九州の登山スポットをエリア別に紹介
COLUMN | 2023.03.02
九州地方には多くの山々が存在し、登山初心者から上級者まで幅広く登山を楽しむことができます。
独特の地質や、温暖な気候により形成された自然美が魅力。その美しさは四季を通じて変化し、多くの登山者を魅了しています。
九州地方は火山地帯の多い地域なので、活火山が多いことが特徴です。登山の際は火山ガスの危険があることを忘れてはいけません。最新の情報を事前に確認し、登山の計画を立てましょう。
今回は九州地方にスポットをあて、各エリアごとの有名な登山スポットについて触れていきます。
1 福岡エリア
1-1 英彦山(標高:1,199m)
英彦山(ひこさん)は、福岡県と大分県の県境にある標高1199mの山です。
日本三大修験道の一つで、古来より「神の山」と称され人々の信仰の対象とされてきました。英彦山には、多くの修験道にまつわる建造物や史跡があちこちに残っています。
季節ごとに違った表情を見せてくれることも魅力で、四季を感じられる山としても人気です。その美しさから、日本百景や二百名山にも登録されているほど。
登山ルートは大きく3つ。まずは一番人気のある表参道コース。山道は整備されており、道幅も広いため初心者でも登山を楽しむことができます。
2つ目は山頂までの距離は短いものの、急傾斜が続くルート。その反面、美しい景観を楽しめるコースでもあります。
最後に急登が続くルートで、難所が多い鬼杉コース。中級者〜上級者向けにおすすめです。
1-2 福智山(標高:901メートル)
福岡県北九州市小倉北区と福岡市東区の境に位置しているのが、標高901メートルの福智山(ふくちやま)。頂上からは360度の大展望で周囲には複数の稜線が連なっています。
自然が豊かな山としても知られており、春にはエドヒガンと呼ばれる山桜が咲き誇ることでも有名です。
山頂に向かうまでのバリエーション豊富な登山コースがあり、初心者から上級者まで楽しめるのが魅力。
各ルートの特徴は以下の通りです。
- 上野越ルート:川のせせらぎや鳥のさえずりなど、自然を感じられる初心者向けのコース
- さくらルート:県内最古のエドヒガン「虎尾桜」を見ることができる中級者向けの登山ルート
- 白雲ライン・鷹取山ルート:中級者向けのルートで、かつて鷹取山頂にあった山城跡を巡るコース
- 白糸の滝ルート:白糸の滝や、自然を感じられる上級者向けコース
- 牛斬ルート:登りと下りのアップダウンを繰り返す約7kmの上級者向けルート
1-3 宝満山(標高:829m)
福岡県の筑紫野市と太宰府市にまたがる宝満山(ほうまんざん)。標高は829mで、前述した英彦山と同様に修験道の霊峰で、いくつかの史跡が点在しています。
宝満大菩薩が名前の由来と言われており、太宰府天満宮との関連も深いことから厳かな雰囲気を感じられる山です。見る方向によっては「かまど」や「笠」の形に見えることから、別名「竈門山」とも呼ばれています。
宝満山は標高はそこまで高くはありませんが、勾配のきつい山道や岩場を進む本格的な登山を楽しむことができます。
登山ルートは複数ありますが、一番人気が高いのは正面登山道ルート。
登頂までの距離が最短で行けるコースですが、700m近い標高差があります。「百段ガンギ」と呼ばれる先が見えないほど長い階段や「中宮跡」、玉依姫命(たまよりひめのみこと)にまつわる伝説が語り継がれる「馬蹄石」など、自然や歴史を感じられるコースです。
2 佐賀エリア
2-1 天山(標高:1,046m)
天山(てんざん)は佐賀県に位置する山で、標高は1,046m。
山頂には美しい草原が広がっており、ツゲやツツジなど高山植物が豊富なことが特徴。また山頂からの眺めは360度の絶景が広がり、登った後の爽快感は格別です。
8合目付近まで車で行くことができるので、家族連れや登山初心者にも人気の山です。
天山の登山ルートは大きく3つ。
