南極にいないシロクマ、北極にいないペンギン。極地に住む生物の生態系について

COLUMN | 2019.10.29

 

皆さんは極地と呼ばれる北極や南極にどのような生き物が生活しているかご存知ですか?

南極や北極の生物と言えばペンギンやホッキョクグマ、アザラシやクジラなどがイメージしやすいかもしれませんね。

実は極地には海を渡ってくる鳥類から海底深くに棲む魚、植物やプランクトンなど私たちが思っているよりも多くの生き物たちが生態系を形成していると言われています。

そこで今回は極地に生きる生物の生態系や意外と知らない生物の特徴、今抱えている問題点などを詳しくご紹介していきます。

1 極地の寒さに適応している生物たち

極地の寒さに適応している生物たち

1-1 極寒の中生存できる生物とは

極地に住んでいる生物はなぜ極寒の地でも生きているのか、不思議に感じませんか?

極点に近づくほど気温は氷点下を大きく下回り、海水表面の水温も1〜2℃程度まで低くなる極地。地球上のほとんどの生物は“生存すらできないと環境”と言われています。

そもそも極寒の世界では多様な動物が生きていくには難しく、うまく環境に適応し厳しい条件下の中でも生きているのはおよそ200〜300種程度。そのほとんが海洋生物なんだとか。

ただし、極点からもう少し広範囲に見た北極圏、北極海や南極海といった海にはもう少し多様な生物が存在し、また夏の時期には植物が育つ地域もあるとも言われています。

1-2 寒さに順応するための工夫

よく勘違いされがちですが、北極・南極またはその周辺で生活している生き物たち全てが”寒さに強い生物”という訳ではありません。

ペンギンやアザラシなど1年中極地に留まる生物がいる一方、クジラや海鳥など寒さが最も厳しくなる冬の時期には温暖な地域へ移動してしまう生物も多いんだとか。

極地の生き物たちは寒さを凌ぐため厚い体毛や外皮によって体温調整をしていますが、それと同じくらい重要と言われているのが“皮下脂肪”と”油分”なんです。

例えば、極地に暮らすほとんどの哺乳類は“ブラバー”と呼ばれる厚い皮下脂肪で体が覆われており、このブラバーが熱が体外に逃げ出すのを防いでくれているんだとか。

またフラバーがいざという時の生命を維持する”エネルギーの蓄積”という役割を担っているということも、食料の確保が難しい極地ならではと言えます。

ペンギンなど水辺の鳥類にはお尻のあたりに油分を分泌する部位があり、その油分を羽に塗りつける習性があることをご存知でしたか?

これは羽についた水分を弾くことで必要以上に羽が濡れることを防ぎ、体温が下がってしまわないようにするためだと言われています。

このように極地に生き物たちは寒さから身を守るため、様々な順応の仕方をしているんですね。

2 北極と南極の生態系

北極と南極の生態系

2-1 北極の生態系

北極点を中心に広がる北極海には様々な海洋生物が生息していますが、まず筆頭にあげられるのは”クジラ”ではないでしょうか。

クジラ自体は世界中に生息しているため北極海以外でも見ることができますが、世界最大の動物である”シロナガスクジラ”など比較的大型のクジラが生息していることから極地=クジラのイメージが付いたのかもしれませんね。

ただそんなクジラも広範囲で移動をしているため、餌であるオキアミやプランクトンが多く発生する4月〜5月にかけて北極海で頻繁に見ることができるんだとか。

アザラシやセイウチなど氷上で生活をしている動物がいる一方、シロクマやホッキョクウサギ、ホッキョクキツネ、鷲やライチョウといった陸地と氷上を行き来し生活している動物もいます。

陸上に棲む北極の生き物が氷上に移動するのはもちろん他の生物を捕食するため

北極圏で生活している生物は、氷上の上で生活を営んでいるように思われがちですがそのほとんどがカナダやグリーンランドなどの陸地に生息し、一部の動物のみ食料を調達するために氷上まで足を運んでいるんですね。

2-2 南極の生態系

南極大陸は北極に比べても標高が高く気温もかなり低いため、陸上のみで生活しているほ乳類は皆無と言われています。

アザラシやクジラ、イルカなどの北極にも生息しているほ乳類は南極でも見ることができますが、その中で食物連鎖の上位にいるのが”ヒョウアザラシ”という生き物。

南極全域に生息しているこのヒョウアザラシは、大きいもので体長3m、体重500kgを超える体躯をしており、シャチについで第2位の捕食者なんだとか。アザラシはなんとなく可愛らしいイメージを持たれがちなので少し意外ですよね。

また、南極の生き物言えば”ペンギン”を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

南極大陸やその周辺のには5〜7種類のペンギンが生息していますが、その内「コウテイペンギン」と「アデリーペンギン」という2種のみが南極大陸で繁殖するペンギンなんです。

例えば、世界最大ペンギンであるコウテイペンギンは寒さが厳しくなると南極内陸部に向かい、-40℃にもなる極寒の世界で卵を産み育てるといった習性があると言われています。

3 北極にいないペンギンと南極にいないホッキョククマ

北極にいないペンギンと南極にいないホッキョククマ

ペンギンとホッキョクグマと言えばどちらも”極地の生き物”としてイメージしやすいですが、ホッキョクグマが北極、ペンギンが南極にのみに生息しているということは、改めて気づくと少し不思議に思いませんか?

