登山における三種の神器の一つである「ザック」にフォーカス
COLUMN | 2023.02.06
ザックは登山における「三種の神器」とも呼ばれ、これから登山を始める方にとって必要不可欠なアイテム。
しかしながら、種類も多くどれを選ぶべきなのか悩まれている方も少なくありません。また普段使用している街用リュックで代用できると考えている方も多いはず。
そこで今回は、安全で快適な登山に欠かすことができないザックにフォーカスし、街用リュックとの違いからザックを選ぶ際のポイントやパッキングの基本術などに触れていきます。
1 登山におけるザックの必要性
登山をこれからスタートさせる方が、まずは揃えるべきアイテムが3つ。それは登山における「三種の神器」とも呼ばれており、「ザック」「登山靴」「レインウェア」です。
登山時ではザックの必要性が高く、登山スタイルに適した物を選ぶ必要があります。しかしながら、日常で使用している街用リュックでも代用できるのでは?と考えられる方も多いのではないでしょうか。
普段から使用している街用リュックでも登山ができない訳ではありません。しかし、肩や腰を痛めてしまったりなどのリスクもありますし、何よりも疲れやすいということが登山に適していない最大の理由です。
街中では問題ないかもしれませんが、登山中は疲労やストレスが事故に繋がってしまうため注意が必要です。ザックは登山用に作られているため、当然ながらより安全で快適な登山を楽しむ事ができます。
2 ザックを使用することでのメリット
登山時にザックを使用することでのメリットは様々。ここでは、それぞれの特徴を説明していきます。
2-1 カラダへの負担軽減
登山をする際は多くの荷物を背負いながら、長時間歩くことになります。そのため、ザックは長時間重い荷物を背負いながら、歩いていても疲れにくい設計になっていることが特徴です。
ショルダーベルトは柔らかいタッチの素材で背負いやすい形状になっており、ウエストベルトは荷物のブレをなくし安定感を増してくれます。また、肩だけににかかる荷重を腰にも分散させる設計になっています。
その他にも、ザックの背面は背中全体で荷物を支えることができるよう設計されているので、カラダへの負担が軽減できることもメリット。
ザックの種類にもよりますが、背面がメッシュになっているものであれば、通気性に優れているので、背中の蒸れを軽減することができます。
2-2 優れた耐久性
前述した通り登山時は重たい荷物を背負いながら、歩くことも少なくありません。
そのためザックには耐久性が優れた素材が使用されており、登山時に木の枝や岩などに擦れても、簡単には破れない頑丈さもあります。
またカラダへの負担軽減のために軽い素材が使用されていることもポイントの一つです。
2-3 便利機能の搭載
ザックには様々な種類が用意されていますが、便利な機能が搭載されていることもポイント。
小物や地図などを入れておくのに便利な収納ポケットが複数あったり、中型以上のザックであれば、ザックの一番奥の取り出しにくい荷物を簡単に取りだせるものもあります。
これらの機能は、街用リュックにはあまり見られません。必要な時に必要な物を、手軽に取り出せる機能が搭載されていることがザックの特徴です。
3 適正な容量
ザックを選ぶ際は、どのような山に登るのか、どの程度の荷物を持参するのかによって選択する必要があります。
選ぶ際は、まず容量で選ぶことがポイント。「リットル」で表記されており、10リットル前後の少ない容量の物から、90リットル以上の大きな物まで様々あります。
登山を行う季節や、日帰りなのか宿泊するのかなどによって必要な容量は違ってきます。
容量の目安は以下の通り。
- 日帰りの登山の場合:20~30リットル
- 1泊程度の山小屋泊のケース:30~40リットル
- 数泊以上の山小屋泊またはテント泊の場合:50〜80リットル
- 長期間の縦走、遠征に行く方の場合:100リットル〜
