天然記念物に指定されている「尾瀬」の魅力とは

COLUMN | 2023.09.05

「福島県」「新潟県」「群馬県」「栃木県」の4県に跨る尾瀬。本州でも最大規模の高層湿原が魅力で、その広大なスケールと美しい景観は、訪れる人を圧倒します。当記事は尾瀬に入山する際の服装やルール・マナーについてお伝えします。

 

 

 

 

日本各地に存在する登山スポット。季節や天候などで表情が変化し、多くの登山者を魅了します。

本州最大規模の高層湿原を擁し、夏には様々な花が咲き乱れる尾瀬もその内の一つ。

今回は尾瀬にフォーカスし、魅力や登山時の服装やルール・マナーについてお伝えします。

1 日本百名山の山々に囲まれた尾瀬

尾瀬は「福島県」「新潟県」「群馬県」「栃木県」の4県に跨る、2000m級の山々に囲まれた一大景勝地。

多くの山々からなる山岳エリアとして知られており、登山客からも高い人気を誇ります。

その中には日本百名山に選ばれる名峰も。東北最高峰の福島県に位置する燧ヶ岳や、群馬県に鎮座する至仏山。また福島県に位置する会津駒ヶ岳の3つが日本百名山に選出されています。

また尾瀬の最大の魅力は、本州でも最大規模の高層湿原。その広大なスケールと美しい景観は、訪れる人を圧倒します。

山稜部や山腹にも多くの湿原が見られ、池や沼の神秘さや可憐さを堪能することができることも人気の理由です。

そのような自然環境が広がっているため、豊かな生態系が育まれています。季節の高山植物や、野鳥や昆虫などの動物も数多く生息しています。

季節の植物によって表情を変えてくれるので、四季折々の表情を楽しめることもポイント。

このように尾瀬は雄大な自然と豊かな自然、季節によって変化する表情など、さまざまな魅力を備えたエリアです。

貴重な自然が多く詰まった尾瀬を守るために、天然記念物としても指定されています。

2 季節によって表情を変える尾瀬

季節ごとで表情を変える尾瀬。その変化は多くの観光客を魅了します。

ここでは尾瀬の季節ごとの魅力をお伝えします。

2-1 春の尾瀬

尾瀬は10月下旬から5月初頭までは、雪深いため尾瀬への入山は中上級者に限られます。

そのため、登山初心者やハイキングを楽しまれる方は訪れるタイミングに注意しましょう。

5月初頭の尾瀬では、木々や草花が芽吹き始め、山々の残雪とのコントラストが美しい季節。残雪の下は空洞になっていることが多いので、足元には要注意です。

残雪が溶け始めると、なんとも言えない不思議な光景に遭遇することも。赤渋(アカシボ)と呼ばれるもので、雪の表面が赤い土を撒いたようになる現象です。

5月下旬にもなると残雪がようやく消え始め、多くの登山客などで賑わうベストシーズンを迎えます。少しづつ花も咲き始め、尾瀬のシーズンの幕開けを知らせてくれます。

2-2 夏の尾瀬

夏に近づく6月中旬の尾瀬では、ワタスゲの小さく黄色い花が咲き誇ります。これが7月になると白い綿毛へと変化し、尾瀬ヶ原一面に広がります。

その一体は絶景ポイントで、人気の撮影スポットとしても知られている場所です。

また多種多様の花々が咲き誇るベストシーズン。湿原を黄色に染める夏の花として人気のニッコキスゲや、小さな花が星のようなキンコウカなどが出迎えてくれます。

尾瀬は避暑地としても知られ、爽やかな夏を体験できるスポットです。

2-3 秋の尾瀬

夏が過ぎ、秋を迎えると花々は少なくなりますが、紅葉など秋らしい景観を楽しむことができます。

秋の湿原に咲くウメバチソウやエゾリンドウが、夏の終わりを告げ季節の変化を教えてくれます。

山の木々の色も緑から赤や黄色に移り変わり、紅葉シーズンを迎える尾瀬。登山やハイキングシーズンも、そろそろ終わりを迎える季節ですが絶景を見ようと多くの方で賑わいます。

2-4 冬の尾瀬

尾瀬の冬は少し早く、10月下旬には積雪5mを超える豪雪が尾瀬を覆い尽くします。

特別豪雪地帯にも指定されており、年間200日近くも雪に覆われることも。

このタイミングで、登山者も中上級者に限定され、賑わいをみせた尾瀬も落ち着きます。それと同時に尾瀬の動植物たちも静かに春の訪れを待ち侘びます。

3 散策コースや登山コース

尾瀬には、多くのハイキングコースや登山道が用意されています。種類豊富なコースがあるので、何度きても飽きることはありません。

ここではハイキングコースと登山道の主なルートを紹介します。

3-1 初心者向けハイキングコース

多くのハイキングコースが準備されていますが、今回は初心者向けの散策コースを2つ紹介します。

まずは福島県側から入山する尾瀬沼コース。尾瀬を一番手軽に楽しめるハイキングコースで、距離も高低差も少ないことが特徴。

距離は約7kmで行程時間は、およそ5時間程度です。

おすすめするもう一つのコースが、群馬県側から入山する尾瀬ヶ原コース。本州最大の湿原尾瀬ヶ原を楽しむハイキングコースで、尾瀬沼コースに比べるとやや距離が長くなります。

