北極と南極にはどれくらいの量の氷が存在してる?極地の氷の秘密について

COLUMN | 2019.12.13

北極や南極大陸にある氷河や海氷、標高の高い山脈にある氷山や永久凍土など…地球上の極地と呼ばれる場所には様々な種類の”氷”が存在しています

昨今の地球温暖化の影響により引き起こされる”氷の融解”やそれに伴う“海面上昇”などが環境問題として取り上げられる機会も多く、実際に海氷が融解するスピードは年々加速していっていると言われています。

しかし、実際に南極や北極の氷が融解してしまうことでどのような影響があるのかはあまり知られていないのではないでしょうか。

そこで今回は北極・南極の海氷域について、氷が減少してしまう理由やその影響について詳しくご紹介していきます。

1 北極・南極に存在している氷量

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1-1 極地の氷床や海氷域

そもそも極地にはどのくらいの氷量が存在しているのかご存知でしょうか。

実は地球上に存在している氷のうち、約90%が南極大陸の氷河・氷床で占めていると言われています。

南極とたびたび比較され氷量が多いというイメージを持がちな北極も、地球規模で見るとその氷量はごくわずかなんです。

ほぼ海で占められている北極(北極圏)の海氷域にある氷量は全体の0.1%程度。ただし、北極圏にその大陸の一部が属するデンマーク領”グリーンランド”にある氷床や氷河を含めると、南極に次いで2番目に多い約9%の氷量があるんです。

つまり南極・北極に存在する氷量は、そのまま地球上に存在する氷量と言い換えることができるほど極地に集中しているんですね。

1-2 南極の氷床と北極の氷海域の面積

南極のように大陸の上を覆っている氷のことを”氷床”と言いますが、”地球上に存在する約90%の氷床”となるとどれくらいの量になるか想像もつきませんよね。

南極大陸の氷量は”26.92×106km³”最も厚い氷床は富士山より高い約4,500mという、もはや山脈とも呼べる高さの氷床が南極大陸には存在しているんです。

一方、北極海に浮かぶ”海氷”の面積は季節によって大きく異なり、平均して約1040万㎢と言われています。

この大きさはオーストラリア大陸の約1.5倍ほどの大きさ。北極を大陸と勘違いしてしまう人がいるのも頷ける大きさではないでしょうか。

2 減少していく極地の氷量

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地球温暖化の影響で極地の氷が溶けてしまうという問題は、ほとんどの方が1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

ただ、実際にどれくらいの氷が極地から失われ始めているかまでご存知の方は少ないのでは。

北極圏にある海氷域は1979年頃から徐々に融解し始めたと言われており、今では年間8.9万㎢という北海道の大きさに匹敵する氷海が失われてしまっているんです。

また、南極大陸では年間で多い時には約”2,000億mt(メートルトン)”という途方もない量の氷が失われているんだとか。

南極は氷床がある分、標高が高く北極に比べ気温がずっと低い地域。

そのため、氷床自体は温暖化による気温の上昇によって溶け出すということは今のところありませんが、氷床が海に向かって押し出され部分である“氷棚(こおりたな)”は気温上昇の影響を大きく受けているんだとか。

この棚氷が融解し海に流れ出すことで増える海氷は、この25年の間に約3倍のスピードで増え続けていると言われ、それほどまで南極の氷が融解し始めている証拠になっているんですね。

3 極地の氷量減少がもたらすこと

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3-1 北極への影響

「2030年後半には夏の北極海から海氷が消失してしまう可能性がある」。そんな驚くような研究結果が発表されていることはご存知でしょうか。

もしこのような事態が現実に起こってしまった場合、その影響を最も大きく受けてしまうのは”北極圏に住む生物たち生態系”と言われています。

北極圏にはホッキョクグマを始めアザラシやセイウチ、海中にはクジラや甲殻類など私たちが思っているより遥かに多くの生物たちが生活しています。

現在でも温暖化の影響による食糧不足により、多くの生物が餓死してしまっている北極。もし海氷が消失しまう場合、多くの生物たちの絶滅が進行してしまうとも言われています。

3-2 南極への影響

北極の海氷が減少している一方、南極の海氷は増加傾向にあると言われています。

氷海増加の理由としては前述した“氷棚が融解し海へと押し出されていること”“温暖化による海水温度の上昇”の2点が関係していると言われています。

海氷の増加は南極海に住む“オキアミ”というプランクトンの数を減少させ、そのオキアミを食料としている生物にも影響を与え、南極全体の生態系を崩してしまうんだとか。

現在、ペンギンを始めとするオキアミを食料とするいくつかの生物が絶滅の危機に瀕していると言われています。

4 極地の氷量減少による日本への影響

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北極や南極の氷が融解してしまうことは、遠くに住む私たちにとってはあまり関係のないことと思われがち。しかし、その影響は日本にも少なからずあると言われて言われています。

考えられる影響として「日本の気候への影響」があります。例えば、北極の氷海が減少すると日本の冬は”厳冬”になると言われています。

北極圏に浮かぶ海氷が融解してしまうということは、”北極海の海水温度が高い”と言い換えることができます。

海面温度が高くなることで大気が暖められた時、大気の流れが変わってしまうんです。

特にシベリア周辺で特に起こりやすい大気の流れの変化は、極東にある日本の気候にも大きな影響を与えてしまいます。

つまり極地の氷量の減少は案外、私たち日本にも影響があり無視できない環境問題のひとつなんですね。

氷の融解は本当に海水面が上昇する?

本日は北極・南極にある氷の量や減少する理由、その影響についてご紹介してきました。

南極・北極に存在する氷は、”地球上に存在する氷”と言い換えられるほどその量は極地に集中しています。

そんな極地で起こる氷量の減少は生態系を破壊してしまうだけでなく、私たちの身近な気象などにも影響を与えてしまうだとか。

また、よく耳にする”極地の氷が溶けてしまうと海面が上昇してしまう”という問題については結論を出すのは少し難しいんです。

例えば南極大陸の氷全てが溶けてしまった場合、海水面が60mも上昇してしまうと言われています。しかし、現実では南極の氷が全て溶けてしまう前に、極地以外の氷の融解により海面上昇が起こってしまうんだとか。

極地の氷量の減少が海水面上昇と関係しているのは間違い無いですが、その影響はもう少し先の話なのかもしれませんね。

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