初心者の方や、低い標高の登山であれば20〜30リットルで問題ない場合もあります。
ただ宿泊が必要な登山や、季節によっても荷物が増えるため30~40リットルを選ぶ方が多いようです。また日帰りでも対応できますし、ウエストベルトや雨蓋が搭載されている物が多いことも人気の理由の一つ。
自分がどのような登山を目標にしているかによって、選ぶ基準は異なることを覚えておきましょう。
4 パッキングの基本術
どれだけ多くの容量が収納できるザックだとしても、荷物の入れ方によっては、出し入れのしやすや体感重量に違いがでてきます。
その際にポイントとなるのが、ザックに隙間なく、かつ均等に収納すること。これはパッキングと呼ばれるもので、荷造りや包装を意味しています。
パッキングの際に抑えておくべきポイントは大きく以下の4つ。
- 重量があるものは背中より上部へ
- よく使用するものは上部や雨蓋に収納
- 頻繁に使用しないものは下部に入れる
- 同じ用途のもの同士を小分けにして入れる
ここではパッキングの4つの基本術について説明していきます。
4-1 重量があるものは背中より上部へ収納
パッキングする際は、重さのあるものはザックの背中側の上部へ収納しましょう。
ザックの下部に入れてしまうと体感重量が増してしまい、疲労を感じてしまいます。また、できるだけ背中に近い方に入れることもポイントの一つ。
背中から遠い所に収納してしまうと、遠心力で歩行中にカラダが振られやすくなってしまいます。余計な体力を使うことになり、疲れやすくなるので覚えておきましょう。
主な収納アイテムは以下の通り。
- クッカー
- ストーブ・燃料
- 食糧
- 予備水
4-2 よく使用するものは上部や雨蓋に入れる
使用頻度が高いものや、すぐに取り出したいものはザック上部へ入れておきましょう。
例えば夏であれば、水分補給が必要になるので水筒を入れたり、冬場であればアイゼンを入れておくと便利です。
主な収納アイテムは以下をご覧ください。
- レインウェアー
- フリースジャケット
- ファーストエイドキット
4-3 頻繁に使用しないものは下部に収納
ザックの下部には、使用頻度が低いものを入れておきます。山小屋やテント場または下山後まで使用しない軽めの着替えなどは、下部に入れておきましょう。
休憩などで使用する、少し重めの防寒着などはザックの真ん中あたりに収納しておきます。
例えば以下のようなアイテム。
- シュラフ
- ダウンアイテム
- テント場で使うサンダル
4-4 同じ用途のもの同士を小分けにして入れる
パッキングの際の基本術の一つが、同じ用途のもの同士を小分けにして入れること。
衣類や食料、救急用品などの用途毎に整理をしましょう。その際に防水地の小物袋に仕分けをすると、突然の雨でも荷物を濡らさず、ザックの中を整理しやすくなります。
またテント内でザックから荷物を取り出した際も、場所を取る範囲が狭いのでテント内を広く活用できることもポイントです。
5 フィット感を向上させるための4つのポイント
洋服やシューズなど身に着ける物に適正サイズがあるように、ザックにも自分のカラダに合ったサイズを選ぶことがポイント。
ザックの適正サイズを選ぶ際に、まずは知っておくべきなのが「背面長」。これは背骨の長さを指しており、首筋の下にボコっと出ている第七椎骨から腰の付け根部分までの長さのことです。
自分の背面長の長さを測り、カラダのサイズに適したザックを選びましょう。
サイズが合っていると背中とザックがフィットするので、カラダへの負担を軽減することができます。その他にもザックを選ぶ際のポイントがあるので、紹介していきます。
5-1 ウエストベルト
ザックを選ぶ際は、ウエストベルトが付いているかを確認しましょう。容量が少ない物にはウエストベルトが付いていることが少なく、30リットル以上のモデルに付いていることが一般的です。
登山時は前述したように、ザックと背中とのフィット感が大切なポイント。