登山初級者であれば、天山上宮ルートと天川ルートがおすすめ。どちらも山頂まで30〜40分程度で到達することができます。
中級者以上であれば七曲峠ルート。長めの距離を歩いて天山を満喫できるコースです。緩やかな道が続くので、体力に自信がある方であれば初心者でも登りやすいかもしれません。
2-2 黒髪山(標高:519m)
標高519mの黒髪山(くろかみやま)は佐賀県に位置する山の一つ。
山頂には「天道岩」と呼ばれる巨岩が最大の特徴。30~40人が座れるほどの大きさで、そこからの景色は低山と思えないほどの眺めです。
また太古の火山特有の地質と山容から日本百名山、九州百名山の一つとしても知られています。
木々に囲まれた歩きやすい山道なので初心者にもおすすめ。
ただルート内には多くの岩場が点在し、鎖やハシゴの連続です。体力に自信のない方や天候によっては避けた方がいいかもしれません。
登山コースはいくつかあるので、自分のレベルに合わせたルートを選びましょう。
2-3 多良岳(標高:996m)
佐賀県と長崎県にまたがる多良岳(たらだけ)。標高は996mで、登山初心者から上級者問わず人気の登山スポットです。
多良岳は「国見岳」「多良岳」「前岳」が連なった総称で、パワースポットとしても注目を集めています。
多良岳の山道には天然林や、希少性の高い植物などを見られることが魅力。平成14年には「佐賀県自然環境保全地域」に指定されています。また「水源の森百選」にも平成7年に選出されており、美しい自然を満喫できるスポットです。
3 大分・熊本エリア
3-1 阿蘇山(標高:1,592m)
世界最大級のカルデラを誇る阿蘇山(あそさん)は、熊本のシンボルでもあり国内でも高い知名度を誇る名峰。
阿蘇山は、阿蘇五岳と呼ばれる「中岳」「高岳」「根子岳」「杵島岳」「烏帽子岳」を総称した名です。カルデラは東西に約18kmで南北約25km、周囲約128kmもあります。
それぞれの特徴は以下の通り。
- 中岳:中央火口丘群のほぼ中央に位置し、阿蘇山における火山活動の中心地で標高は1,506m
- 高岳:阿蘇五岳の最高峰で標高は1,592m
- 根子岳:標高は1,433mで阿蘇五岳の東に位置する山。ノコギリの刃のように鋭くとがった山頂部が特徴
- 烏帽子岳:熊本県と宮崎県の県境に位置している標高は1,377mの山
- 杵島岳:中央火口丘群の西側に位置している成層火山で標高は1,321m
阿蘇五岳は火山活動が活発で、蒸気を吐く火口を間近で見れることから観光スポットとしても人気です。火山活動の影響で、入山規制がかかる場合があるため予め調べておきましょう。
3-2 久住山(標高:1,787m)
久住山(くじゅうさん)は、くじゅう連山の一つで「中岳」「稲星山」「黒岳」「大船山」などと共に九州を代表する山の一つ。久住山の標高は1,787mで、くじゅう連山の主峰に位置付けられています。
日本百名山にも選出された山で、全国から多くの方が足を運んでいる九州の中でも人気の登山スポット。
登山道に沿うようにミヤマキリシマやシャクナゲやドウダンツツジ、コケモモ、リンドウなどが咲き誇り自然を感じられます。
登山ルートは複数あり、主なコースは以下の通り。
- 牧ノ戸コース:道のりはおよそ10㎞。高低差450mほどで移動時間は3時間30分程度
- 赤川コース:移動距離は約6㎞と比較的短いコース。750m近い高低差があるので、所用時間は4時間30分程度
- 長者原・すがもりコース:全長12.4㎞で高低差750m。移動時間は6時間ほど
3-3 祖母山(標高:1,756m)
祖母山(そぼさん)は大分県と宮城県、熊本県に接する標高1,756mの九州を代表する名峰。日本百名山の一つで、特別天然記念物に指定されているニホンカモシカの生息地としても知られています。
黒々とした森でおおわれており、切り立つ岩壁と深い森林から荒々しい雰囲気が感じられます。
