神聖な気を感じる山のパワースポット「日本三霊山」

COLUMN | 2023.05.03

近年、「パワースポット」という言葉をよく耳にするようになりました。パワースポットと聞くと運気が良くなる、願いが叶うなどといったイメージを持つ方も多いかもしれません。神社やお寺、特定の観光地などを想像するかもしれませんが、実は山にもパワースポットが存在しています。

パワースポットと呼ばれる山の中でも最上位のランクに位置するのが日本三霊山です。

今回は日本三霊山と呼ばれる、パワースポットとして古くから知られている山々をご紹介しましょう。

1 江戸時代から存在するパワースポットという考え方

実はパワースポットの考えは古く、江戸時代には「弥盛成地(いやしろち)」という名でその場を呼んでいたと言われています。当時のパワースポットは主に下記6つの場所を指していました。

  • 屋久島や沖縄の離島のような森林や滝といった豊かな自然に囲まれた場所
  • 地獄谷やハワイのキラウエア火山のような温泉が湧いたり火山活動が活発な場所
  • 電磁場のある(強いとされている)場所
  • 陰陽道や古代道教、風水などにおいて大地の気が吹き上がる地とされている龍穴やその場所に建つ建築物
  • 富士山や白山といった山岳信仰の対象となっている霊山
  • 神社やお寺

江戸時代から現代と同じような場所をパワースポットとして扱っていたんですね。神様仏様が宿っている場所は昔から特別な場所として大切にされてきました。中でも山自体をご神体とする「山岳信仰」の考え方が根付いている山々はまさにパワースポットの象徴的な存在と言えるでしょう。その1つが、私たちが良く知っている山、富士山です。

2 日本三霊山と日本三大霊山

国土の7割が山や森林に覆われている日本では、古くから山が信仰の対象とされてきました。中でも富士山、白山、立山の3つは「日本三霊山」として日本人から畏れ敬われてきた歴史ある山々。

今回ご紹介するのは「日本三霊山」ですが、「日本三大霊山」ではまったく別の山々が名を連ねているため注意が必要です。

神社や仏閣などの宗教施設など、霊験あらたかな場所を霊場(れいば)と呼称します。古くから信仰の対象となっており山岳信仰に根ざしたものが多数存在し、一般的には特に大規模な場所や由緒ある「恐山」「比叡山」「高野山」が日本三大霊山とされています。

3 日本三霊山その1「富士山」

まず最も有名な山といえば富士山。日本を代表する山と言っても過言ではありません。

日本最高峰として名高い富士山は、有史以来度々噴火してきたことなどもあり、人々に畏怖の念を抱かせる存在でもありました。富士山を神と見立てることもあり、かねてより信仰の対象となってきた山です。

信仰には山岳信仰や神道的なものから修験道の村山修験、民間信仰の富士講など様々な種類が存在しますが、代表的なものとしては浅間信仰が挙げられます。

3-1 浅野信仰とは

富士山の麓には、富士山をご神体とする富士山本宮浅間大社が建っています。

全国に広がる1,300もの浅間神社の総本社で、まさに富士信仰の中心地。麓にある本宮と、富士山の8合目以上全ての385万平方メートルもの広さが境内とされ、奥宮は頂上にあります。

浅間信仰とは、富士の山神である浅間大神を祀る神社が麓の各地で設立されるようになったことに端を発します。富士山本宮浅間大社に祀られている神祭は日本神話の女神であるコノハナノサクヤヒメのことだと言われており、コノハナノサクヤヒメは家庭円満・安産・子安・水徳の神とされています。そのため、富士山本宮浅間大社は、火難消除・航海・漁業・農業などの守護神として崇拝を集めています。

また、境内には湧出する富士山からの湧水でできた湧玉池とよばれる神聖な場所があり、富士山を信仰する人々が登山の前に立ち寄って身を清めたと言われています。現在では、国の特別天然記念物に指定されています。

3-2 コノハナノサクヤヒメと富士山

コノハナノサクヤヒメは美しい女性であったことが古事記にも記述されています。

天照大神の孫であるニニギノミコトを夫としますが、身籠った際に自分の子ではないという疑いをかけられてしまいます。神の子なら無事に生まれるはずと、無実を証明するために小屋に籠って火をかけ、無事に出産を果たしたという「火中出産」が代表的な逸話でしょう。ちなみに、このとき生まれた子の孫が初代・神武天皇といわれています。

