冬山登山に必要な装備品について
COLUMN | 2022.11.02
登山の楽しみ方は季節ごとに景色が変わり、四季を感じられることが魅力ではないでしょうか。
特に冬山は空気が澄んでいるため、遠くの景色まで見渡せることができます。また雪山となると白銀の世界が一面に広がり、他の季節にはない景観を楽しめることが魅力。
しかしながら、冬山の登山では低体温症のリスクや雪による災害など危険性が高いことも忘れてはいけません。
今回は冬山の登山に必要な装備品や、危険性などについても説明していきます。
1 冬山で気をつけるべきポイント
1-1 天候
冬山の登山の場合、天候や山の状況を事前にリサーチしておくことが大切。
山の天候は変動しやすく、特に冬山であれば行動に支障をきたすことも少なくありません。
例え、低山だからといえど、急なホワイトアウトや雪が深く積もり、思うような行動ができないなんてことも。
事前の天気予報や、山小屋が発信している情報を事前にチェックしておくことがポイントです。
1-2 紫外線対策
冬山では紫外線にも気をつける必要があります。
紫外線と聞くと夏をイメージしがちですが、冬の場合は空からの太陽光だけでなく、雪面からの照り返しが加わることを覚えておきましょう。
肌の日焼けは内臓への負担となり、余計な疲労の蓄積にも繋がります。また晴れた日に裸眼で登山をすると、「雪盲」と呼ばれる網膜の日焼けになります。
日常生活にも支障をきたしてしまうため、しっかり対策していきましょう。
1-3 雪山の歩行
冬山の魅力でもある雪ですが、普段から歩き慣れていないため注意が必要です。
フカフカの新雪やカチカチの氷上など様々なケースがあり、ピッケルやアイゼンなどの冬山特有の装備が必要不可欠です。
また、それらを使用するための経験や技術も大切なポイント。最悪の場合、転落や滑落などの危険が伴うことも忘れてはいけません。
冬山は他の季節と比べ専用の装備や技術が求められる楽しさがありますが、初心者の方はしっかり経験を積むことも求められます。
1-4 低体温症などの危険
冬山には注意すべきポイントがいくつかあり、低体温症もそのうちの一つ。
これは体温が正常な値より低くなると、筋肉や脳の正常な機能が失われる症状です。
低体温症は、本人には自覚症状がないことがポイント。症状が進むと思考が鈍くなり、もはや自分自身では対処できなくなるので注意が必要です。
事前の予防がとても大切になり、以下のことに注意しましょう。
- 適切なレイヤリングで体温を下げない
- 体を濡らさない
- 手袋・靴下が汗や雪などで濡れたら取り替える
- 高カロリーのものを定期的に摂取
- 冷たい飲み物は避け、温かい飲み物をとる
- 吹雪きなどで寒さを感じたら無理をせず撤退、撤退できない場合は風や雪を防げる場所に移動
低体温症を防ぐ基本は体を冷やさないこと。衣服などの身につけたものを濡らさないこと、風をシャットアウトすること、肌を露出しないことなどが重要です。
また前述した通り、低体温症の症状が進んでも本人にはその自覚がありません。
初心者の方であれば単独ではなく、登山仲間と登山を楽しみましょう。またその際に間の言動にも気を配り低体温症への配慮も忘れずに行うことが大切です。
2 基本的な雪山装備
前章では冬山における、注意すべきポイントについて説明してきました。
危険が伴うことが想定される冬登山において、持参すべき装備はどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは初心者の方に向けて、冬山へ登山に行く場合の装備品を「服装」と「持ち物」の観点から紹介していきます。
2-1 服装
2-1-1 ウェア
冬山用または雪山用のウェア上下を準備しましょう。
雪山のウエアは、レイヤリングを基準に考えるので、中間着を中に着込めるゆとりあるサイズを用意します。
2-1-2 ザック
他の季節で使用しているザックでも問題ありませんが、雪が付着しにくく、ピッケルが装着できるモデルが理想です。
また荷物が多くなるので、容量が大きいタイプ(30-40L程度)を選ぶといいでしょう。
その他には、ザックを雪や雨などの濡れから守ってくれるカバーがあると安心です。
2-1-3 登山靴
雪山に適した保温性などの機能性を備えたタイプが理想です。初心者の方であれば、アイゼンが装着しやすいワンタッチもしくはセミワンタッチアイゼン対応のモデルなどもあります。
