大自然の宝庫とも呼ばれる上高地の魅力とは
COLUMN | 2023.08.08
上高地は、長野県松本市に位置する山岳景勝地。
現在では年間120万人を超える登山客や観光客で賑わいます。自由気ままに散策を楽しんだり、本格的な登山に挑戦したりなど、そのスタイルはさまざま。
上高地は手付かずの自然が多く残ることから、「大自然の宝庫」とも呼ばれているほどです。
そんな上高地にスポットを当て、これまでの変遷や人気スポット、訪れる際の服装などについてお伝えします
1 上高地の変遷
1-1 上高地が注目されるまで
現在では観光客でも賑わう上高地ですが、リゾート観光地としての歴史は浅く、注目され出したのは昭和に突入してからなんです。
明治以前の上高地は、主に木こりが樹木を伐採するために出入りしていました。それから明治に突入し、地元民が牛や馬を放牧し始めます。
そして焼岳が大きな噴火をした際に川がせき止められて形成されたのが、上高地のシンボルでもある大正池。時代は大正だったことから、当時の元号にちなんで大正池と名付けられました。
上高地は、芥川龍之介の小説「河童」の舞台になったことがきっかけとなり注目を集めます。それが昭和初期の頃で、多くの観光客が訪れるようになりました。
その後、国立公園に指定された上高地は、山岳リゾート地として発展していきます。
1-2 地元住民による自然保護意識
上高地は自然と人間の共存・調和を実現するための取り組みが現在まで行われ、多くの人々に愛される場所として存在しています。
昭和初期に芥川龍之介の小説をきっかけに注目を集め、観光スポットとして発展していきますが、当時から自然保護意識が根付いていました。
上高地で最初に自然保護の動きがあったのは1909年のことで、その頃から高山植物の採取を禁止し保護することが始まります。
また植物の植栽や、生息する動物の捕獲を禁止するなどの条例を設定するなどの取り組みも行われました。
その後1963年には地元住民が「上高地を美しくする会」を発足。ゴミのない美しい上高地を目指して、日々道路周辺のゴミ拾い活動をスタート。
このように上高地の大自然が存在している理由は、自然と人間の共存と調和を実現するためのさまざまな取り組みにあります。
そして現在でも多くの人々に愛され、親しまれている場所として上高地は存在しているのです。
2 日本にとって貴重な大自然
国内屈指の自然の美しさが魅力の上高地。
その自然環境を次世代に引き継いでいくために、「特別名勝」および「特別天然記念物」に指定されています。
これらの制度は国の文化保護法に基づいているもので、その地域の自然や文化を保護するためのものです。指定されている地域は、一般の観光客が自由に出入りできますが、立ち入り制限などの規制がある場合もあります。
特別名勝とは、国内で景色のいい地の中でも特に価値の高いものとして、日本国が文化財保護法で指定しているものです。これは国宝と同格で、上高地以外では宮城県の松島や、京都府に位置する天橋立など全国に35件が指定されています。
特別天然記念物は価値の高い自然の中でも、特に貴重なものとして指定されたものです。上高地以外では、屋久島のスギ林などが指定され、国を挙げて保護の徹底が図られています。
3 上高地に訪れた際のおすすめスポット
上高地の最大の魅力はこれまでお伝えしてきた通り、美しい大自然に出会えること。
雄大な山々をはじめ、美しい池や湿原、川の清流などさまざまな絶景スポットが迎えてくれます。また天候や季節によって、景色も異なることも魅力の一つ。
ここでは上高地の訪れてほしいスポットや自然を紹介します。
3-1 河童橋
上高地のシンボルの一つでもある河童橋。
絶好のビューポイントとして人気を集めており、穂高連峰や岳沢、梓川、反対側には焼岳を望むことができます。
撮影スポットとしても知られており、多くの観光客で賑わうスポットです。
3-2 穂高連峰
上高地の至るところから望める穂高連峰。
見る角度によって表情が異なるため、何度訪れても飽きることはありません。また登山客にとっても憧れの地としても知られています。
穂高連峰は、標高3,190mの主峰奥穂高岳をはじめとして涸沢岳(標高3,110m)北穂高岳(標高3,106m)前穂高岳(標高3,090m)西穂高岳(標高2,909m)などで形成される山々です。
その迫力ある急峻な岩稜や稜線からの大パノラマ、また涸沢カールからの壮大な眺めなど、多くの登山者を魅了しています。
四季折々で表情が異なる自然の美しさも魅力で、一年を通じて尽きることがありません。
3-3 大正池
大正池は前述した通り、焼岳が大きな噴火をした際に川がせき止められて形成された池です。
深いエメラルド色の池の中に木々が立ち枯れ、神秘的な雰囲気が漂います。
早朝、昼間、夜間と訪れる時間によって、異なる表情を見られることが魅力です。
3-4 田代湿原
大正池からほど近い場所に位置する田代湿原。田代池とも呼ばれており、原生林のなかにぽっかりと空いた湿原に広がる池は、幻想的な雰囲気に包まれます。
季節によって表情が異なり、特に氷点下になる寒い季節では霧氷に包まれた木々が美しい銀世界の輝きを楽しむことができます。
3-5 明神池