この火中出産の逸話が火山で秀峰の富士山と結びつき、富士山の神がコノハナノサクヤヒメとされるようになりました。

4 日本三霊山その2「立山」

古代より神々が宿る山として山岳信仰の対象となっていた立山。北アルプス北部に位置し、日本有数の豪雪地帯に聳える立山も日本を代表する霊山の一つです。

女神が宿るとされる富士山とは違い、立山をご神体として山頂に本社を戴く「雄山神社」の名の通り、男性の神が宿っているとされる霊山です。

4-1 勇敢な男性の神が宿る立山

雄山神社が祀っている神は、イザナギとアメノタヂカラオの2柱。この神はどちらも男神です。立山に対する信仰は仏教と深く関わりながら変遷してきた歴史を持っています。

そのため阿弥陀如来を本地仏とする神仏習合色も見られます。本地仏とは、日本の八百万の神々は様々な仏の化身として現れているものだとする本地垂迹という神仏習合の考えから生まれる概念です。

4-2 信仰が形成された飛鳥時代

日本には古くから山岳信仰がありましたが、立山の山岳信仰は飛鳥時代末期の701年にまで遡ります。

山に入った佐伯有頼が阿弥陀如来に出会い導かれて立山を開山したことが、信仰がしっかりと形作られる起点となったと言われています。

また、仏教が発展した平安時代には阿弥陀如来の極楽浄土の思想や地獄思想、日本古来からの山中他界の思想が組み合わさって、日本中の死者は立山に集まるという「立山地獄」という観念まで出来上がりました。

麓には信仰の拠点となる寺社が建立され、神仏習合の立山信仰が発展していきます。室町から江戸時代の近世になると、穢れの浄化や死後の極楽を願って、修験者以外の一般人も登拝するようになり、一大霊場として多くの人々が集まるようになりました。

4-3 立山信仰と女人往生

立山信仰にはもう一つの大きな特徴である「女人往生」というものが存在します。

明治以前は立山をはじめとする霊山は女性が立ち入ることのできない女人禁制でした。その一方で、15世紀頃からは立山信仰の中に女人救済の思想が広まり、立山信仰の中核を担うようになるほどまでに成長していきます。

女人禁制によって登拝できない女性のために、「布橋灌頂会」といった儀式も行われるようになっていきました。白装束の女性が白い布の敷かれた橋を渡って極楽往生を願う「布橋灌頂会」は、明治の廃仏毀釈で一度は廃れたものの、1996年に130年ぶりに復活を遂げ、現代にも息づいています。

5 日本三霊山その3「白山」

富士山、立山と並び、日本三霊山に数えられる白山。この山は富士山と同様に女性を象徴する霊山。

この白山は、最高峰の「御前峰」「大汝峰」「剣ヶ峰」という主頂部となる三峰に、「別山」「三ノ峰」を合わせて白山五峰と呼称されています。

5-1 水や農業の神様が祀られている白山

「御前峰」「大汝峰」「別山」はそれぞれ川の源流を持ち、加賀・越前・美濃の三方へ流れています。

この地域の人々の生活や農事は白山から流れる川により支えられており、豊かな水源による水の恵みへの感謝や山への畏怖が白山信仰を育んできました。

白山に宿るとされる神は、白山比咩(しらやまひめ)大神という女神で、日本神話の神である菊理媛神(ククリヒメのカミ)と同一神であるとされています。

5-2 白山比咩神社

現代へと続く白山信仰を形作ったのは奈良時代の「泰澄」という修験道の僧だと言われています。717年に泰澄が初めて白山へ登拝し、白山明神・妙理大菩薩による啓示を受けたことが始まりとされています。

全国に3,900を超す分社がある白山神社の総本社である「白山比咩神社」は白山山麓に神社の本宮があり、実に47000平方メートルもの広大な境内を抱えています。

白山の御前峰山頂には、泰澄が啓示を受けた翌年に創建された奥宮があります。

日本有数のパワースポット日本三霊山から神聖な気を感じよう

日本が古くから大切にしてきた山々、現代のパワースポットである日本三霊山をご紹介してきました。

山々が持つ背景や歴史は非常に深いため、調べてみても面白いはず。背景まで知ることでより登山が面白くなるはずです。機会があればぜひ日本三霊山へ訪れてみてください。

きっと神聖な空気感を感じることができるはずです。

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