ザックの重さが重ければ重いほど、荷重は肩ではなく腰で支える必要があります。そのためウエストベルトが付いているのと付いていないのでは、歩行時の安定性が大きく変わってしまうことを覚えておきましょう。
5-2 ショルダーベルト
ウエストベルト同様に、カラダへのフィット感に大切なのがショルダーベルト。
自分のカラダと長さが合っているかを確認しましょう。長すぎたり、短すぎたりするとフィット感がなくなるのでカラダへの負担が大きくなってしまいます。
5-3 チェストベルト
フィット感を向上させるためのポイントの一つがチェストベルト。これは、ショルダーベルトが左右に動いてしまうのを防いでくれる役割を持ちます。
近年、アウトドアの人気が強まっているので、街用リュックでも付いているので見覚えがある方も多いはず。
しかしながらザックに付いているチェストベルトには、ある工夫がされています。それは、チェストベルトの位置を自由に決められること。
カラダのサイズは人それぞれで、胸筋や胸の厚みが異なります。そのため自分のカラダにフィットできるよう、チェストベルトの位置を調整できることが特徴です。
5-4 ロードリフター
カラダへのフィット感を高めるのにポイントとなるのが、ロードリフター(ストラップ)。
ザックとショルダーストラップとの間を引きつける役割を持ちます。これにより荷重を上に引き寄せ、後ろへ倒れようとする力が働くのを防いでくれることがポイント。
街用リュックにはほとんど付いていないので、あまり馴染みが無い方も多いでしょう。背中とザックとの隙間を埋めてフィット感を高めてくれるため、安定した歩行を可能にしてくれます。
6 ザックのメンテナンス方法
ザックを長く愛用するためには定期的なケアが大切です。
登山後ではザックが雨などで濡れてしまったり、泥が付いてしまったりすることも少なくありません。そのままの状態で保管しておくと、カビが発生してしまいコーティングを痛めてしまいます。
ここではザックのお手入れ方法と保管方法について説明します。
6-1 ザックのお手入れ方法
ザックのお手入れ方法は、まず背面パッドやショルダーハーネスなど、汗の染み込みやすい箇所を乾いたタオルで乾拭きしましょう。
汗はザックの生地やパーツを痛めてしまう原因になるため、ザックを使い終わったらこめまめに汗を拭き取ることが大切です。その際に洗濯機を使って丸洗いしてはいけないことを覚えておきましょう。
また、ザックの底の部分は泥が付きやすい箇所なので、中性洗剤を溶かしたぬるま湯でお手入れをします。
ゴシゴシと擦って汚れを落としたくなりますが、タオルでトントンと叩く様にするのが生地を痛めないポイント。汚れが落ちたのを確認できたら、しっかりと乾燥させましょう。
6-2 ザックの保管方法
ザックの汚れを落とし、乾燥が完了したら直射日光の当たらない風通しのいい場所で保管をします。
その際に平積みにして保管しないように注意しましょう。平積みにしてしまうと、ショルダーベルトやウエストベルトが型崩れしてしまう場合があるためです。
ショルダーベルトをハンガーにかけて保管することも避けましょう。これも型崩れになる原因の一つ。またビニールにザックを入れて保管するのも、湿気がこもってしまいカビの原因になるため避けるべきです。
ザックのトップについたホールドにハンガーをかけた状態で、日陰で風通しの良い場所に保管します。
型崩れが気になる方は、丸めた新聞紙をザックの中に詰めて保管しましょう。型崩れも防ぐことができますし、新聞紙は湿気も吸い取ってくれます。
適切なザックを選んでより快適に登山を
登山では多くのアイテムが必要で、その種類は様々。その中でも荷物を収納するザックは、登山時には必要不可欠です。
普段から使用している街用リュックでは、肩や腰への負担が大きく、疲れやケガなどのリスクが考えられます。
より快適に登山を楽しみたい方にとっては機能性に優れた「登山専用のザック」 を選択しましょう。