「オーロラ」のメカニズムや有名スポット、日本での観測例など

COLUMN | 2019.10.17

極地をイメージする時、まず「オーロラ」を思い浮かべるという人が多いのではないでしょうか。

オーロラは美しく神秘的な見た目からか“一生で一度は見てみたい景色”の筆頭として上げられている自然現象のひとつ。

発生する場所が限られている上に天候にも大きく左右されるためか、オーロラ鑑賞はとても難易度が高いものとされています。

そこで今回はそんなオーロラがどのように発生するのか、そのメカニズムを見ていくとともに実際に見ることのできるおすすめの場所など詳しくご紹介していきます。

1 そもそもオーロラとは

そもそもオーロラとは

“真っ暗な夜空に浮かぶ色鮮やかな光のカーテン”。オーロラに対してこのようなイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。

そもそもオーロラとは北極圏などの”極地”と言われる地域で見ることができる、地上からおよそ100kmから500km上空に発生する発光現象のこと。

特に極地の中でもはっきりとオーロラを見ることができるのは北半球の60度から70度の範囲と言われています。フィンランド、カナダ、ノルウェー、アイスランドなど地球の極地の限られた地域で頻繁に発生します。

このオーロラの出現頻度が高い範囲は別名「オーロラベルト」と呼ばれており、カナダのイエローナイフやアラスカなども有名ですね。

オーロラベルトは北半球・南半球にそれぞれにありますが、南半球のオーロラベルトはそのほとんどが海の上なのでオーロラを鑑賞する場所としてはあまり適していません。

南半球の低緯度に位置するオーストラリアやニュージーランドでも稀にオーロラは発生するようですが、頻度はそれほど高くなく、またオーロラベルトほどはっきりとした姿を見ることは難しいんだとか。

オーロラを鑑賞しやすい地域として紹介されているほとんどが北半球に集中しているのは、このような理由からなんですね。

2 オーロラ発生のメカニズムとは

オーロラ発生のメカニズムとは

オーロラが発生するメカニズムには「太陽の活動」が大きく関係していると言われています。

まずオーロラができる最初の工程は太陽活動のひとつである“太陽風”から始まります。

太陽風とは太陽の表面で起きる爆発がきっかけとなって吹くプラズマ状の電子の粒とイオンでできたガスのこと。

この太陽風が地球に向かって吹いている時、地球に悪影響を与えないよう“磁気圏”と呼ばれる磁場の壁がバリアとなって有害なエネルギーから地球を守る働きをしてくれているんだとか。

ただし、この磁気圏も太陽風の影響全てを防ぐことができるというわけではありません。

磁気圏にぶつかった太陽風は、時に太陽に向かって地球の反対側(夜側)の隙間から侵入してしまうことがあるんだとか。

その後、太陽風に含まれるプラズマ粒子は極地へ運ばれていき、大気圏の中にある酸素原子や窒素分子といった物質と衝突してエネルギーを生み出します。

実はこの衝突の際に起こる発光現象が”オーロラ”の正体なんです。

前述したオーロラベルトに多くオーロラ現象が見られることや夜にしかオーロラが見られないのは、太陽風の動きが大きく関係していたんですね。

3 オーロラの色や形に違いがあるのはなぜ?

オーロラの色や形に違いがあるのはなぜ?

オーロラには色や形状にさまざまな違いがあります。

いわゆるカーテンのような形状以外にも放射線状やアーチ状といった形状、色もピンク、赤、青といった発光色などその違いは多岐に渡ります。

ここではオーロラの色と形状の変化がどのようにして起こるのか見ていきましょう。

3-1 オーロラの形状の違い

オーロラは観測位置とそのオーロラがどれくらい活発に活動しているかによってその形状が変化すると言われています。

オーロラの形状は大きく分けて「アーチ型」「カーテン型」「コロナ型」の3種類

最も活発にオーロラ活動が行われ、真下からオーロラを見ることができた時に見ることができる形状が「コロナ型」。

コロナ型の次に活動レベルが高く、少し距離をとった位置から見えるのが「カーテン型」。

活動があまり活発ではなく、かなりオーロラとの距離がある場合に見えるのが「アーチ型」です。

オーロラの活動が活発になればなるほど見える範囲も広がるため、よりコロナ型に近いはっきりとした形状でオーロラを見ることができる確率が高まるそうです。

3-2 オーロラの色の違い

オーロラの発光はプラズマ粒子と大気圏内にある酸素原子や窒素分子が接触する時に起こると前述しましたが、この接触によって発生したエネルギーが元の状態まで戻る時の差分がオーロラの光の色の違いを生み出すと言われています。

酸素原子や窒素分子は高度が下がるほど濃度が濃くなり、そもそも接触するにはプラズマ粒子のエネルギーが強くなければ大気圏にすら到達できません。

つまり高度が低くなればなるほど双方のエネルギー量が大きくなり、元の状態に戻るまでの差分が大きくなることでオーロラに色の差が生じるというわけなんです。

高度が200kmくらいだと、プラズマ粒子のエネルギーはそれほど必要がなく赤色のオーロラが生まれます。

高度が100kmになってくると酸素原子の密度が高くなってくるので、より強いプラズマ粒子が必要となりオーロラの色は緑色になるんだとか。

高度が80kmまでくると酸素原子より重い窒素分子の密度が高くなってくるため、最も強いプラズマ粒子のエネルギーが必要となり、オーロラも紫やピンクに発光すると言われています。

4 オーロラが見れる確率の高い地域は?