春にはアケボノツツジや、しゃくなげが見ごろを迎える人気スポット。また祖母山はとても自然豊かな山で、周囲一帯が祖母傾国定公園に指定されています。
域内は祖母山をはじめ傾山や大崩山などがあり、1965年に国定公園に指定されました。また五ヶ瀬川にかかる高さ80〜100mの断崖が7kmに渡って続く、高千穂峡が人気スポット。
このように祖母山は、幻想的で見応えのある景勝地が多いことが特徴です。
3-4 三俣山(標高:1,748m)
三俣山(みまたやま)は前述した久住山の北に隣接した、くじゅう連山の一座に数えられる山。
西峰・本峰・北峰・南峰の4つの頂上で構成されており、最高地点は本峰の1,748m。山頂からの眺望はくじゅう連山の中でも特に素晴らしく、阿蘇山や由布岳など九州の名峰を楽しめます。
季節によって表情が変化することが魅力の一つ。春のシャクナゲや6月のミヤマキリシマ、10月はドウダンツツジの紅葉を楽しむことができます。
主な登山ルートは長者原登山口からスガモリ越コース(頂上まで2時間程度)と、雨ヶ池コース(所用時間はおよそ2時間)。
3-5 平治岳(標高:1,643m)
平治岳(ひいじだけ)は前述した久住山や三俣山と同じく、くじゅう連山を構成する山の一つ。
緑豊かな美しい山容が特徴で、標高は1,643mです。
平治岳は日本の中でもミヤマキリシマの群生地として有名で、見ごろを迎えるころには山全体がピンク色の花に彩られます。
その美しい景観を一目見ようと多くの登山者で賑わいます。
平治岳の主な登山コースは以下の3つ。
- 吉部登山コース:アップダウンが少なく初心者向けルート
- 男池登山コース:ルート内に少し急登がある中級者向けコース
- 者原登山コース:登頂までの時間が長い上級者向けコース
どのコースからも登頂するまでには約2時間ほどかかるため、全く登山を経験された事がない初心者だけでの登山は避けた方がいいでしょう。
4 宮崎エリア
4-1 大崩山(標高:1,644m)
標高1,644mの大崩山(おおくえやま)は宮崎県に位置する山の一つ。
美しい自然に囲まれており、九州最後の秘境とも呼ばれています。登山愛好家からも人気の山で、ロッククライミングや冬のアイスクライミングの場としても知られる名峰です。
登山ルートはかなり険しいため、登山初心者には難易度が高い山です。
主な登山ルートは初級者向けの鹿川コースと、上級者向けの祝子コースの2つ。その際にいくつか注意すべきポイントがあります。
鹿川コースは、岩場など危険な箇所が少ないので初心者におすすめのコース。
山頂までは片道約2時間程度で到着できます。しかしながら大崩山の最大の特徴である、岩々の迫力などの魅力を感じることは出来ないルートです。また、登山道に到着するまでの林道が迷いやすいため注意が必要です。
一方で祝子コースは、所要時間がおよそ8時間。大崩山の魅力を満喫出来るルートですが、登山における知識と経験が必要な上級者向けのコースです。
登山を計画する際はいくつか注意すべきポイントがあります。
まずは沢の渡歩について。
悪天候による増水で渡渉自体が難しいケースも多く、天気の悪い日は入山を避けましょう。
また一枚岩のロープ登りやはしご登り、また岩壁のトラバースと気の抜けない場所が続くコースです。命に関わることもあるので、十分に注意をしましょう。日帰りの登山でも、ヘッドライトなどのアイテムは必需品です。
危険なポイントが多いですが、美しい景色と迫力満点の岩峰を望めることが最大の魅力です。
4-2 高千穂峰(標高:1,574m)
高千穂峰(たかちほのみね)は宮崎県に位置する標高1,574mの名峰。開放感が感じられる山で、山頂からは錦江湾と桜島を望むことができます。
春夏の新録、秋の紅葉、冬の樹氷など四季折々の景色を楽しめることが魅力の一つ。
天孫降臨の伝説が残る山としても知られており、坂本龍馬が妻のお龍と新婚旅行で訪れたとも言われています。