ここでは意外と知られていないその理由について見ていきましょう。

3-1 ホッキョクグマが南極にいない理由

ホッキョクグマと言えば地球上で最も大きい肉食生物。

その約60%が北極圏内のカナダに生息しているホッキョクグマは、陸上生物とはいったものの生涯のほとんどを氷上で生活しています。

なぜホッキョクグマが南極で生活できないのか、それは食料の確保の困難さが理由と言われています。

ホッキョクグマは生命を維持するためには1日あたり約13,000キロカロリーの摂取が必要と言われており、南極より遥かに食料となる生物が多い北極でも餓死してしまうホッキョクグマがいるほどなんだとか。

仮にホッキョクグマが南極大陸で生活したとしても、ほとんど餌となる生き物がいないため十分な食料を確保することができず生活していけないのです。

3-2 ペンギンが北極にいない理由

もともと過酷な環境でも生活しているペンギンは、ホッキョクグマのように環境による原因が北極に生息していない理由ではありません。

そもそもペンギンの元祖と言われる「オオウミガラス」は北極海に生息していたペンギン。オオウミガラスを見た古代の人が、飛べない海鳥(Pen gwyn)と名付けたのが始まりとされています。

ペンギンが北極に生息していないのは残念ですが人間が原因と言われています。

1840年代にペンギンの乱獲が行われそこに棲む全てのペンギンが絶滅して以来、北極にはペンギンが生息しなくなってしまったのが理由なんです。

4  北極に迫る問題点とは

北極に迫る問題点とは

現在、北極の生物にとって大打撃となる問題が発生していると言われています。

その問題とは“地球温暖化”と”環境汚染”。どのようなことが問題となっているのか見ていきましょう。

4-1 地球温暖化による問題

“地球温暖化によって極地の氷が溶けつつある”。なんとなくニュースなどで耳にしたことはありませんか?

現在、温暖化が原因で北極海に浮かぶ氷自体の厚さが薄くなり、氷が溶け出す時期が早まり再凍結する時期もだんだん遅くなってきていると言われています。

この氷の溶け出してしまう時期が北極の生き物たちにも大きな影響を与えてしまうんだとか。

例えば氷上で狩りをするホッキョクグマなどは、氷が溶け出す時期が早まれば狩りの時期も短縮され十分な食料を確保できなくなってしまいます

ホッキョクグマが産んだ子グマの生存率は50%未満。大人に成長できない理由のほとんどが食糧不足なんです。

4-2 環境汚染の影響

北極圏には人があまり住んでいないので環境汚染とは無縁に思われがち。

しかしそれは勘違い。今、北極で起こっている深刻な環境汚染が生き物を苦しめていると言われています。

例えば、遠い国で大気中に拡散された農薬やダイオキシンなどの有害物質。これらは気流に乗って北極圏にまで流れ着いてしまうことがあります。

また、先進国の工場から流れた汚染された水も海流に乗って結果的に極地に集まってきてしまうんだとか。

この汚染物質は最初は北極海のプランクトンに取り込まれその後、食物連鎖を通じて極地に住む生き物たちを蝕んでいってしまいます。

ホッキョクグマやアザラシなどの食物連鎖の上位にいる生物ほど高濃度の汚染物質を体内に取り込んでしまうため、動物自身はもちろんのこと、この地域で狩猟をして生活をしている人間にも影響を与えてしまうことが問題となっているんです。

極地の生き物たちを守るために

今回は北極・南極の生き物たちの営みや生態系についてご紹介しました。

極地の生き物たちは、常に氷上や雪の上で生活していると思われがちですがそれはごく一部の生物のみ。ほとんどの生物は海洋生物なんです。

北極ではホッキョクグマなどは氷上で狩りをしながらその生涯のほとんどを氷上で過ごし、南極ではその過酷すぎる環境がゆえ、生涯を南極大陸で過ごす生物は1匹もいないんだとか。

今、極地の生き物たちを苦しめている環境問題は私たちにとっても無関係なことではありません。

少しの環境への配慮が地球の将来、ひいては極地の生態系を守る手助けとなってくれるかもしれませんね。

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