秋の登山は丁寧な準備から。持ち物や注意点、地域ごとの特徴など

COLUMN | 2022.10.04

夏らしい暑さがだんだんと影を潜め、幾分過ごしやすい日も増えてきました。高山では徐々に紅葉が進み、本格的な秋山シーズンがやってきます。

優しい暖色が目にも鮮やかな秋の山。しかし夏の山とは異なる点に気を配らなくてはなりません。

今回は秋の登山を楽しむにあたって気をつけておきたい点を解説していきます。

1 秋登山の注意点

 

山にもよりますが、おおよそ秋山のシーズンは9月中旬~11月上旬の約2ヶ月程の間、いわゆる「積雪前まで」と考えておきましょう。

夏山では時に煩わしかった虫も少なくなり、澄み渡った空気も相まって気持ちよく登山を楽しむことのできるシーズンです。

夏と比較すると雷雨等のリスクは提言されますが、秋は別のリスクでの山岳遭難が起こりやすい季節でもあります。

1-1 日照時間の短さ

まず意識をしておきたいのは「午前中の行動が常識」であるということ。これは夏山でも同じですね。

秋シーズンはアルプスなどの高山ではなく、近場の低山へ登る方も多く見受けられます。夏山では何気なく歩いていた樹林帯や谷筋も、日照時間の短い秋では15時過ぎあたりからとても暗く感じるはず。

「秋の日はつるべ落とし」ということわざの通り、日没の時間が急激に早まってきます。

東日本では10月上旬では17:30ごろ、11月上旬では16:40ごろに日没の時刻を迎えます。もしも登山が午後まで要する場合は必ず日没の時刻を確認しておきましょう。

日没前2時間までに下山できないと判断される場合、ヘッドライトを必ず携帯するようにしてください。

出発前には、故障していないか、電池は入っているか、予備の電池はあるか等、しっかり確認しましょう。

1-2 気温の低下、天候の急変

秋は台風や秋雨前線による大雨が多いシーズンです。

さらに、日照時間が短くなるにつれ、気温も低下し、天候が急変しやすく、冷たい雨が降ることもあります。北アルプスなどの高山では10月に入れば降雪することも。

また、標高の高い山では午前中や正午は温かくても14:00ごろを過ぎると急激に気温が低下してくることも少なくありません。

すなわち、夏山に比べると低体温症のリスクが高まるということ。

軽装の場合、標高2000m以上では14:00がタイムリミットだと考えておきましょう。

日帰り登山であれば10:00までには山頂に到達できるようなスケジュールを組んでおくと安心です。

1-3 事前の天気図の確認や十分な防寒対策、積雪対策

高山では9月に入ると氷が張ることも。さらに10月になると降雪も決して珍しいことではありません。

気温が低い日だと、朝方には霧氷ができることも。

日中は夏のような陽気であったとしても、天候が崩れて雪が降ってくることも考えられます。急な天候の変化や降雪によって低体温症になってしまう恐れもあるため、事前に天気図の確認や現地の情報を聞いて防寒着などの適切な装備の準備も怠らないようにしましょう。

十分な防寒対策をするとともに、軽アイゼンやチェーンスパイクなども準備しておくと安心です。

1-4 野生生物との遭遇

秋は冬眠を控えた熊が活発に動き回る季節でもあります。

熊鈴や熊よけスプレーを携行しておくことを忘れずに。

また、スズメバチの気性も荒くなる季節であることも意識しておきましょう。

万が一ハチに出会ってしまったら、姿勢を低くし、ゆっくりとその場を離れるようにしてください。

2 場所ごとに見る秋の山の特徴

 

