもそのはず。湖が存在するのは地上から隔絶された、南極大陸の氷底4km地点。ただ南極へと訪れただけでは、その存在を確かめることは叶わないのです。
今回は、そんな謎に満ちた南極の氷底湖「ボストーク湖」の正体に迫ります。
そもそも「ボストーク湖」とは?
ボストーク湖とは、南極点から1700km以上離れたロシアのボストーク基地近く、氷底下4kmに位置する巨大な湖のこと。
湖の幅は約50km。総面積は、日本の琵琶湖のおよそ22倍に匹敵する1万4,000 平方キロメートル。
非常に巨大な氷底湖でありながら、その存在が明らかになったのは1960年頃。
発見されたのは人類の歴史では比較的最近の話です。一方で、ボストーク湖自体は我々人類が誕生するよりも遥か昔、なんと1500万年以上前から存在していたとの説も。
長らくの間地上と隔絶されたきたボストーク湖には未だ謎も多く、現在も研究調査が進められています。
ボストーク湖探査の歴史と変遷
1500万年以上のもの間、地上と隔絶されたきたボストーク湖が発見されたのは、1960年代。
アイスレーダー(氷透過レーダー)と呼ばれる高度な機器を搭載した航空機を用いた調査によって、その存在が初めて確認されました。
存在自体が確認されたとはいえ、湖があるのが氷底4km。当時の技術ではボストーク湖のある地点まで掘削することはできませんでした。
進展があったのは1998年、アメリカ、ロシア、フランスの3ヵ国が共同で調査をスタート。当時の技術における最深部である3,628m下まで掘削し、貴重な氷のサンプル採取に成功します。
その後も定期的に調査が行われ、2005年には湖の中央部に島の存在を確認。
2013年には、ロシア北極南極科学調査研究所により、世界最深部3800mまで到達。ついに掘削用のドリルが、ボストーク湖に達したことで話題を集めました。
ボストーク湖からは新種のバクテリアの存在も?
氷底下4kmで気になるのは、我々の知らない「未知の生物」の存在。
2013年にロシアのチームが世界最深部3800mまで到達した際に採取したコアを分析した結果、3500種以上の生命体の遺伝子片が発見され、世界中の研究機関の注目を集めました。
バクテリアを始めとした多様な生命体が氷底下4kmに存在しているとすれば、これまでの常識が大きく覆されるほどの一大ニュースです。
しかしながら、バクテリアの存在を「科学的根拠が不明確」だとして否定する学者が多いのも事実。
実際、ロシアの研究チームが採取したサンプルには、掘削ドリルに用いる灯油が付着し汚染されてしまっていたとの話題も浮上。
現在も、ボストーク湖固有種の存在を主張する学者とそれを否定する学者との間で、意見が真っ二つに分かれています。
ボストーク湖の水は-4度でも凍らない
調査によると、ボストーク湖の水温は平均して-4度。
本来であれば、水は0度以下に達すると氷結するのが普通です。一方で、ボストーク湖の水は-4度であるにも関わらず液体という状態を維持しています。
これは食塩水を冷凍庫で冷やし固めた際、0度を下回っても凍らない「凝固点降下」という現象にもよく似ています。
ボストーク湖の場合は、覆われた氷の圧力によって水の凝固点が大きく下がり、液体を維持しているという説が有力です。
ただし一説には、地熱の影響や湖を覆う氷床が断熱材の役割を果たしているという考え方も存在するようです。
今後もボストーク湖の調査は続く
ボストーク湖の発見から60年以上が経過したとはいえ、掘削用ドリルが湖まで到達したのはつい最近の話。地球の歴史から考えれば、雀の涙にも満たないほどの僅かな時間しか経っていません。
地上とは異なる新種のバクテリアの存在などが囁かれている一方で、まだまだ分かっていない点もがいというのも事実。
長らくの間、地上と隔絶されてきたボストーク湖を解き明かすにはもう少し時間がかかるかもしれません。
今後も、極地における各国の研究機関の調査が続いていきます。