「極地」という軸からSDGsを考える日本極地研究振興会

COLUMN | 2022.11.02

東京都立川にて南極や北極の研究助成や教育活動支援を行っている公益財団法人「日本極地研究振興会」。

1964年の創立以来、半世紀を超えて南極・北極地域での研究・教育活動を支援、青少年教育に役立てるための様々な取り組みを行ってきました。

日本極地研究振興会についてご紹介していきます。

1 日本極地研究振興会とは何か

地球上で最も未知な地域として残されている「極地」。

この極地と呼ばれる南極地域、北極地域の研究や教育活動を助成し、研究成果等の普及や啓発、学術文化の向上発展に寄与することが日本極地研究振興会の役割です。

昭和39年12月1日に財団法人として発足し、平成25年4月1日に公益財団法人としてスタートしています。

日本極地研究振興会はその設立目的を達成するために、主に次の事業を行っています。

  • 極地研究に従事する研究者、研究機関等への助成
  • 極地研究に関する国際交流及び現地調査等への助成
  • 極地の自然、観測情報等を活用する教育者等への助成
  • 極地観測事業その他極地研究教育成果等の普及
  • 国立極地研究所「南極・北極科学館」の売店(ミュージアム・ショップ)の管理運営
  • 極地観測事業を通じて開発取得した諸作権及びノウハウの活用による資料貸出、技術指導
  • その他、目的を達成するために必要な事業

具体的には、

  • 研究・教育助成
  • 講師派遣・講演会
  • 南極・北極SDGs/ESD事業
  • 出版物/DVDの展開
  • デジタル教材の配信
  • 南極・北極科学館ミュージアムショップの運営
  • 教員南極派遣プログラムの企画、運営

などの事業を展開し、極地の情報や魅力を発信しています。

2 地球の未来を考える場所としての「極地」とSDGs

南極、北極地域の氷床や海氷の融解により他の地域よりも約2〜3倍の速さで温暖化が進行しているようです。

さらに極地は南極オゾンホールに代表されるように、人間活動の地球環境へのインパクトを察知する敏感なセンサーの役割も担っていることも分かってきています。

このように南極北極地域は、地球環境の未来像を考えるための重要なヒントを与えてくれる場所として、その価値が飛躍的に向上しています。

日本極地研究振興会は、南極北極地域を「SDGs(持続可能な開発目標)の担い手を育成するための最適な教材」と捉え「南極・北極から地球の未来を考える」をミッションステートメントとし、SDGs の担い手育成事業に全力で取り組んでいます。

3 日本極地研究振興会のSDGs/ESD事業

近年注目が集まるSDGs(持続可能な開発目標)やESD(持続可能な開発のための教育)。

実は文部科学省が2019年度からユネスコ活動費補助金事業として「SDGs 達成の担い手育成(ESD)推進事業」を開始しました。

日本極地研究振興会が申請を行った「南極・北極から地球の未来を考えるSDG/ESD事業」が 2019年度から3年連続で採択されています。

極域研究の中核機関である国立極地研究所、極域研究で実績のある大学・研究機関、南極・北極授業を実施した小・中・高校、ESD活動で実績がある大学および小・中・高校、南極地域観測隊員派遣企業、SDGs支援企業、ESD活動支援センター、教育委員会、ユネスコスクールからなるコンソーシアムなどを構築し、当事業を推進しています。

4 情報を伝える場としての「南極・北極SDGs教室」や「南極と北極の総合誌『極地』」発行などの活動も

全国の小中高校で開催する南極・北極SDGs教室や、雑誌「極地」の発行などに代表されるように、極地の情報を伝播するための活動も行っています。

「極地」はもともと南極・北極での最近の新しい動きをわかりやすく伝えるために刊行されましたが、2016年9月号(通巻103号)から一般向けの「南極と北極の総合誌『極地』」にリニューアル。

極地の自然と環境、その中で行われる研究や教育活動を中心として、経済活動、環境保護活動、国際関係、生活、観光、冒険や探検、歴史、極地に関連した書籍や人物の紹介などなど、非常に幅広い情報を掲載しています。

加えてSDGs/ESD教材としての冊子「南極・北極から地球の未来を考える」やDVD、地図などの販売も行っています。

「極地」という切り口でSDGsに挑む日本極地研究振興会

地球規模で環境が激変する中で、いかにして持続可能な社会を創り出すかが世界共通の目標となっている現代。

SDGsへの取り組みが多方面で進展している中において、「極地」という独自の切り口から多彩な事業を展開する日本極地研究振興会の活動は、より大きな意味を持つものとなっていくのではないでしょうか。

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