距離はおよそ10kmの道のりで、行程時間は約6時間。

自分のレベルや目的に応じてコースを選択しましょう。

3-2 百名山を登る登山道

尾瀬には燧ヶ岳・至仏山・会津駒ヶ岳と3つの百名山が鎮座します。コースによっては宿泊が必要になるので、検討する際は注意しましょう。

まず東北以北最高峰の燧ヶ岳の日帰りルート。尾瀬を一望できる絶景コースで、距離は約10kmの8時間の道のり。標高差は約800mの登山道です。

次に紹介するのが田代山の登山コース。

田代山は百名山ではありませんが「山上の楽園」とも呼ばれる、約400種にも及ぶ高山植物を楽しむことができます。そのため花の百名山にもノミネートされる山で、山頂がとても美しい湿原になっていることが特徴。

約10kmの道のりで工程時間は7時間程度。標高差は約600mです。

尾瀬を構成する名峰、会津駒ヶ岳コース。

山小屋での宿泊が必要になるので、少しハードな登山道です。初日に約4時間をかけて5km、2日目に約7時間をかけて9kmのコースです。標高差は約1200m。

最後に紹介するのが、花の百名山でもある至仏山コース。希少な植物が多いエリアなので、花好きにはおすすめの登山道です。

こちらも宿泊が必要で、初日に2時間ほどで約3km、翌日に6時間をかけて約8kmのコースです。標高差は約800m。

4 服装

尾瀬の登山を検討される際は、服装にも注意しましょう。標高1400m前後に高層湿原が広がるため、気温が低く紫外線も強いです。

登山時の必需品は以下の通り。

  • 登山靴
  • バックパック
  • 雨具
  • 防寒具
  • 帽子
  • 手袋
  • 着替え(靴下や下着)
  • 水筒
  • ヘッドランプ
  • 地図やコンパス
  • 時計
  • ゴミ袋
  • タオル
  • トイレットペーパーやティッシュ
  • 日焼け止め
  • 行動食
  • 救急用具
  • お金・健康保険証
  • 携帯電話

持参しておくと便利なアイテムは以下の通りです。

  • トレッキングポール
  • 折り畳み傘
  • 洗面用具(宿泊)
  • 小型ナイフ
  • クマよけの鈴

登山に行く際の季節やコースにより、必要なアイテムは以下の通り。

  • ゲイター(冬場)
  • 携帯トイレ

また登山時に心掛けておきたいのがレイヤリング。

ウェアの構成は「ベースレイヤー」「ミドルレイヤー」「アウターレイヤー」と基本は3層。天候や運動量に応じて脱ぎ着することで、快適に行動することができます。

さらに詳しく知りたい方はコチラをご覧ください。

5 ルールやマナー

前述したように尾瀬は天然記念物に指定されており、その美しい景観を守らなければいけません。

入山する際はマナーを守り、豊かな自然を楽しみましょう。

5-1 湿原の立ち入り

尾瀬の湿原は長い年月をかけて形成されました。

整備された木道や登山道があるので、そこから外れて湿原や樹林の中に立ち入らないでください。一度踏まれた湿原は、回復するのに長い年月がかかります。

写真撮影も楽しみたいとこですが、湿原にカメラの三脚を立てるのもNGです。

決められたルート内で行うようにしましょう。

5-2 外部からの植物の侵入を防ぐ

入山する際は登山靴についた泥を落としましょう。

外部からの植物が侵入してしまうと、尾瀬の植物が衰退する原因に繋がってしまうためです。

主な登山口には、泥を落とすためのマットが設置されているので、しっかり落としてから入山しましょう。

5-3 動植物をとらない

尾瀬に生息する動植物を捕まえたり、摘んだりしてはいけません。

その一つ一つが尾瀬の豊かな生態系を形成しています。

生育・生息する動植物を大切にしましょう。

5-4 木道は右側通行

尾瀬には木道が用意されていますが右側通行がルールで、登山道では登り優先です。

雨などで木道が濡れていると滑りやすくなります。すれ違う際は、対向者とぶつからないように注意しましょう。

5-5 トレッキングポールにはキャップを忘れずに

トレキングポールを持参する際がキャップをつけるようにしてください。

これは植物や木道、登山道を保護するためです。

湿原にポールを突くのは、キャップをつけていてもいけませんので十分に注意しましょう。

5-6 ゴミの放置は厳禁

尾瀬にはゴミ箱を設置していません。そのためゴミ袋を持参し、ゴミは全て持ち帰るようにしてください。

綺麗な景観を守るためにもルールを守りましょう。

5-7 入山前にトイレを済ませる

入山前にトイレを済ませるようにしましょう。

公衆トイレが設置されてはいますが、不安な方は携帯トイレを持参してください。

5-8 ペット同伴NG

尾瀬に入山する際はペットの持ち込みは禁止です。

生息する野生動物に対し伝染病などを移したり、逆に移される可能性も少なくありません。

貴重な生態系に影響を与えないためにもルールを守りましょう。

5-9 雷が鳴ったら即避難

尾瀬の湿原では遮るものがないので、雷が鳴ったら早急に湿原から避難してください。

または天候が落ち着くまで、近くの小屋で待機しましょう。

次世代に引き継ぎたい尾瀬の美しい自然美

尾瀬にはさまざまな魅力が詰まっており、多くの登山客などで賑わいます。

その美しい自然を、次世代へと引き継ぐために天然記念物にも指定されています。季節によって表情を変化し、多くのコースを準備しているので何度訪れても飽きないことも魅力。

そんな尾瀬の自然を守るためのルールやマナーも存在します。訪れる際は、心にとめて尾瀬を楽しみましょう。

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