登山におけるレインウェアの選び方

COLUMN | 2023.06.06

「山の天気は変わりやすい」とよく耳にしませんか?

登山では登りは快晴でも下りはドシャ降りという事態も決して珍しいことではありません。

そんな時レインウェアがなければ、雨に濡れた結果体温を奪われてしまいます。気温が低い山では、真夏でも低体温症が起こり得るため、雨のトラブルは非常に危険です。

だからこそ登山ではレインウェアが必須なのです。

今回は登山用にどんなレインウェアを選べばいいのか、まとめてみました。

1 ビニール性のカッパではなく登山用ウェアを

快適な登山にするためにはレインウェア選びが大切です。

登山用のレインウェアは「防水性」だけ優れているわけではありません。運動をするときと同じように長時間の登山はたくさんの汗をかきます。

安価で販売されているビニールカッパなどは「防水性」は優れていますが、汗を発散させる「透湿性」が不足していることがほとんど。そのため、汗を外部に放出できず衣服の中がムレてしまい、汗だくの状況に。この状態で登山すると、冷えた汗が体力を奪い、ひどい場合は低体温症になる恐れがあります。

登山では「防水性」はもちろんですが、高性能な「透湿性」も兼ね備えた素材のレインウェアを選ぶことが大切です。

2 登山用レインウェアに必要な機能

登山用のレインウェアに必要な機能をまとめました。購入の際は下記の性能が備わっているかどうかを確認してみてください。

機能 説明
防水性能 防水圧が20,000mm以上のもの推奨。
透湿性能 一般的に10,000g/m²/24h以上推奨。
軽量性とコンパクト性 荷物の重量が疲労に直結するため。パッキング時のコンパクト性も重要。
サイズとフィット感 動きやすさや保温性が向上。レイヤリングを考慮したサイズ選びが大切。
耐久性 磨耗への強度や、裂けにくい素材を選ぶことが重要。
デザインと機能性 目立つ色は救助活動を容易に。ポケットやフードの形状、脱ぎ着しやすいファスナーに注意。

3 正しいレインウエア選びのための基礎知識

ここからは細かくレインウェアに必要な項目をチェックしてきましょう。

レインウェア選びの参考にしてみてくださいね。

3-1 防水性能は20,000mm以上

登山用レインウェアの最も基本的で重要な性能です。

一般的には20,000mm以上が適切と言われています。

一般的には、

  • 20,000mm…嵐
  • 10,000mm…大雨
  • 2,000mm…中雨
  • 300mm…小雨

と、言われています。一般的にレインウェアを選ぶ目安として、

小雨や小雪を凌ぐ程度であれば5,000mmほど、雨、雪にさらされる可能性のあるスキーやゴルフ時は最低10,000mm以上、登山などは命にかかわるので最低でも20,000mm以上が必要とされています。

この数値は初期の耐水圧ですので、繰り返しの洗濯や使用時の摩擦によって機能は少しづつ低下します。

3-2 透湿性能は10,000g/m²/24h以上

登山は運動強度が高いため、汗を外に逃がす透湿性が重要。

透湿性がないと雨は防げますが、汗で体が濡れてしまいます。結果として体温を奪われる可能性が。

ビニールには透湿性がないため、ビニールの雨ガッパは登山に向いていないというのは前述の通り。適切な透湿性は10,000g/㎡/24hとされています。

10,000g/㎡/24hとは、生地1㎡あたり、24時間で10リットルの水分を放出することを意味します。

3-3 レインウェアの構造

登山用レインウェアの構造は主に、2レイヤー、2.5レイヤー、3レイヤーがあります。

それぞれメリットとデメリットがあるので、登山の目的やレベル、予算などに応じて洗濯することが重要です。初心者や短期間の山行には2レイヤーや2.5レイヤー、経験豊富な登山者や厳しい環境での登山には3レイヤーがおすすめです。

構造 メリット デメリット
2レイヤー
  • 軽量でコンパクト
  • 価格が比較的安い
  • 耐久性が低い
  • 透湿性が劣る
2.5レイヤー
  • 軽量性が高い
  • 透湿性と耐久性が向上
3レイヤーに比べて耐久性や透湿性が劣る
3レイヤー
  • 最高の防水性・透湿性・耐久性
  • ハードな環境に適応
  • 重量がやや重い
  • 価格が高い