ここからは場所ごとの秋の山の特徴を見ていきましょう。初心者向けの山が多いエリアや、険しい山が連なるエリアなど、地域ごとに異なった表情を見せてくれます。

2-1 関東エリア

高尾山や相模原、奥多摩、丹沢などを代表し、多くの登山者が訪れる人気の山が連なる関東エリア。

日帰りでも宿泊でも、バリエーション豊かな登山を楽しむことができます。10月中旬ごろが特に見頃。しかしその分混雑も予想されるのでスケジューリングには要注意です。

2-2 西日本エリア

西日本の山々の標高は決して高いわけではありませんが、修験道にも使われていた山などもあり、中には険しい山もちらほら。

1500m以上の山にもなると10月中に見ごろのピークを迎えることもありますが、1000m以下であれば11月中旬まで紅葉を楽しむことができますよ。

2-3 中部エリア

北アルプスや八ヶ岳など比較的標高の高い人気の山々が存在する中部エリア。

上高地エリアや室堂、乗鞍岳など、場所によっては登山初級者でも楽しめるコースも。自分の経験値やレベル感に適した山を選んで登山を楽しみましょう。

2-4 北海道エリア

景色が鮮やかな旭岳や赤岳、初心者向けの黒岳など、雄大な自然が楽しめる北海道。中でも特に「日本一早い紅葉」と言われるのは大雪山エリア。

日本一の名の通り9月中旬には見ごろのピークを迎え、10月初旬までは色鮮やかな絶景を楽しむことができます。

2-5 東北エリア

東北エリアの紅葉は早いところで9月中旬から。しかし緯度の差が大きいこともあり、場所によっては10月下旬まで楽しむことも可能です。

八幡平や蔵王、磐梯山などドライブルートとしても人気の場所が多く、様々な景色を楽しむことができます。

2-6 北関東エリア

北関東エリアの山は首都圏からのアクセスが良いのが特徴。さらに比較的登山初級者でも楽しめる山が多いのが魅力です。

9月下旬に色づく早熟な山もありますが、筑波山など標高が低い山では11月ごろまで紅葉が楽しめます。

時季に合わせて訪れる山を変えてみるのも面白いかもしれません。

3 実は秋の山は野鳥観察にもおすすめ

 

秋は野鳥が越冬するために暖かな地域へと旅に出たり、標高の高いエリアから平地へと下ってきたり、野鳥の行き来が活発化する季節でもあります。

秋ならではの野鳥との出逢いの中には、この時期めがけて日本にやってくる渡り鳥も。景色以外の一期一会を楽しんでみるのもおすすめです。

3-1 秋登山で出逢える野鳥

秋の登山で出逢える野鳥の代表格といえば、

  • ツグミ(鶫)
  • ジョウビタキ(尉鶲)
  • シロハラ(白腹)

このあたりでしょうか。ジョウビタキは灰色の体に、淡い橙色をしたお腹まわりの色合いが特徴的。小さな美しい鳥を称する「色鳥」という季語が存在するほどです。

3-2 低山や平地・人里に下ってくる野鳥

秋に平地へと下ってくる野鳥には、美しい体色が多いのが特徴的です。

  • ルリビタキ(瑠璃鶲)
  • アオジ(青鵐)
  • アオジ(白腹)
  • アオバト(緑鳩)
  • モズ(百舌)

特にアオバトは、海外で見るような色合い。普段はなかなか目にすることはできませんが、春秋の渡り時期に低山などで稀に見かけることができます。

4 秋登山の服装、小物の注意点は?

 

秋の登山に出かけるときは服装、小物に気を配りましょう。

夏と同じような軽装で臨んでしまうと予期せぬ気温の変化に対応できず、体調を崩してしまうかもしれません。

秋の登山で必需品となるのは、帽子、手袋、ネックウォーマー、タイツなど。

理由としては気温の変化に対応するためです。日の出を見に登山に出かけるときは、パンツの下に速乾性の保温タイツを履いておくのもおすすめです。

美しい秋の山をより楽しむために、しっかりと準備を

秋の山は夏の山と気象条件が大きく異なります。

夏登山の勢いそのままに秋登山をおこなってしまうと思わぬ事故につながってしまうかもしれません。

ウェアやスケジュール、持ち物など、しっかり準備して秋の山々を楽しんでくださいね。

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