極地の神秘「白夜」と「極夜」について

COLUMN | 2019.10.24

南極や北極でしか見ることのできない神秘の現象、「白夜」と「極夜」をご存知でしょうか?

小学校や中学校の頃、理科や地理などの授業で一度は耳にしたことがある方も多いかもしれません。

一日中太陽が沈まない期間があったり、反対に一日中太陽が昇らない期間もある。南極や北極では、日本で暮らす私たちからすると想像もできないような現象が日常的に起こります。

今回は、そんな極地ならではの摩訶不思議な現象である「白夜」と「極夜」について、意外と知られていないメカニズムを中心に詳しく見ていきましょう。

1 「白夜」と「極夜」とは?

1-1 太陽の沈まない白夜

太陽の沈まない白夜

白夜とは、南極や北極の夏期に起こる一日を通して太陽が沈まない現象のこと。

みなさんご存知の通り、太陽は東から昇って遥か遠く西の地平線へと沈んでいくものです。

しかしながら白夜の場合は、太陽が地平線の上をただ移動するだけ。決して地平線の下へと沈むことはありません。なので明け方であろうと、真夜中であろうと空は一日中明るい、もしくは薄明が続くのです。

明るさの程度はその場所の緯度によっても異なりますが、南極や北極の場合は「夜が来ない」という表現が適切なくらい、一日を通して明るい状態が続きます。

1-2 太陽の昇らない極夜

太陽の昇らない極夜

一方で極夜とは、南極や北極の冬季に起こる一日を通して太陽が昇らない現象のこと。

極夜の期間はそもそも太陽が地平線の上に昇ってこないため、辺り一帯はずっと暗いまま。たとえ真昼間であろうと、まるで夜のように暗い状態、もしくは薄明が続きます。

特に南極や北極の場合、極夜の期間は太陽が昇って来ない分、その寒さはさらに過酷を極めます。

2 白夜と極夜が起こるメカニズム

白夜と極夜が起こるメカニズム

白夜と極夜を引き起こす要因は、地軸の傾きです。

実は地球の軸はまっすぐではなく、公転面に対して23.4°傾いています。この地軸の傾きが、摩訶不思議な白夜と極夜と呼ばれる現象を引き起こしているのです。

もう少し詳しく説明しましょう。そもそも地球は地軸をベースに1日(24時間)かけて自転することで、昼と夜を繰り返します。太陽の当たる部分が昼、当たらない部分が夜です。

さらに自転しながら、1年(365日)かけて太陽の周りを1周(公転)します。

ところが南極や北極のように高緯度の場合は、地軸の傾きによって、自転しているにもかかわらず昼夜問わず陽が当たり続ける、もしくは昼夜問わず陽の当たらない時期が出てきます。

この時期が、ちょうど「白夜」や「極夜」と呼ばれているわけです。

3 白夜には植物プランクトンを増加させる効果も

白夜には植物プランクトンを増加させる効果も

白夜は、海中を漂う植物プランクトンを増加させることができると言われています。

植物プランクトンの増殖は光合成によって行われるため、太陽の光は欠かせません。

南極海の場合、白夜が訪れると1日を通して海に陽光が差し込むため、植物プランクトンたちはたっぷりのエネルギーを貰うことができます。

すると増殖した植物プランクトンが海中を漂い、それを動物プランクトンが食べ、さらに動物プランクトンを大型の動物が餌として食べます。つまり間接的には、生態系の食物連鎖を維持することにも繋がっているわけです。

4 オーロラを美しく魅せる極夜

オーロラを美しく魅せる極夜

日が当たらず寒さも非常に厳しくなる極夜ですが、悪いことばかりではありません。

空が暗いからこそ見えてくるものもあります。それは極地の醍醐味、「オーロラ」です。オーロラとは皆さんご存知の通り、南極や北極を始めとした極地周辺で見られる大気の発光現象のこと。

極夜は、このオーロラが最も美しく見える期間でもあります。

昇らぬ太陽と幻想的な光のカーテンは息を飲むほど美しく、旅行客の中には、オーロラを見るためにわざわざ極夜の期間を狙って訪れる方も多いようです。

5 南極や北極以外でも白夜と極夜は起こる

ここまで主に南極や北極における白夜と極夜の説明をしてきました。実は南極や北極のような極地以外でも、これらの現象が起こる場所が多数存在します。

最も代表的な国は、北欧諸国。ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、アイスランドやバルト三国といった国々も白夜や極夜が起こる国としてとても有名です。

特に白夜の期間、フィンランドの「ユハンヌス」、スウェーデンの「ミッドソッマー・ダーゲン」など国によってはお祝い事やお祭りをする文化もあります。

そのほかにも、カナダ、グリーンランド、アラスカといった国も白夜や極夜が起こることで有名です。

6 極地における白夜と極夜の期間

極地における白夜と極夜の期間

南極では、白夜は12月、極夜は6月頃に訪れます。北極はその真逆で、白夜が6月、極夜は12月です。

その期間は場所によって異なりますが、日本の南極観測隊の基地として知られる「昭和基地」のある場所では、45日前後の白夜の期間があります。最南端である南極点の場合、なんと半年間もの白夜と極夜が続くようです。

もちろんこの半年という期間は、あくまで南極点のお話。場所によって、白夜と極夜の期間もかなり変わります。

例えばフィンランドの北部、ロヴァニエミの場合、6月〜7月上旬までの30日前後が白夜の期間になります。さらに北部のウツヨキでは、白夜の期間がなんと60日前後になることも。

このことから白夜も極夜も「極点」に近い場所ほど、その期間が長くなることが分かりますね。

白夜と極夜、2つの表情を見せる南極

今回は極地の神秘、「白夜」と「極夜」についてその概要やメカニズムを中心に解説しました。南極を始めとした極限の地では、通常では考えられないような不思議な現象が起こります。

一日を通して陽が沈まない白夜、一日中陽が昇らない極夜。

この2つはいずれも特別な超常現象などではなく、地球の自転と公転、そして何より23.4°という絶妙な地軸の傾きによって引き起こされるものだったのです。

同じ場所であっても訪れる時期によって、その光景は大きく変化します。

異なる2つの表情を併せ持つその姿も、南極の素晴らしい魅力の1つと言えるでしょう。

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