3-4 耐久性

合成繊維では、繊維の太さを示すのにデニール(denier)という単位が使用されます。

デニール数が大きいほど、繊維は太く、丈夫で耐久性が高くなります。

しかしその反面、重量が重くなる傾向があります。

3-5 ポケッタブル機能

ポケッタブル機能とは、レインウェアやバッグなどが自身のポケットや専用の収納袋に小さく折りたたんで収納できる機能のことを指します。

コンパクトに収納できるため、持ち運びが簡単。スペースを取らずにパッキングできるため登山時には重宝するはずです。特に自身のポケットに収納できるタイプは、収納袋を無くす心配がないので高い利便性を持ちます。

3-6 ベンチレーション機能

ベンチレーション機能とは、通気性を向上させる機能のこと。

通常は、脇の下などに開閉可能な通気口やメッシュパネルが設けることで、発生する熱や湿気を外に逃がすことができます。

3-7 フードとツバの形状

見過ごされがちですが、フードの形状は登山用レインウェアにおいて重要な要素です。フードの設計が適切であるかどうかは、視界の確保、防水性、防風性、そして調整性に影響します。

高機能な製品では調整可能なストラップやドローコードが付いており、それによってフードを顔周りにフィットさせることが可能。これにより、ウェアの動きやすさや保護性能がより向上します。

また、ヘルメット対応のフードは登山やアウトドアアクティビティでヘルメットを着用する際にもフードがかぶれるように設計されています。

広い容量と調整機能が備わっており、ヘルメットの上からでも適切なフィット感が得られます。

3-8 シームテープと止水ジッパー

シームテープはレインウェアの縫い目に貼られるテープ。縫い目からの水の侵入を防ぐ役割を果たします。一方、止水ジッパーは通常のジッパーに比べ、水の侵入を防ぐ機能が強化されたジッパーです。

縫い目やポケットは水が侵入しやすいため雨のひは弱点となりますが、シームテープと止水ジッパーによってこれらの弱点を補強することができます。

結果としてウェア全体の防水性が向上しますが多用すると重量が増加します。

3-9 ドローコードとベルクロ

ドローコードとベルクロは、サイズ調整に役立つためレインウェアのフィット感を高めます。これらの機能は、レインウェアの着脱を容易にし、こまめな体温調節にも役立ちます。特に、登山では細やかな体温調節が重要。着脱のしやすさは非常に重要です。

3-10 ポケット

ハンドウォーマーポケット以外にも、内側のポケットや胸ポケットの有無はレインウェアの利便性を高めてくれます。これらの追加ポケットは、携帯電話や貴重品の収納に便利で、急な雨や風の中でも身の回りの小物を手元で管理しやすくなります。

また、ハンドウォーマーポケットにドローコードを備えたレインウェアも存在しています。ドローコードを引くことで、腰回りのフィット感を高めるとともに、防寒や防水能力が向上します。

3-11 サイズ

適切なサイズのレインウェアを選ぶことで、動きやすさや保温性が向上します。

こう聞くと当たり前に聞こえますが、レインウェアにとってはサイズ選びが極めて重要です。体温調節のためのレイヤリングを考慮したサイズ感であることや、急な降雨にも靴を履いたまま即座に着用できるサイズ感のパンツであることが大切なためです。

レインウェアを試着する際には、実際に着用する予定のレイヤリングで一番厚いものをを着てから試着するのがおすすめです。

3-12 カラー

登山においてレインウェアのカラーはおしゃれ目的というよりも、安全面から重要です。

目立つ色のレインウェアは、、霧や雨などの視界が悪い状況でも周囲に自分の存在をアピールすることができます。万が一の遭難や怪我があった際に救助活動を容易にします。そのため、登山においては、目立つ色のレインウェアを選ぶことが安全性を高めるポイントです。

自分に適したレインウェアで安全な登山を

登山用でないレインウェアを選択することは得策ではありません。登山では登山用のレインウェアを選択するようにしてください。登山の厳しい環境にも耐えられるよう設計されており、長時間ずっと着ていても蒸れにくく快適さを保つことができるためです。

最低限必要な機能は妥協せず、用途に応じて自分に合った一着を選んでくださいね。

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