針葉樹に囲まれた神秘的な明神池。
パワースポットとしても知られている場所で、神聖な空気が漂います。植物や野鳥の種類も多く、自由気ままに散策を楽しむことができます。
野鳥へのエサやりは禁止されているので注意が必要です。
4 上高地に訪れる際の注意点
上高地は美しい自然を保護するために、入山できる期間が定められています。
例年4月中旬~11月15日が開山期間で、その他の期間では入山することができないため注意しましょう。
また車両の通行を一部制限しており、一年を通じてマイカー(一般車両)での通行はできません。
開山期間中はバスやタクシー、軽車両(自転車など)に限っては通行が可能です。ただ、利用が集中し渋滞が予測される日は、路線バス以外の貸切観光バスなどは通行できません。
また季節によって通行可能な時間帯が異なります。
4月~6月および9月~11月であれば午前5時~午後7時までが通行可能で、7~8月の期間は午前5時~午後8時の時間帯が通行可能です。
11月~翌年の4月までは全面通行止です。
上高地に訪れる際は規制されている場合がありますので、あらかじめ確認しておきましょう。
5 上高地に訪れる際の必須アイテム
上高地は多くの山々に囲まれているので、天候の変化が多く寒暖差が激しいことが特徴。
夏でも曇りや雨、風などの天候や場所によっては肌寒く感じることも少なくありません。
そのため、吸汗速乾性のあるインナーや長袖のシャツ、防寒着、伸縮性素材のボトムスなど動きやすく体温調整のできる服装を準備しておきましょう。
ここでは上高地を楽しむための必須アイテムを紹介します。
5-1 羽織り
前述した通り、上高地は気温差が激しいので、着脱しやすい羽織アイテムを準備しておきましょう。
特に朝晩と日中の寒暖差が激しく、紫外線の影響も受けやすくなります。
気温や天候に応じて、小さくたためるフリースやダウンジャケットを持っておくと安心です。
5-2 雨具
山の天候は変わりやすいものです。
晴れていても、急に雨が降り出すことも少なくありません。
そのため、観光目的であれば折り畳み傘は必須アイテムです。また登山を楽しむのであれば、上下セパレートタイプのカッパやポンチョなどのレインウェアを準備しておきましょう。
特に軽くて動きやすく、防水性や透湿性のある素材であれば役立ちます。
5-3 帽子
上高地は標高が高く、紫外線対策も大切です。その際に重宝するのが、日差しを遮る帽子。
日焼け防止はもちろんですが、熱中症対策や怪我防止にも役立ちます。
少し肌寒い春秋であれば防寒用のニット帽、暑い夏であれば通気性のあるキャップがおすすめ。撥水性素材を使用している帽子であれば、多少の雨も防ぐことができます。
また、登山を目的に上高地に訪れる際は、登山用ヘルメットを準備しましょう。
ヘルメットを着用することで、落石や滑落の際に頭の怪我を防ぐことが期待できます。また「槍ヶ岳」「穂高岳」は山岳ヘルメット着用推奨山域に指定されているので、忘れずに持参しましょう。
5-6 リュック
上高地に訪れる際はトートバックなどの手持ちのカバンより、両手が自由になるリュックがおすすめ。
また、前述してきたアイテムを収納できるサイズを選ぶ必要があります。リュックを背負った際に疲れにくく、楽なものを選ぶといいでしょう。
6 上高地の初心者向けルート
雄大な自然を楽しめる上高地。
これから観光や登山を検討されている方も多いのではないでしょうか。
上高地に初めてチャレンジする際は、1時間~2時間ほどのウォーキングコースがおすすめです。
登山用のウェアでなくても楽しめるコースなので、初心者にとっては安心して楽しめます。
ただ、入山期間が定められているため訪れる際は注意しましょう。ここでは初心者向けのコースを2つ紹介します。
6-1 大正池~河童橋コース
初心者向けコースの一つが大正池から河童橋まで歩くコース。
往復で1時間程度で、上高地の人気スポットを巡ることができます。
交通機関を使用し、大正池のバス停に下車。大正池から田代湿原、田代橋を通り河童橋までを歩くコースです。
上高地のシンボルでもある、穂高連峰を望むこともできます。
6-2 河童橋~明神池コース
河童橋から明神池を歩くコースもおすすめ。
前述した大正池から河童橋コースよりも長い道のりで、往復で2時間程度は必要です。
交通機関を使用し上高地バスターミナルで下車。河童橋を起点に梓川の右岸を通り、パワースポットとしても有名な明神池を目指します。こちらも穂高連峰を望むことができるコースで、人気を集めています。
また明神池のほとりに穂高神社があり、拝観料(5o0円)を支払えば入ることも可能です。季節によっては祭典や催事が行われているので、そのタイミンングで訪れてみるのもおすすめです。
上高地の大自然を次世代へ
長野県に位置する上高地。大自然に恵まれ、多くのスポットが出迎えてくれます。
季節や天候などで表情が異なるので、何度訪れても飽きることがありません。
上高地は「特別名勝」および「特別天然記念物」に指定されており、地元住民をはじめ、国を挙げて自然保護に取り組んでいます。
大切な自然環境を次世代に引き継いでいくために、上高地に訪れる際は、一人一人が自然を守ることを意識しましょう。