オーロラが見れる確率の高い地域は?

オーロラがより高確率で見える地域はカナダ、アラスカ、北欧3つの地域と言われています。

特におすすめの地域について詳しく見ていきましょう。

4-1 イエローナイフ

最もオーロラを鑑賞できる確率が高い地域と言われているのが、カナダ北部に位置するイエローナイフ。

他の地域に比べ空気が乾燥し、晴れの日が多いためオーロラが見える条件が整いやすいのがその要因となっているんだとか。

特に11月から4月にかけてが最も見える可能性がある時期と言われています。

4-2 ホワイトホース

同じくカナダのホワイトホースもイエローナイフに並ぶ、オーロラ鑑賞に人気がある地域。

街の郊外まで行くと人工物の光がほとんどないため、オーロラの光が見やすいと言われています。

時期もイエローナイフと同様に11月から4月にかけてがベストです。

4-3 フェアバンクス

日本からの直行便がるためとても行きやすい地域と言われているのがアラスカ、フェアバンクス。

晴天率も高く、オーロラが見える付近にはロッジが完備されており、その中で待機できるのも魅力のひとつです。

4-4 キルナ

北欧、スウェーデンにあるキルナは”オーロラの街”と呼ばれていることはご存知でしたか?

キルナではオーロラ鑑賞はもちろんですが、異国情緒を感じることのできる北欧の街や世界観が魅力的。

また、世界でここにしかない氷で作られたホテル、”アイスホテル”もぜひおすすめの観光スポットです。

4-5 トロムソ

トロムソは、北欧のパリとも言われており、雄大な自然を満喫できる北極最大の都市。博物館やショッピングセンターなど、文化や歴史を美しい街並みとともに楽しむことができます。

ノルウェーの北極圏にある町で、これまでオーロラが多く観測されてきました。ノルウェーの中でも人気のオーロラスポットです。

トロムソは極夜があることが特徴。これは冬のタイミングで起こる、一日を通してほとんど太陽が昇らない現象のこと。

太陽がほとんど昇ってこないため、辺り一帯は暗いままです。そのためオーロラを鑑賞できるタイミングも多いことがポイント。

ただ気温は低くなるので、服装などは注意が必要です。

4-6 カンゲルルススアーク

グリーンランドの西に位置するカンゲルルススアーク。

世界の中でも晴天の確率が高く、オーロラの可視率も世界最高クラスです。オーロラベルトに年中属しており、人工光が少ないことも特徴。

天候が安定して晴れの日が多く、湿度も低いのでオーロラを鑑賞するにはもってこいの地域です。

4-7 ロヴァニエミ

ロヴァニエミはフィンランド北部に位置する都市。

サンタクロースの故郷として知られているサンタクロース村や、広大なウルホケッコネン国立公園など多くの観光スポットが存在します。

オーロラを鑑賞できるタイミングは8月〜4月です。

5 日本におけるオーロラの歴史

日本や中国などでは、昔から「赤気(せっき)」という名でオーロラが観測されていました。

日本における一番古い赤気の記述は日本書紀に記されており、年代でいうと実に620年頃。その後、鎌倉時代に藤原定家の日記である「明月記」で、「京都で赤気を見た」という記述があることから、オーロラが再び確認されたと考えられています。

また、1770年には松前藩(北海道)から薩摩藩(鹿児島県)でオーロラを観測できたと「星解」という書に記録されています。さらに明治になり、「極光」という名を付けられて、日本各地で度々オーロラは目撃されていたようです。

このように昔は北海道のような高緯度の場所だけではなく、京都や鹿児島でもオーロラの観測ができることがあったのです。

理由としては現在より日本の磁気緯度が高かったため、本州でもオーロラを見ることができたと考えられています。しかし現在は日本でオーロラを観測するのはなかなか難しくなってしまっています。

6 近年で日本でオーロラが観測された場所は

日本では1989年から1993年、2000年から2004年、2015年に低緯度オーロラが観測されています。

場所は、北海道の陸別、稚内、母子里といった高緯度の場所が主流でした。本州では、1958年に北海道だけでなく広島県や山口県でも目撃された事例もあります。

オーロラは、電流によって引き起こされるため、巨大な磁気嵐が起こったことで規模が拡大し、広島県など南の方でも見えたんだとか。大規模で再び磁気嵐が発生しない限り、本州オーロラを見ることは難しいでしょう。

7 日本でオーロラが見られる時期目安

日本で観測されたオーロラは、太陽の11年周期に合わせて観測されています。太陽の11年周期とは、太陽の活動が活発になる周期のこと。

国立天文台によると、周期が数えられ始めてから2021年までで、太陽の周期は25回目です。2019年12月から新たな周期が始まっているため、単純に計算すると2030年ごろの北海道であれば観測の可能性はあるかもしれません。

一生に一度は見てみたい神秘的な景色

今回は誰しもが一度は見てみたいと憧れるオーロラについてご紹介しました。

オーロラとは太陽活動で起こる太陽風が要因となり発生する発光現象。

特に”オーロラベルト”と呼ばれる極地に近い位置で多く観測されるのは、実は地球の磁場の力が関係していたんですね。

オーロラはいつでも見ることができるものではありませんが、より高確率に見ることのできる地域というものは存在します。機会があれば一度は間近で目にしたいものですね。

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