主な登山コースは2つ。まず登山初心者にもおすすめの高千穂河原コース。約6kmの道のり、所要時間は4時間程度。登山コースの中でも距離が短いので、多くの登山者から人気のルートです。
次は二子石コース。距離が10kmと長めのコースなので初心者には少しハードかもしれませんが、樹林帯と稜線歩きのどちらも楽しめることが魅力。所要時間はおよそ6時間です。
4-3 行縢山(標高:830m)
宮崎県に位置する行縢山(むかばきやま)の標高は830m。
他の山と比べると低山ではありますが、多くの魅力が詰まった山です。
登山道も整備されており、ツツジやササユリなどの自然に触れられるシーズンは多くの方で賑わいます。
標高は低いですが山頂からの展望も素晴らしく、360度のパノラマを楽しむことができます。また行縢山の最大の魅力は、日本の滝百選に選ばれた行縢の滝。幅20m、落差80mの花崗岩の絶壁から流れ落ちるダイナミックな滝は見どころの一つ。
地元の小学校の遠足などで利用されていることもあり、多くの方に親しまれている山です。
5 鹿児島エリア
5-1 宮之浦岳(標高:1,936m)
宮之浦岳(みやのうらだけ)は標高1,936mの山で、鹿児島県の屋久島に位置しています。
屋久島には標高1,000mを超える山々が存在していることから、洋上アルプスとも呼ばれています。その中で最も高い標高なのが宮之浦岳。日本最南端に位置する日本百名山です。
6月頃からヤクシマシャクナゲの見頃を迎え、山頂では屋久島の山々などの景観を堪能できます。また、山頂までに屋久杉や高山植物など自然に溢れていることも特徴です。
山頂への登山コースは複数あり、主なルートは3つ。
まずは、淀川登山口コース。約8kmの道のりで所要時間は、およそ5時間。多くの自然に触れられるルートで人気のコースです。
次は約14kmの距離で、所要時間は9時間程度の永田コース。
3つ目は楠川ルートで約20kmの道のりで、所用時間はおよそ12時間程度。
登山道は整備されている箇所も少なく、山小屋やテント泊が必要です。屋久島山中にある山小屋は無人小屋のため、テント泊と同様の装備を持参しなければいけないことを覚えておきましょう。
5-2 高隈山(標高:1,237m)
高隈山(たかくまやま)は以下の7つの山岳群を総称した山で、鹿児島県鹿屋市と垂水市との境界付近に位置しています。
- 大箆柄岳
- 小箆柄岳
- 妻岳
- 御岳
- 平岳
- 横岳
- 白山
どれも標高1,000m以上級の山々で、最も高いのが標高1,237mの大箆柄岳。
古くから信仰の対象とされ、江戸時代には高隈山を巡る七岳参詣が行われてきました。山頂は笹で覆われており、360度の大展望で周囲には桜島や複数の稜線を見渡すことができます。
登山コースは上祓川コースや鳴之尾林道コース、縦走コースなどがあります。
自然も豊かで「21世紀に残したい日本の自然100選」や「高隈山県立自然公園」などにも指定されており、多くの登山者で賑わう山です。
5-3 開聞岳(標高:924m)
鹿児島県の薩摩半島の最南端に位置する開聞岳(かいもんだけ)。日本百名山の一つで、標高は924mです。
山容は、ほぼ完全な円錐形で、その美しさから薩摩富士とも呼ばれているほど。
登山ルートは1つのみで登山口から山をぐるりと螺旋状に登り頂上へ向かいます。
7.7km程度の距離で、所要時間は5時間程度。
登山道はほとんど樹林帯になっており、道中に咲き誇る季節の花々を楽しめます。緩やかな道のりなので、老若男女を問わず親しまれている山です。
頂上から望む大パノラマは圧巻で、霧島や屋久島、鹿児島県内の観光名所を満喫できます。
魅力の詰まった九州の山々
登山をする際の季節や天候、登山コースなどによって様々な表情を見せてくれる九州の山々。
同じ山でも新たな魅力を発見できるのではないでしょうか。
美しい自然や迫力のある活火山、山頂からの絶景を堪能できる九州の山々を楽しんでみるのもいいですね。