高山病対策を知って安全な登山を

COLUMN | 2023.04.04

登山を計画するうえでは、装備や服装などと同様、高山病について把握しておくことも大切です。今回は、高山病を防ぐための主な対策を紹介します。

高山病の症状や原因、重症化対策などもあわせて紹介しているので、安全かつ快適に登山を楽しむための参考にしてください。

1 高山病とは

高山病は、標高2,500mほどの位置で発症する症状です。ここでは、高山病の具体的な症状や原因について解説します。

1-1 原因

高山病の原因は標高が高くなって大気圧が低下し、酸素が薄くなることです。平地と比べて酸素が薄い山では、体内に取り込める酸素が不足するため、高山病を発症しやすいといわれています。また、脱水が原因で発症するのも高山病の特徴です。

高山病は、かかりやすい人とそうでない人の個人差が出やすい病気です。遺伝など、生まれつきの体質に左右されやすいといえます。登山時の体調によって発症する・しないが左右される側面もあるため、高山病対策をとっても効果が出ないことも。

ちなみに、子供や高齢者などは高山病にかかりやすいといわれているため、登山に同行する際は予備の酸素や水分などを多めに持参しましょう。

1-2 症状

高山病の主な症状は、以下のとおりです。

  • 頭痛
  • 立ちくらみ
  • めまい
  • 疲労感
  • 脱力感
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 嘔吐

上記が高山病の「初期症状」といえるもので、重症化すると昏睡や錯乱などを発症します。息苦しさや不眠など、登山を終えても体に影響が出る病気なのも特徴です。また重症化により肺高血圧症を併発し、脳浮腫・肺水腫などの危険な病を発症することもあります。

高山病は、標高の高い山に登った際に発症する高山病は「急性高山病」と、高知で長期間生活した後に発症する「慢性高山病」があります。慢性高山病は、急性高山病と同様の症状に加え、チアノーゼの症状が出るのが特徴です。

1-3 症状の改善方法

もっとも効果的かつ簡単な高山病の改善法として挙げられるのは、高度を下げること。

高山病を発症したら、まずは登山を中止しましょう。登り続けて高度が上がることで、より酸素不足が懸念されるためです。

急いで降りられないような場所まで登ってしまった場合は、水分補給や酸素吸入、内服薬で改善しましょう。並行して、救助を依頼したりゆっくりでも降り始めることでより早く症状の改善が見込めます。

なお、同行者が発症した場合は、その場に残していかないようにしましょう。高山病の症状は急速に悪化することもあるため、一人で残してしまうと危険です。

2 高山病の対策

ここでは、登山時に実施できる高山病対策を紹介します。

2-1 気圧の低い環境に慣れる

急激に高度を上げると体にかかる負担が大きくなるため、ゆっくり登ることを心がけてください。途中で休憩をとりながら、気圧の低い環境にゆっくり慣れていきましょう。

標高2,000mを超える山を登る際は、登山前に1時間程度滞在し、標高に慣れたうえで歩き始めるのがおすすめです。また、登山中に山小屋を見つけても、気圧に体が慣れるまでは寝たり休んだりしないようにしてください。

30分〜1時間ほど山小屋近辺を探索するなどして、体を環境に適応させるべきです。

2-2 酸欠を防ぐ

高山病は酸素不足が原因で発症するため、以下の方法を実施して酸欠を防止してください。

  • 鼻から吸って口から強く吐く「口すぼめ呼吸」で呼吸する
  • ゆっくり歩行しながら30分以上休まず歩く(呼吸を深く・早くしながら)
  • 仰向けの姿勢で酸素を取り込む(背中を壁にもたれさせる姿勢もおすすめ)
  • 鼻腔拡張テープを貼る

また、気温が下がる夕方以降は、毛細血管が収縮して血流が悪くなり、酸素が体に行き渡りにくくなります。汗で濡れた衣服を着替えたり、防寒着を羽織ったりして対策をとりましょう。

2-3 脱水を防ぐ

登山中は脱水を防止するため、以下の式で必要な水分量を計算したうえで適度に水分補給をしてください。

必要水分量(ml)=体重+荷重(kg)×行動時間(H)×5(ml)

特に夏山の場合、大量に汗をかくことで体の水分はすぐになくなってしまいます。喉の渇きを感じる前に水分を補給し、脱水を防ぎましょう。

また、急激に汗をかきやすい状況では、水分を体に素早く吸収させる必要があります。市販のスポーツドリンクは糖分濃度が5〜6%と高く、吸収されにくいため、水などで薄めて飲んでください。もしくは、糖分濃度が2〜3%ほどの飲料を持ち運びましょう。

脱水の自覚症状がない場合は、排尿の回数や量、むくみの有無で判断してください。特に子供や高齢者は脱水の症状が出やすい反面、自覚症状が出にくいので注意が必要です。

普段から水分を多く摂らない人は、登山前の日常生活を変え、できるだけ水分を多く摂るよう心がけてください。

2-4 体調管理に気を配る

風邪や睡眠不足の状態で登山に挑むと、高山病になりやすいといわれています。また、風邪や睡眠不足だけでなく、慢性鼻炎の人も高山病を発症しやすいでしょう。(耳抜きがうまくできなくなるため)

登山前の体調に配慮し、登山コースやスケジュールを調整することが大切です。

ちなみに、高山病の症状が出る前に内服薬を飲むことは、むしろ危険といわれています。登山時に限っては、内服薬で体調を整えるのは「症状が出てから」にしましょう。

3 高山病対策には行動食もおすすめ

高山病対策には、行動食を持参するのもおすすめです。行動食とは、登山途中に食べるもののことです。朝・昼・夜の食事で補いきれないカロリーを、行動中に摂取する目的で持ち運びます。

必要な栄養素を補いながら山を登ることで、高山病を防げることがあります。

3-1 行動食の選び方

行動食を選ぶ際は、携行性や保存性に目を向けることが大切です。登山中に歩き続けながら食べられるよう、小さくて持ち運びやすい食べ物を選んでください。また、気温の変化を受けにくい、保存性に優れた食べ物を選ぶことも大切です。

他にも、登山時に消費する膨大なカロリーを効率的に補えるよう、高カロリーかつ高栄養価の食べ物を選ぶ必要があります。脂質や糖質の含まれたものや、糖質をうまく代謝させるビタミン・ミネラルの含まれた食べものがおすすめです。

3-2 おすすめの行動食

登山時の行動食におすすめの食べ物は、以下のとおりです。

  • ラムネ菓子
  • 羊羹
  • サラミ
  • カルパス
  • カロリーメイト

コンビニで簡単に購入でき、かつ持ち運びもしやすいので手軽に用意できるのがメリットです。登山時に消費しやすいエネルギーを、効果的に摂取できるのもおすすめポイントです。

行動食だけで摂取できないエネルギーは、スポーツドリンクなどで補いましょう。

高山病は対策を知ることが大切

高山病は、今回紹介した対策だけでなく、以下の予防策を取ることで回避できる可能性があります。

  • 前日のアルコール・睡眠薬・安定剤などは控えておく
  • 荷物を多くしすぎない
  • ゆとりのある日程を組む
  • 内服薬を準備しておく
  • 登山コースを確認して休憩場所・時間を設定しておく

高山病を発症すると、頭痛や立ちくらみ、めまいや疲労感などの症状に襲われます。重症化すると脳浮腫・肺水腫などの危険な病を発症してしまうため、改善方法や対策を知っておくことが大切です。

気圧・酸素・水分・体調管理といった高山病に関連する要素の対策をとり、安全かつ快適な登山を決行してください。

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