北極域の豊富な地下資源を形成した地質構造の歴史
COLUMN | 2019.11.11
南大洋が取り囲む南極域とは異なり、北極海とそれを取り巻く大陸からなる北極域。
北極圏は地下資源の豊富さで知られていますが、この豊富な地下資源はプレートや大陸の変化により数億年前から積み重ねられてきたもの。
北極域は数億年前から大きなプレートの移動があり、実に多くの堆積盆が形成されてきた特殊な場所でもあるんです。
今回はそんな北極域の地質構造や歴史についてお伝えしていきます。
1 地質に影響を与えるプレートテクトニクス
実は地球は様々な階層に分かれて形成されています。
表層の地殻(約40km深まで)、マントル(約2,900km深まで)、核(外核、内核)、
さらに地球の表層は海洋地殻(約5〜10km深)と大陸地殻(約40km深)に分けられているんです。
地表から約100km、地殻とマントルの最上部のことをリンスフェア(岩石圏)と呼びます。
「プレート」と呼ばれるのは、数十枚に区分された大小のリンスフェアのこと。
このプレートの動きにより大陸が動いたり山脈が形成されるなどなど、地球上に影響を及ぼしていくんですね。
2 パンゲア大陸の分裂により形成されていく北極域
古生代の初頭、約5億年前は現在の大陸分布とは異なる形だったと考えられています。
- カナダ楯状地とグリーンランドを含む北米大陸
- バルト楯状地を含むバルチカ大陸
- シベリア楯状地を含むシベリア大陸
当時は主なこれらの大陸に加え、小規模な大陸が分散していたんだとか。それらの大陸が次第に集合して後のユーラシア大陸を形成。
さらに約3億年前、この大陸がゴンドワナ大陸とも合体し、超大陸パンゲアが完成していきます。中生代ジュラ紀、すなわち約2〜1,5億年以降にプレートの変動などが発生したこともあり、パンゲアが分裂してしまいます。
この分裂を大きなきっかけとして、次第に現在の北極域の形へと近づいていきます。
実は現在北米プレートの一部となっている北東シベリアとアラスカ、東シベリア海やチュクチ海の大陸棚は、かつてのパンゲア大陸の縁辺部。
この地域、すなわち北極域は太古よりプレートの移動などが活発だったこともあり、堆積物が厚く、地下資源が豊富な海域となっていきます。
3 北極域の豊富な地下資源
プレート変動により地層へ土砂が堆積し続けた結果、北極域は地下資源の宝庫とも言われるようになりました。
なんと北極圏には世界で未発見の石油の13%、天然ガスの30%が存在するという報告もあるほどなんです。
先カンブリア時代や古生代以降の造山帯には、様々な金属鉱物資源がありました。加えて先カンブリア基盤の上の盆地状の堆積層や大陸の縁辺部、造山帯には土砂が堆積することで厚い堆積盆が形成。
こうした堆積盆が発達したシベリアや極北カナダ、アラスカ北部に見られる中生代以降の地層には豊富な石油や天然ガスが存在します。
北極海の中でも、広い大陸棚が張り出しているバレンツ海、カラ海やアラスカきのノース・スロープなどには、石油や天然ガスを生み出す堆積盆が特に発達しているんだとか。
北極圏の豊富な地下資源や航路を巡る世界の動きにも注目
地球上の大陸と海洋の配置は、地球表層を覆うプレートが何億年にもわたり移動してきた結果と言えます。その結果、豊富な地下資源が眠る場所として北極圏が形成されました。
何世紀もの間に渡って人類が様々な挑戦を行なってきた北極圏ですが、現代では地下資源に対しての関心が強まっている傾向にあります。
航路や地下資源をめぐり各国がアプローチを行う現代。北極圏を巡る人類の動向にも注目したいところです。