登山靴のサイズはピッタリしすぎると、血流が滞りやすく凍傷のリスクが高まるためサイズ選びには注意しましょう。
また登山用ソックスも忘れてはいけません。厚手で特に保温力の高いソックスを準備し、予備を一足忘れずに持参しておきましょう。
2-1-4 グローブ
冬登山の場合、防水性のあるオーバーグローブと、保温性があるインナーグローブを準備します。グローブが濡れてしまうことも想定されるので、予備のグローブも必ず持参しましょう。
またオーバーグローブは、手首にぶら下げられる落下防止のリーシュがあると安心です。
2-1-5 帽子・ヘルメット
帽子は凍傷を防ぐためにも耳まで覆える保温性の高いタイプを選びましょう。
また滑落や落石、転落など危険が伴う場所ではヘルメットが必要不可欠です。
自分の身を守るためにも必ず持参しましょう。
2-1-6 サングラス・ゴーグル
前述したように、冬山の紫外線は想像しているより遥かに強いものです。
眩しさを抑え、紫外線を予防するためにアイウエアを準備しましょう。天候によっては強い風雪の場合もあるので、その際はゴーグルがあると安心です。
また晴天時はとても日焼けしやすい状態になるため、日焼け止めなどの対策も心掛けましょう。
2-2 持ち物
2-2-1 ピッケル
ピッケルは雪山での登山をサポートし、安全を確保するために使う道具です。
様々な種類が提供されているので、専門店などで自分に合ったものを選択しましょう。
2-2-2 アイゼン
アイゼンは、氷や雪の上を歩く際に滑り止めとして靴底に装着する登山用具。
爪の数に種類があり、用途が異なります。また登山靴への取り付け方法も複数あり、靴の形状に合ったアイゼンを選ぶ必要があります。
2-2-3 ゲイター
ゲイターはパンツと登山靴の隙間を被せるようにして装着するもの。雪や雨、砂などが登山靴の中に入り込むことを防いでくれます。
雪や雨の侵入を防いでくれるので、足指の凍傷のリスクを軽減するためにも重要な装備の一つ。登山靴の裏に通すものから、ベルクロ留めと呼ばれるタイプまで種類があるので自分に合ったものを選択しましょう。
2-2-4 ヘッドランプ
登山に行く時間帯によっては不要ですが、夜間や夜明け前などの時間帯であればヘッドランプが必要です。その際に予備電池も忘れないように注意しましょう。
2-2-5 行動食
冬山や雪山ではカロリーが多く消費されてしまいます。箸やスプーンなどを使わずに手早く食べられるパンやチョコ、ビスケットなどがおすすめ。
また低体温症を防ぐためにも、暖かい飲み物を準備しておくといいです。保温ボトルに入れて持参しましょう。
3 レイヤリングで柔軟に対応
冬季登山に限ったことではありませんが、登山をする際にレイヤリングが大切なポイント。特に冬山であれば肌を汗で濡らさないようにし、体温を温かく保つことが求められます。
冬季登山の基本はベースレイヤー、ミドルレイヤー、アウター・シェルの3層レイヤリングです。
レイヤリングについて詳しく知りたい方はコチラも併せてご覧ください。
ベースレイヤーは綿商品は避けましょう。汗で濡れてしまうと水分が冷えて低体温症の原因になります。下着も同様の理由から綿製品を着用するのはNGです。
ベースレイヤーは長袖のメリノウールもしくは化繊の素材を選びましょう。
レイヤリングはシチュエーションに合わせて調整が必要です。
樹林帯のハイクアップなど風が弱く、運動量が多い場合はベースレイヤーとミドルレイヤーで問題ないでしょう。
稜線上での行動が多く、気温が低く風雪があるケースはベースレイヤー、ミドルレイヤー、アウターレイヤーを着用します。
また服装はタイト過ぎるものは避けましょう。ある程度、空気の層がある方が温かい状態を維持してくれます。
服装がタイトすぎると血液の循環を阻害してしまうことに繋がります。冬登山に適した服装を準備し、体温調整を行いましょう。
冬山を登山するのであれば、パンツもレイヤリングすることをおすすめします。
一番下にはタイツを履いて、その上にロングパンツを着用。さらに風雪がある箇所などでは、その上からレインパンツかオーバーパンツを履くことで対策することができます。
冬山は事前準備が大切
冬季登山は準備がとても大切。
装備品はもちろんですが、低体温症などの危険性も把握しておく必要があります。
他のシーズンに比べ、天候の変化から過酷な登山ではあります。しかしながら、冬特有の銀世界を楽しめるなど魅力が多いこともたしかです。
知識と経験が必要になりますが、自分のレベルにあわせて登山を楽しみましょう。